7月28日に発生した地震により、一時休館を余儀なくされていた熊本県立美術館。館内や設備の安全点検を完了し、8月5日から無事に開館。展覧会が再開されました。
「幸い、来館者と職員に大事はなく、展会場につきましても被害はございませんでした。美術館建屋と設備の点検も終え、この展覧会が熊本のみなさまの希望のような、少しでも心の支えになるようなものになるとよいと考え、再開を決定いたしました」
柔らかな光と温かみのある色彩、そして瑞々しい表情。フランス印象派を代表する巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)の作品は、長年にわたって多くの日本人に親しまれてきました。実は日本国内には、彼の代表的な画題や重要な表現の試みを伝える作品が数多く収蔵されています。
バラの花と女性像
その代表格といえる作品の一つが、熊本県立美術館が所蔵する《胸に花を飾る少女》(1900年ごろ)です。この作品は、ルノワールが生涯を通じて手がけた「バラの花」と「女性像」を描いています。
粗く大胆な筆致で描かれた背景のバラに対し、少女の頬や手元には細かい筆仕事が重ねられ、柔らかい肌の質感が表現されています。バラの華やかさと少女の素朴な雰囲気が組み合わされた作品です。
「専用のガラスケースに収めてお宝然とロビーで公開していたのは収集当時。所蔵品の充実に伴いその後は展示室で他の作品とともに展示するようになりました。あまりに当館に根付きすぎたせいか、近年では『これって本物ですか?』と尋ねられることも。画中の少女も熊本弁を話すかもしれません」
日本の洋画界に与えた影響
ルノワールの表現は、19世紀末から20世紀初頭にかけての日本の洋画家たちにも大きな影響を与えました。例えば、ひろしま美術館が所蔵するルノワールの《パリスの審判》(1913-14年ごろ)と、彼に師事した梅原龍三郎による同名の《パリスの審判》(1978年、個人蔵)を比べると、日本の画家たちが模写を出発点としながら、独自の表現へと展開していった過程を客観的に観察することができます。
実は全国各地に点在
ルノワールの作品は、主要都市だけでなく日本全国のさまざまな地域に点在して収蔵されています。こうした各地の作品を一堂に集めた展覧会が「わたしたちのルノワール」です。会場では作品展示に加え、国内における作品の所在地を地図で一覧できる「所蔵館ガイド」のパネルなども展示されています。
同展は、熊本県立美術館を皮切りに全国5会場を巡回します。
2026年9月22日(火・祝)-11月15日(日) 静岡市美術館
2026年11月23日(月・祝)-2027年1月17日(日) 大分県立美術館
2027年1月26日(火)-3月28日(日) 東京富士美術館
2027年4月6日(火)-5月30日(日) 岡山県立美術館


