お盆休みの千葉を襲った記録的豪雨から2日。今も各地に爪痕が残っています。なぜここまで被害が広がったのか、専門家と現地を歩き、“都市型水害”の課題を探りました。(8月15日OA「サタデーステーション」)
記録的豪雨から2日 千葉も再び雨
15日も列島の広い範囲で大気が不安定な状態が続きました。気象庁は青森県鯵ヶ沢町などに「レベル4土砂災害危険警報」を発表。鯵ヶ沢町には次々と活発な雨雲がかかり、命に危険を及ぼす土砂災害の危険が高まりました。記録的豪雨に見舞われた千葉では…。
「3日目ですけれども、まだ水が引いていませんね。だいぶ手前から冠水してますね」
全国初の「レベル5大雨特別警報」が発表され、 甚大な被害を出した「千葉豪雨」。 雨水が処理しきれないことによる、「都市型水害」が、広い範囲で発生しました。 サタデーステーションは、その結果、多発した、 「車の水没」、「地下空間の浸水」、 「帰宅困難者の発生」、3つの被害を取材。 都市部ならではの教訓が見えてきました。
なぜ車の浸水が多発?ドライブレコーダー映像で理由が判明
今回の豪雨で多発したのが、道路の排水が追い付かなかったことによる 車の浸水被害です。
「大雨被害から3日目となりましたが、千葉市内では10台以上の車が放置されたままとなっています」
番組が入手したドライブレコーダー映像には、車が浸水で停止するまでの一部始終が映っていました、豪雨のあった13日午後10時過ぎ、 家族を迎えに行くために千葉駅周辺を走る車。 前を走る車のナンバープレートあたりまで水が浸かっています。 さらに進むと、引き返そうとする車やハザードランプを点灯させて止まっている車が。 その後、前方が止まってしまったのか、全く前に進まなくなりました。一度、車が大きく揺れ、後続車によってできたとみられる波が、押し寄せます。 車が停止して2分ほどが経過すると車内からアラート音が鳴り始めました。迎えを待っている家族に電話で異変を知らせます。
「もしもし、車が動かなくなっちゃったんで、ちょっと押してもらわないと動けないいかもしれない」
動かなくなってからおよそ10分後、車にさらなる異変が起き、再び家族に電話。
「車が浮いちゃってるから動かないんですよ。エンジンは回るんだけど、だからちょっと押してほしい」
このあと迎えにいくはずだった家族が駆け付け、車を動かそうとするも…
「浮いちゃっているんだよね。ダメだ」
動かなくなってから15分後、車を置いていくことを決めました。番組はこの運転手に話を聞くことができました。
「腰まで上がってきた。あっという間に水が増えて、これはやばいと思って…」
千葉県内で路上に放置された車両は1200台以上とみられ、15日はその放置車両への追突事故も発生しました。
「ダメダメダメダメダメ!ダメだってば!」
柏市で高齢の夫婦2人が乗っていた車。その後、救助されましたが、女性は搬送先の病院で死亡が確認されました。今回の豪雨による死者はこれまでに9人。 そのうち4人は浸水した車内に閉じ込められたことによるものです。 こうした被害を避けるためには、どんな情報を集めて、どんな行動をとれば良いのでしょうか?
