大企業を中心に、早期退職の募集が急増している。昨年度、上場企業が募集した早期退職の人数は約2万人で、前年度の2.5倍に達した。賃金上昇が続く中、給料の高い中高年を減らす動きが加速している。割増された退職金を手に第二の人生を踏み出そうとする人もいるが、すべてがうまくいくわけではない。早期退職者の15%が“退職を後悔している”というデータもある。『ABEMA Prime』では50代からの生き方・働き方について、早期退職経験者とともに考えた。
■ひろゆき氏「スキルないまま辞めるのは無謀」

2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、早期退職をめぐる問題の本質をこう指摘する。「早期退職は、その会社・組織を辞めても他でも有効なスキルや能力、コネクションを持っている人がやるべきことだと思う。それも分からないで辞めたら、無職になるのは当然。早期退職制度の問題というよりは、スキルがないのに辞めてしまった人の問題ではないか」。
30年以上務めた公務員を退職し、現在は清掃アルバイトのエーショー西郷さん(55)は、2024年6月に53歳で早期退職した。「定年でもらえる退職金を53歳で受け取れる」という好条件に加え、職場での悩みも重なり、退職を決意。退職金と貯金を合わせて3000万円ほどあったため、すぐには再就職せず、まず動画編集スキルの習得にチャレンジした。しかし、入会金含めて50万円ほどを費やしたオンラインスクールも実を結ばず、50代の新人に仕事の依頼はほとんどなかった。
続いて挑んだ就職活動でも、経験を生かせるはずの地方公務員(自治体の会計年度任用制度)への応募で8連敗。現在は清掃の仕事に就いている。ただ、9月からは元職場に再雇用してもらう予定だという。西郷さんは「正直、辞めてもなんとかなるだろうぐらいの気持ちだった。ただ現実に収入が全くないと不安になる。焦りが焦りを生んでうまくいかなかった。スキルがないのに辞めるのは、本当に無謀だったとよくわかった」と振り返る。
ひろゆき氏はこうした状況を受け、「早期退職して、本当に働かないで幸せそうな人を僕は2、3人くらいしか知らないんですよね。大抵の人は暇になって孤独に耐えられなくなって仕事を始める」と語る。さらに「50代くらいでまだ動ける時に退職して引退はできないという現実をみんな知った方がいい」と話した。
■「孤独感に苛まれている」「キャリアは掛け算」退職後の現実

約25年間、大手メディアで社内システムを管理するエンジニアとして勤務し、5年前に早期退職した独身シンジさん(56)は、「会社の中での先が見えてきた、昇進の可能性がほぼないというのが一番大きかった」と退職の動機を語る。基本給の3年分上乗せの退職金を受け取り、「自分がしたいことをして生きてみたくなった」という思いもあったが、退職時点でやりたいことは具体的には決まっていなかった。現在も「ほぼ無職」の状態が続き、孤独感に苛まれているという。
「職場の人間関係や雑談というのが意外と大事だった。それがある上での『一人好き』だったと感じ、孤独感に苛まれている」と述べる。今後については「つながりを重点的に探していきたい。行きつけのカフェを作るとか、そういったことをやっていこうかと思う」と話した。
ひろゆき氏はこの点についても、「男性は孤独でやることなくなる率が高い。女性は友だちがいたり、家族や子ども・孫の世話で忙しくなったりコミュニケーションがあるが、男性にはそれが少ない」と指摘した。
一方、大手食品メーカーを58歳で退職し、現在はキャリアコンサルタントとして同世代のセカンドキャリア相談に乗る山田弘志氏(61)は、「50代はゴールデンタイムだと思っている。30代・40代にやったことが伏線となって、それを組み合わせていくのが50代」と語る。退職の決断については、社内でマネージャーからプレイヤーへと立場が変わる中、キャリアコンサルタントの資格を取得し、「自分の能力がまだあるんじゃないか、会社に求められている以外にも自分の力があるんじゃないか」という思いが芽生えたことが契機だったという。現在は「お金は激減したし、ストレスも不安も苛立ちもある。心は安定していないが、それでも前に進んでいる感はある」と述べる。
山田氏は、早期退職がうまくいく人とそうでない人の差について、「スキルが会社の中で通用するものなのか、市場で通用するものなのか。市場を意識しながらスキルを磨いている人、社内にいながらもそこを想定してやっている人は、いざそういうタイミングがあった時に選択肢が増える」と説明する。
■「自分の仕事の延長線上に次の仕事を描けるかどうか」

文筆家・佐々木俊尚氏は39歳で新聞社を退職した経験を持つ。「50代で辞めると路線変更しにくい。40歳くらいだとピボットしても新しい学びや気づきを作れる年齢だと思うが、50歳を過ぎると新しい学びは体力的にも精神的にも厳しくなってくる」と語り、より早い決断の重要性を説く。
佐々木氏自身は新聞記者として事件取材の経験を持ちながら、転職先のテクノロジー系出版社でコンピューターやインターネットの知識を習得。フリーになった後は、この2つを掛け合わせてネット犯罪の現場取材という独自の領域を開拓した。「ネット犯罪というのはテックの世界では知られていたが、実際に取材しに行く人は当時誰もいなかった。僕は事件記者だったからわざわざ取材に行った。そこが市場にハマって、いろいろな雑誌から依頼が来るようになった」と振り返る。
そのうえで、「自分の仕事の延長線上に次の仕事を作れるかどうかというデザインを描かない限り、転職にしろ独立にしろ難しい」と強調する。西郷さんのケースについても、「公務員がいきなり動画編集をやろうというピボットは相当難しいだろう」としながらも、「公務員のキャリアを生かしたYouTube発信なら生かせる可能性もある。因数分解していくと意外と繋がる可能性もある」と指摘した。
ラジオプロデューサーの橋本吉史氏は44歳で会社を辞め、現在はフリーで活動する。「『ラジオ局に入ったらラジオしかできなくなるよ』と言われたが、電波以外でもラジオのようなことができる時代になってきた。ポッドキャストがあるということは、辞めてもいけるんじゃないかと。ラジオみたいなことはいろいろなところでできるというライフワークのテーマが少し見えてきたので、そこに食らいついていけばいいかなという精神的な指針はできた」と語る。ただ「不安は毎日ある」とも明かし、会社員として中間管理職のストレスを抱えるのか、フリーになって将来の不安を抱えるのか、「どちらを天秤にかけるかは毎日考えている」と話した。
佐々木氏は「人生は長いのでちゃんと組み立てれば50代・60代も楽しいはず。もう一回組み立て直す、きちんと戦略を立てるのがすごく大事」と語る。山田氏も「大きな目標を掲げるとなかなか難しいので、目の前の景色を少しずつ変えていくくらいのつもりで小さい挑戦をしていく中で見つけていくというのが大事」と締めくくった。 (『ABEMA Prime』より)