社会

ABEMA TIMES

2026年8月15日 12:00

「耳元の安心感」災害時の孤立を防ぐ?ラジオが築くコミュニティ 橋本吉史氏「神社のようなもの」

「耳元の安心感」災害時の孤立を防ぐ?ラジオが築くコミュニティ 橋本吉史氏「神社のようなもの」
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 大規模災害時における情報インフラの重要性が増す中、情報の受け取り手段としてインターネットの存在感は増し続けている。一方で「オールドメディア」「オワコン」と言われることも増えたラジオは、被災地において単なる情報伝達にとどまらない、ラジオならではの「コミュニティ形成」の役割が存在するという。災害時におけるラジオの存在意義と、地域社会をつなぐ役割について、『ABEMA Prime』で議論が行われた。

【映像】「まちのラジオ」収録現場(実際の様子)

■被災地に向けた「内向きの情報」と高齢化地域の現実

まちのラジオ

 TBSラジオで長年プロデューサーを務めた橋本吉史氏は、災害時におけるテレビとラジオの報道の質的な違いについて次のように指摘した。

 「そもそも災害が起きた時の報道は、被災地で何があったかを外に対して伝えていく報道のやり方と、被災地に向けて放送するやり方の2タイプがある。テレビでもローカルメディアであれば被災地向けの放送はあるが、ラジオの役割は被災地に向けた内向きのベクトルの流れになることがほとんどだ」。

 能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県・輪島市町野町で、コメ農家を営みながら「まちのラジオ」を立ち上げた山下祐介代表は、インターネットの利便性を認めつつも、被災地の厳しい現実を明かした。

 「私も最初、『ネットでいい』と思った。ところが、今ラジオをしている地域は非常に高齢者が多く、高齢化率が6割になっている。直近でも、スマートフォンの使い方がわからず、『今までこれで娘とやり取りしてたのにできなくなった』と尋ねてくる方がいた。そういった方々が非常に多い中で、我々もネットを使って何とか情報発信をしようと心がけたが、この地域にとっては非常に難しいことが分かった。それであれば、やはり高齢の方でも親しみのあるラジオにしようというのがきっかけだった」。

 山下氏は実際に放送を始めてからの手応えについて、「ラジオを通じて、音声だけでも一つのコミュニティの場になっている。1カ所に集まらなくても地域の情報を共有して、それがご近所さんと会った時に会話のネタになり、地域のコミュニティ形成に寄与している。確実にそういった機能を果たしている媒体だと感じている」と語った。

■不安を和らげる「1対1の信頼感」と「広場」としての機能

災害時のラジオの役割

 被災した状況下で、音声メディアが人々の心に及ぼす影響について、文筆家・佐々木俊尚氏は独自の見解を示した。

 「音声というのは大きい。聞いている側にとっては、音だけというのは安心感や信頼感がある。映像で見るとちょっと距離が遠い感じがする。テレビは『テレビの前の、お茶の間の皆さん』と言うように多人数対多人数という媒体だが、一方でラジオは深夜放送が典型で、『ラジオの前のあなたに』という、1対1で耳元でささやくようなものがある。生身の人間がすぐそばにいるという信頼感はすごく大きい」。

 さらに佐々木氏は、「被災地でこんなひどい目に遭って大変だという不安でたまらない状況の中に、耳元でいつも聞いているパーソナリティの声が聞こえてくることに対する安心感は、我々がもう少し注目すべきポイントではないか」と、心理的な側面の重要性を強調した。

 町野地区をはじめ、東日本大震災の宮城県女川町や、熊本地震の熊本県御船町など、数々の被災地で災害FMの立ち上げに尽力してきた放送作家で地域メディアプロデューサーの大嶋智博氏も、ラジオがもたらす安心感について言及した。

 「今、仮設住宅に残っている高齢の方々は閉じこもってしまい、買い物に行くにも車がないとどこにも行けない状況で何年も暮らしている現実がある。昔は町で病院や買い物に行き、知り合いに会って話をする日常があったのが、今はそれがすごく薄くなってしまった」。

 その上で、大嶋氏は「まちのラジオ」が果たしている役割を次のように説明する。

 「町のいろいろな方々が毎日のように出てくる。そうすると、『誰々さんが山下さんと話している』と聞いた人が、スタジオの前に遊びに来たり、今日採れた野菜を持ってきたりと、そういう広場になっている。音声プラットフォームは、知っている人の声がすると安心するという部分において喜ばれる。失われた地域の絆や、『がんばろう』という空気を作る団結の象徴になっているところもある。PodcastやYouTubeは個人で始められるが、ラジオは国から免許を与えられ、市と連動してやっているため、『ここは嘘は言ってない』と担保された状態で出していける地域のポータル拠点になっている」。

■コミュニティの象徴としての「神社」と情報網の未来

災害報道

 インターネット上のコミュニケーションとラジオの違いについて、佐々木氏は「インターネットというのは分散するテクノロジーなので、どんどん広がってしまう。LINEでは家族と繋がれるかもしれないが、そこにみんなが集まっている感じにはなりにくい。(ラジオは)小さいコミュニティ感が強い。電波ならではのコミュニティの大事さがある」と指摘した。

 長年ラジオ制作に携わってきた橋本氏は、技術的な伝達手段の違いを超えたラジオの本質について、独自の例えを用いて語った。

 「今のラジオなどがやっていることは、神社みたいなものだ。みんなが集まる、昔からある場所みたいなものとして存在している。コミュニティFMみたいなラジオの存在感があれば、最終的には電波か通信かといった技術はどちらでもいい」。

 最後に山下氏は、被災地における情報インフラの今後のあり方について、次のように結んだ。

 「当然、ネットには力を入れていかなければいけない。ただその一方で大事なのは、メディアリテラシーなどの問題を教育した上で、今もスマホを使いこなせない方がいらっしゃる状況がまだある。そうした過渡期であることを踏まえて、最後の砦としてラジオというものも、まだ注目していただきたい」。 (『ABEMA Prime』より)

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