「不要不急の車の移動は、まず避けていただく。ハザードマップにかぶっているような道路は通行できないと思った方が良い」
実際に車の水没被害が相次いだ千葉駅周辺のハザードマップを見てみると、広範囲で浸水が想定されていることがわかります。
「万が一、冠水路に出くわしてしまったら、まずスピードを落とす。他車が起こす波・水しぶきでエンジンが簡単に破損してしまう。(水位が)タイヤの半分くらいだから走り切れるだろうということではない」
続く地下空間の浸水 校長自らウエットスーツで…
豪雨から2日。いまだ水に浸かったままの場所もありました。千葉市内の高校の地下駐車場です。
「駐車場の水を排水ポンプで外に出す作業を続けている感じですね」
ウエットスーツを着た校長が、腰の高さまで浸かるほどの水の中へと入っていき、ゴミなどを撤去していきます。
「幸い夏休み中なので生徒たちがね休みの期間なんで、生徒とか職員の被害も何もなかったのが幸いではありますけど…」
「あちらで排水が行われていますね。水がすごい勢いで出ています」
千葉市内のマンションでは、電気設備などがあった地下が水没しました。
地下の電気設備が水没 トイレの度に10階まで階段移動
「電気、水道、ガスが使えない」
現在、周囲では停電も断水も起きていませんが、このマンションでは、13日からライフラインが止まったままです。エレベーターも使えず、住人は階段で移動します。
「(Q.何階に住んでいる?)10階」
息を切らしながら10階に辿り着いた74歳の男性。
「一番困るのはトイレと風呂だよね」
近所のコンビニなどのトイレを借りているといいますが、そのたびに10階から階段で上り下りをしないといけません。冷蔵庫ももちろん使えず、食事はすべて外食に…。
「どうしようもないでしょ、この感じじゃ」
1万人超の帰宅困難者「トイレに1時間」
交通機関が麻痺したことによって、1万人を超える帰宅困難者も発生しました。
「とにかく早く家に帰って、慣れ親しんだお布団で寝たいっていうのがあります。」
女性は千葉市内の職場から、大網白里市へ帰宅途中に豪雨が押し寄せ、蘇我駅で身動きがとれなくなりました。
「アナウンスでも(周辺で)避難所とかを確保しててくださったらしいんですけど、 ロータリーが水浸しになっちゃって 動けないから…」
女性同様にJR蘇我駅周辺で帰宅困難者となったのは、およそ4000人。
「トイレがとにかく混んでいて、これの列なんですか?って聞いたら、お手洗いですって言われて、入るまでに1時間とか…」
帰宅困難者たちは肩を寄せ合うように蘇我駅で およそ12時間、過ごしました。14日の早朝、自衛隊のバスでようやく一時滞在施設へと輸送されました。女性の家がある大網白里市も甚大な被害を受けていて、ようやく帰宅できたのは、15日朝のことでした。
1万人を超える帰宅困難者が出たことについて、都市の水害に詳しい専門家と現場を訪ねると…
「今回の帰宅困難というのは、命をつなぐことができたと考えた方がいいと思います。泥水で地面が見えないところは絶対に歩いてはだめです。(水位が)くるぶしくらいまで来たらもう動かないと思っていただいた方がいい」
八千代市で51歳の男性の遺体が発見された現場近くの防犯カメラの映像には、住宅街が浸水していく一部始終が捉えられていました。 激しい雨と、時折、雷も確認できます。 みるみるうちに住宅街が浸水していき、車が通ると、大きな波が住宅に打ち付けます。 降り始めから2時間半が経過すると、かさ上げされている住宅の1階部分を、ゆうに超える水位となっていました。
想定超える雨量 ハードの整備は 都市型水害の課題
今回の豪雨による住宅の浸水被害は、1000棟を超えていることも判明。 都市型水害の課題も見えてきました。
「こういうところは、真っ先に水が溜まってしまう場所ですね」
専門家が足を止めたのは、JR千葉駅の目の前。実際に、2日前には冠水し、歩くことが難しくなっていた場所です。 一方で、一定の対策は講じられていたと言います。
「こちらのアンダーパスの入り口にも非常に大きな四角いマス(排水口)があります。これも、集まってきた水が通常よりも大きくなっても、ある程度飲み込めるように」
千葉市は、雨水を一時的にためる施設などを整備し、1時間に約65ミリの雨に耐えられるよう、対策を進めていました。しかし、今回の豪雨では、線状降水帯が3回も発生。 千葉市で観測されたのは、1時間で最大115ミリという、桁違いの雨でした。
「被害を及ぼない設計をきちんとして、街づくりができていますが、それを超える降雨が降ってしまった。今後はこれを前提に、あらゆる地域で都市を強靭化していく取り組みに大きく舵を切らなければならない」