社会

ABEMA TIMES

2026年8月16日 11:00

震災でキャンセル続出…地震の影響少ない地域を風評被害からどう救う?宿泊業関係者「客が楽しみ『大丈夫だ』と発信することは不謹慎ではない」

震災でキャンセル続出…地震の影響少ない地域を風評被害からどう救う?宿泊業関係者「客が楽しみ『大丈夫だ』と発信することは不謹慎ではない」
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 熊本県で最大震度7の地震が発生してから2週間余りが経過した。県によると8月12日時点で39人が死亡し、住宅被害は全壊・半壊などを含め2万7000棟に迫り、3585人が今も避難生活を送っている。一方、直接的な被害を受けていない地域でも風評被害が深刻化しており、県の調査ではおよそ14万件、20億円以上の損失が発生しているという。

【映像】震災の爪痕 大きく崩れたままの道路

 こうした状況を受け、高市総理は、「観光需要の回復」や「”風評被害の払拭”に向けた対策の検討」を加速するよう指示した。被災地の復興と観光業の回復をどう両立させるか。『ABEMA Prime』では、熊本の震災復興と観光業の現状について考えた。

■観光しても不謹慎ではない?SNS上の空気感がもたらす萎縮

宿泊キャンセル相次ぐ

 今回の地震で、観光名所の一つである阿蘇地域の一部で震度5弱を観測したものの、建物や道路への大きな被害は比較的少なかったとされる。しかし、阿蘇温泉観光旅館協同組合代表理事で阿蘇プラザホテル社長の稲吉淳一氏は、「今週はお盆なので少しお客様が戻ってきている状況だが、私どものホテルでも6割から7割の稼働にとどまっている。周辺の観光施設や飲食業も5割から6割という状況で、外から見ても車の行き来がまだ少ない」と現状を説明する。

 熊本県の木村敬知事は「観光の被害は甚大だ」と述べ、被害がほぼない阿蘇地方や天草についても「本当に厳しい現状がある」と語る。宴会需要の激減についても触れ、「ホテルの宴会なども今、思いっきり減っている。観光振興にしっかり取り組んでいきたい」と述べた。

 稲吉氏によると、発災直後には12月分の予約までキャンセルが相次いだという。ただ、「最近はSNSで一般のお客様が『阿蘇地方や天草なら行けますよ』とつぶやいていただけるので、観光に行くことが災害支援という考えを持っていただいているのではないか」と話す。

 2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、観光客が減少している要因としてSNS上の空気感を挙げる。「阿蘇プラザホテルには被災者の方も宿泊している。その横で『ウェーイ!』と飲み会しづらい空気もあるのではないか。被災地に物を送った人が売名だとSNSで叩かれたりもする。どちらかというと、『危うきに近寄らず』という感じで、本来お金を落としに行った方がいいと分かっている人も、今行くとマイナスの影響があると思ってしまう」と指摘する。

 その上でひろゆき氏は、「これは市民がどうこうで解決する問題ではなく、何が正しいのかを明確にする公の機関があった方がいい。熊本県知事がこの地域はもう被災と関係ないので飲み会でも何でもしてくださいと言ってくれる根拠があれば、楽しく飲み食いして帰りましたとSNSで書いてもバッシングに対抗できる。現段階では今行くべきではないとか、被災者の気持ちを考えろという人に反応する材料がないのが難しさだ」と述べる。また「余震が終わったと気象庁などが言ってくれれば、ビジネスをしている方もお客さんを呼びやすくなる」とも語った。

 文筆家・佐々木俊尚氏は、能登地震の際にもSNS上の世論が一方向に振れすぎた問題があったと指摘する。「最初は『ボランティアはまだ来ないでくれ』と発信されたが、『もうボランティアは行ってはいけないんだ』という情報だけが増幅してしまった。被災地の状況は時々刻々と変わっていくのに、そのグラデーションをSNSの世論がなかなか受け止められないという問題が確かに起きている」と述べる。

 佐々木氏はさらに、「どんなことをしても叩く人はいる。叩く人を無視していいという文化を作ればいいが、叩かれると怖いという人はたくさんいる。そこをどうするかという問題に最終的にはなってくる」と語った。ひろゆき氏は「旅行に行ったら楽しいところを見せたいのは当然で、熊本では見せられないとなれば他に行こうとなってしまう。『ウェイウェイ』と楽しんでくれた方が需要は元に戻る気はする」と述べた。稲吉氏もこれに同調し、「熊本全体が全部被災地というわけではない。大丈夫なんだということをどんどん出していただければいいし、それは決して不謹慎なことではないと思う」と語った。

 情報発信のあり方については、佐々木氏が「道路の状況や公共交通機関がどうなっているかの情報は調べれば分かるが、まとまって可視化されているものがない。どのエリアがどういう状況で、交通面としてどうなのかを赤・黄・青などで示し『ここなら全然大丈夫だから来てください』と言えるポータルサイトを作ってもらうといいのではないか」と提案した。木村知事は「全くその通りだ。阿蘇は道路も問題なく普通に動いている。そのことを改めて発信することを心がけなければいけないと気づいた」と応じた。

■「ふっこう割よりも風評被害対策」

熊本各地の震度

 10年前の熊本地震の際には、地震から3カ月後に「九州ふっこう割」が実施された。稲吉氏は当時を振り返り、「10年前は水もまともに出ていないときにふっこう割があって、なぜ今なのか、もう少し後にしてほしいという気持ちがあった。今回は木村知事に主導権を取っていただいて、来るべき時期を見てからふっこう割をしていただければ」と求めた。

 佐々木氏は「被災していないところは早く来てほしいからふっこう割をしてほしいし、被災しているところはもう少し後にしてほしい。そこで不公平感が生じる。ふっこう割の期間を長く伸ばして、最初は被災していないところを中心に当て、後半になって被災地の旅館が営業を再開するに合わせて手当てしていくような、きめ細かな対応が必要ではないか」と提言した。

 木村知事は「6年前の熊本県南部の水害の際、人吉温泉については時期をずらして対応しており、そうした判断は可能だ。国と一緒に準備を水面下で進めながら、打ち出すタイミングは最速でも9月に入ってからになるのではないか」と述べた。

 ひろゆき氏はこの点について、「ふっこう割というのは少し違うのではないか。ほぼ被害のない地域だけが盛り上がるというのは、被災側の気持ちに立てばモヤモヤする。これは大丈夫な地域が、お客さんに大丈夫じゃないと思われて減っているという風評被害対策であって、復興のためとは言葉の意味が違う気がする」と指摘した。木村知事はこれに同意し、「風評被害対策が今一番重要だ。県民の自粛ムードを変えて経済を回していくことが、ひいては被災地への支援につながる」と語った。

 ラジオプロデューサーの橋本吉史氏は、「県外の人がSNSを見てどう動けばいいか分からないという問題がなかなか拭えないとして、まず県内の観光を活性化する回し方があるのではないか。県民の皆さんがまず楽しそうにしている様子が見えれば、外からも入っていきやすくなる」と提案した。

 稲吉氏は、今後の対応として宿泊施設と行政の連携強化の必要性を訴える。「地震が起きてから被災者を速やかに近くのホテルや旅館に泊めていただける仕組みづくりを、県や各市町村と一緒に進めることが大切だ。10年前と今回の地震を通じて、知事をはじめ県の皆様と宿泊施設が話し合っていくことの重要性を強く感じた」と述べた。 (『ABEMA Prime』より)

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