社会

ABEMA TIMES

2026年8月15日 11:00

10年前を教訓に 熊本県知事「倍のスピードで復興へ」シリコンアイランドが示す「災害レジリエンス」災害大国・日本の新モデル

10年前を教訓に 熊本県知事「倍のスピードで復興へ」シリコンアイランドが示す「災害レジリエンス」災害大国・日本の新モデル
広告
1

 熊本県で最大震度7の地震が発生してから2週間余りが経過した。県によると8月12日の時点で39人が亡くなり、住宅被害は全壊・半壊などを含め2万7000棟に迫り、3585人が避難生活を送っている。一方、直接被害を受けていない地域でも風評被害が深刻化し、県の調査ではおよそ14万件、20億円以上の宿泊キャンセルによる損失が発生しているという。

【映像】震災の爪痕 大きく崩れたままの道路

 10年前にも震度7の大地震を経験した熊本は、その教訓を今回の対応にどう生かしているのか。『ABEMA Prime』では、「倍のスピードの対応」を掲げる熊本県知事・木村敬氏とともに、復興の現状と課題を考えた。

■「10年前よりさまざまな教訓が生きている」倍のスピードを可能にした理由

「倍のスピードで対応」

 木村氏は10年前の熊本地震当時、県の総務部長として初動対応にあたった経験を持つ。現在は知事として陣頭指揮を執り、「前回の倍のスピードで対応に当たっている」と語る。

 それを可能にしているのが、「広域からの人員動員」だ。「10年前の震災の教訓がさまざまなところで生きていて、対策が先手先手で打てている。熊本県以外の46の都道府県から700人、そして県内の小さな町村からも毎日100人以上の行政職員を派遣してくれている。800人規模で被災市町村に入っていることが、被災者のための行政を前に前に進めている原動力になっている。これは10年前になかった制度であり仕組みだ」と述べる。

 また、10年前の最大の悔恨として、被災した病院からほかの病院への患者移送が遅れて関連死につながったことを挙げた。「入院していた病院が被災して電気や水が止まり、機能が不全状態になった病院から他の病院に移送することが十分できなかった。そのため治療が遅れたり、病気が悪くなったりした方もいた。関連死のうち6分の1にあたる30〜40人は、そうした方だったのではないか。その悲しみを絶対に繰り返してはいけないということで、今回はDMATなど医療関係のプロが全国から入ってきて、機能を停止した4つの病院から450人を2日以内に全員移送することができ、転院(の遅れなど)による災害関連死は今のところ防げている」と説明する。

 加えて、県民側の変化も復興スピードを押し上げているという。「10年前に被災した経験のある市民の方は、次に何をすべきか、例えば罹災証明をやるべきだとか、ゴミは分別して置き場に持っていくべきだとか、全部学んでいらっしゃる。だからこそ倍のスピードが実現できている面がある」と強調する。

■避難所生活を終えるためのカギは「水道の復旧」

県外から応援職員

 一方で、今回は猛暑の中での被災という新たな試練もある。「先週は40度を超える酷暑日を経験しました。こうした猛暑の中での避難所生活という、今までにない苦しみがある」と語る。すでに避難生活中の熱中症とみられる死者が1人出ている。

 2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏が「避難所生活が長くなるほど関連死が増えてしまうのか」と問うと、木村氏は「エコノミークラス症候群のように血栓が溜まってしまったり、苦しい環境の中での避難生活が肉体的、心理的に圧迫してしまうというのは因果関係があると思っている。熊本県民は我慢強く根が明るいというところもあって『大丈夫だよ』と言ってしまう。ところが、私が避難所で握手をした時にニコニコしていた人が、話しているうちにポロポロ泣き出すこともある。やはり避難生活の苦しみは、すべての被災者の方が抱えている」と認めた。

 その上で、避難所での生活を早期に終えるためのカギとして水道の復旧を挙げた。「今、約3万4000戸で水道水がまだ出ていない。家でトイレも洗濯もできないから避難所にいる方が多い。8月末には家の前までは必ず水が届く状態にしようと、政府や高市総理も明言している。能登半島地震の時は3カ月かかり、10年前の熊本地震でも遅いところは3カ月、だいたいのところは1カ月だった。今回は本当に復旧が早い」とした。

 ひろゆき氏が「早ければ9月中には避難所にいる方がほとんどいないという状態になり得るか」と尋ねると、木村氏は「それを期待している。8月末に水が通るということと、小中学校が始まるということで、今月末・9月の頭が一つのターニングポイントになると思っている」と答えた。

■シリコンアイランドが示す「災害レジリエンス」の可能性

災害関連死

 今回の震災では、TSMCをはじめとする半導体関連企業が集積し「シリコンアイランド」と呼ばれる九州の半導体産業への影響も注目された。10年前の熊本地震以降、被災前の姿に戻すだけでなく、地域の発展につなげる「創造的復興」が進められ、その中で整備された工場は、耐震・免震対策が進んでいたことから、被害を抑えられたという。

 木村氏は「創造的復興の過程でできた工場は耐震化・免震化をしっかりやっている。震度がおよそ3段階下がるほどの免震・耐震構造を備えており、震度6の揺れが実際の工場内では震度3程度に収まるようなものになっている。今後も工場の進出が続いていっても大丈夫だと思っている」と語る。

 この点について文筆家・佐々木俊尚氏は、産業を支える災害対応力という観点から10年間の熊本の歩みを評価した。「産業にとって大事な災害対応は”レジリエンス”、つまり回復力・復元力だ。熊本地震から10年が経ち、TSMCにとっても地震が起きることは想定内。その上で、震度7の地震が起きたときにどうやってすぐに復元できるかを前提にして動いていく。九州は原発が再稼働して電力が安いとか、アジアに非常に近いとか地の利もある。それに加えて、地震が起きてもすぐに復元できるという災害復元力を、熊本がこの10年で繰り返された地震を経験することで培ってきたということは言える」と述べ、熊本が災害大国・日本における新たなモデルを示しつつあるとの見方を示した。 (『ABEMA Prime』より)

広告