社会

ABEMA TIMES

2026年8月15日 09:30

「好き好んで満員電車に乗りたい人はいない」ベビーカー論争が繰り返されるワケは?子育て世帯がマイノリティ化する日本社会の“選択肢のなさ”

「好き好んで満員電車に乗りたい人はいない」ベビーカー論争が繰り返されるワケは?子育て世帯がマイノリティ化する日本社会の“選択肢のなさ”
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 SNS上で「満員電車でのベビーカー、ありかなしか」をめぐる議論が巻き起こっている。     

【映像】東京は子連れに冷たすぎる…“驚きのアンケート結果”(実際の映像)

 混雑する時間帯の電車にベビーカーで乗車したという投稿に対し、「畳んで抱っこ紐にすべき」「タクシーを使うか時間をずらした方がいい」といった批判の声が上がる一方、「ベビーカーの人は混み合った時間に乗れないということか」「子育て世帯の親には優しくするべき」と擁護する声も広がった。

 国土交通省はベビーカーを折りたたまずに電車やバスに乗れると案内しており、JR東日本は混雑時間帯に周囲の状況に注意を払うよう呼びかけている。鉄道各社もベビーカーや車椅子に対応したフリースペースの整備を進めているが、それでも論争は繰り返されている。

 『ABEMA Prime』では、たびたび起こる「子連れ」をめぐるバッシングと、子どもに対する社会の寛容さについて考えた。

■「好き好んで満員電車に乗りたい人はいない」

近藤英恵氏

 ハナサカデミア代表で、一男一女の母でもある近藤英恵氏は、自身の経験について、「直接、子連れは降りろと言われたことがある。子どもがうるさくしていない状態で乗った途端に、子連れは迷惑だから降りろと言われた」と振り返る。そして、「かなり子育てをする上で息苦しい社会だと感じることが多かった」と述べる。

 一方、「滞在中のセブ島では70人以上の小中高生とレストランに行っても一度も静かにするよう注意されなかった」といい、「フィリピンでは社会全体で子どもを育てていこうという接し方をしてくれる。子育て世代にとってはすごく嬉しい環境だと感じた」と語る。

 今回のベビーカー論争についても「好き好んで子連れで満員電車に乗りたい人はいないと思っている。息子が3歳の時から3年間、東大病院に通院しなければならず、時間が指定されるためどうしても満員電車に乗らなければならない経験をした」と明かす。その上で、「乗らざるを得ない事情がある方々への想像力、これは子どもを最優先しろという話ではなく、いろんな背景の方々がいるということへの想像力も働かせながら、お互いに思いやりを持って生活できたらもっといいのではないか」と訴える。

■各国比較で見える「意識の差」と「都市構造の問題」

大森宣暁氏

 国土交通省の「子育てにやさしい移動に関する協議会」有識者メンバーで、宇都宮大学教授の大森宣暁氏は、10数年前から東京・ロンドン・パリをはじめ6カ国でベビーカー利用に関する公共交通の調査を行ってきた。

 大森氏によると、東京では公共交通利用時にベビーカーを畳まずに乗車している人を「不快・迷惑」と感じる割合が他国と比べて非常に高い。「昨年、改めて東京とロンドンで同じ調査を実施したところ、日本では若干改善が見られたが、ロンドンには全く及ばない実態だった」。また、「公共交通でベビーカーが来た際に親切な行為をする人の割合も、ロンドンやパリと比べて非常に少ない」と続けた。

 なぜ日本ではこうした意識の差が生まれるのか。「東京は人口が集中しすぎていて、家も電車も道路も狭い。さらに日本には通勤手当を会社が支給するという特徴があり、郊外の安い家を買って都心まで満員電車で通勤する人が増えてしまった」と分析する。

 その上で、「満員電車に乗らざるを得ない、選択肢が1つしかないという状況が都市計画・交通計画的に最も問題だ」と強調する。解決策として、「保育園を家の近くに設ける、子育てタクシーなど複数の交通手段を選べるようにする」といった視点を提示する。また、「ウォーカブルシティ、歩いて暮らせる街づくりを目指すという都市計画的な視点も重要だ」と補足した。

 ベビーカー自体の設計についても言及し、「日本のベビーカーメーカーは折りたたんで持ち運ぶことを前提に設計しているが、海外のベビーカーは折りたたみを全く想定しておらず、大型で重い。思想の違いがある」と説明した。

■「この20年で出生数が約4割減、子育て世帯がどんどんマイノリティに」

 論争の背景にある少子化の構造についても議論が及んだ。近藤氏は「この20年で出生数が約4割減っており、子育て世帯がどんどんマイノリティになっていることが、不寛容さがどんどん進んでいる要因の一つになっているのではないか」との見方を示す。

 大森氏も「普及啓発の成果はこの10年で多少は現れているが、まだまだ十分ではない。公共空間はさまざまな人が共同で利用する場であり、お互いの気持ちを考えながら思いやりを持って使うべきだ」と述べ、鉄道・バス事業者の努力を評価しつつも、意識の変革が依然として必要だと指摘する。

 近藤氏は最後に、「制度ももちろん大切だが、それと合わせて社会全体でもっと子どもを育てていこうという寛容さが広がっていけたら、子どもを安心して産めるという良い循環がもっと回っていけるのではないかと切に感じている」と語った。

(『ABEMA Prime』より)

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