社会

ABEMA TIMES

2026年8月21日 07:30

身元不明遺体の“身体的特徴”報道に波紋…トランスジェンダー支援に携わる識者が指摘「特定個人と身体的特徴が結びつけばアウティング」身元特定の必要性とのバランスは

身元不明遺体の“身体的特徴”報道に波紋…トランスジェンダー支援に携わる識者が指摘「特定個人と身体的特徴が結びつけばアウティング」身元特定の必要性とのバランスは
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 静岡県下田市の海水浴場で身元不明の遺体が発見された。警察からの情報提供を受けた地元紙などが身元特定のために遺体の特徴を公表し、各メディアが報じた。公表・報道された情報には、推定年齢や身長、髪型、服装、装飾品、ひげの有無、性別に関する推定などが含まれていた。

【映像】報道された遺体の外見などの情報

 この報道に対してSNS上では「アウティングではないか」との声が相次いだ。アウティングとは、性的指向や性自認について本人の了解なく周囲に伝える行為を指す。身元不明の遺体における報道と、アウティングの境界線はどこにあるのか。『ABEMA Prime』では、この報道を事例に考えた。

■身元不明遺体の報道とアウティング

村田しゅんいち氏の見解

 MixRainbow理事長でトランスジェンダーであるみのり氏は今回の報道について「明らかにアウティングだ」と語る。「身元特定の重要性は当然だが、そこには段階と手段のバランスが必要だ。警察の現場では歯科の治療跡や指紋といった科学的な身元特定がまず動いている。呼びかけとしても服装やピアス、身長、着衣といった情報で第一歩としては十分に足りているのではないか。プライベートな身体情報を全国にいきなりさらすことは、後々判明するであろうご遺族の方への配慮として著しく欠けているのではないか」と述べる。

 一方、一般社団法人TransgenderJapan事務局長でバイセクシャルの村田しゅんいち氏は「現時点ではアウティングとは言い切れない」との立場を示した。ただし、その背景として「現在、トランスジェンダーだということが暴露されたり、あるいはトランスジェンダーではないかと疑われた段階で、様々な身に覚えのない加害者性や犯罪者性をつけられてネットで根掘り葉掘り言われるということがここ5年くらい起きている。そういうトランスジェンダーに対する過酷なバッシングのもとにトランスジェンダーが生きている」とした。

 その上で村田氏は、身元不明の遺体の情報を集めるという目的があった以上、現時点ではアウティングとまでは言えないと説明する。しかし「今後、ご遺体は誰のものだという報道が出てしまったら、それは特定個人と体つきの特徴が結びつくのでアウティングになる」と指摘。身元が判明した際には特定の個人名と身体的特徴が結びつかないよう、報道機関に工夫を求めた。

 また、みのり氏が「ご遺族の方が後に判明した時にどのような気持ちになるかを考えてほしい」と述べたことを受け、村田氏はアウティングの概念をより広く捉えるべきだとも語る。「アウティングは決して性自認と性的指向だけではなく、自らの体つきに関しても言える。そして、アウティングは決してLGBTに関するものだけではない」と述べ、体のプライバシー全般の問題として位置づけた。さらに「『性別』という意味での『セックス』や『ジェンダー』というものが個人情報・プライバシーであるという意識が、この社会全体にまだまだ浸透していない」とし、そのような表記をしてよいのかを確認していく社会的な土壌が必要だと説いた。

■報道における公益と個人プライバシーのバランス

SOGI/SOGIE

 フリーアナウンサーの柴田阿弥は「これは公益と個人のプライバシーのバランスの問題だ」と切り出した。「ご遺族の方がもしかしたら探していらっしゃるかもしれない。それを報道で知るためにも身体情報が必要な場合がある。今回は事件か事故かもまだ分からない状況で、捜査も早く進めないと、事件だった場合には別の被害者が出るかもしれない。身元特定という重大な課題を優先していると思う」と述べる。

 また報道の表現についても言及し、「各社の報道では『生物学上の女性と見られる』との表現で断定はしていなかったと思う」と話した。これに対して村田氏は、「『生物学的女性』という言葉は2020年以降、トランスジェンダーへの攻撃の文脈で使われてきた言葉でもある。報道の仕方という意味では、『女性と見られる』や『生物学的女性』ではなく、『性的特徴は女性を示している』といった書き方の工夫が必要だったろう」と語った。

 柴田はこれを受け、「よくない言葉の使い方をしてはいけないのはもちろんだが、身元特定という1分1秒を争う公益性の高い場面では、分かりやすくかつ多くの人に誤解のない言葉で届けなければならない。差別用語がない限り、身体的特徴の羅列において言葉狩りになってしまうのは良くない」と持論を展開した。

■外見が報道されることの意味

報道におけるアウティングの可能性

 2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏は、身元特定のために外見的特徴を伝えることは必要だとしつつ、問題はより広範に及ぶと指摘する。「迅速さを求めたら身体的特徴を流した方が早く身元が分かるという可能性もある。でもその人がどういうルーツかを公表していない可能性もある。髪の薄い人もカツラを被っているかもしれないが、髪の毛がないと表現されるかもしれない。外見が報道されるとはそういう状態だ」と語る。「よく分からない理由をつけてその報道自体を制限するのは、事件の解決を妨げる」と指摘した。

 哲学研究者の森脇透青氏は、社会を動かすうえでの粗いカテゴリーの問題として捉えた。「男女とか30代・40代とか、ある程度今まで粗いマスでやっていくしかなかった。ただ、そうした区分に当てはまらない人にとっては『違う』となる。全てをすぐに受け入れることはできないが、議論されるべきは些末なことかどうかではなく、社会としてどこを受け入れられるのかということだ」とした。

 上智大学文学部新聞学科教授の音好宏氏は、報道側の主体性という観点から問題を整理した。「今回このことを報じたメディアは、そんなに多くないと思う。警察の発表内容が比較的に多めに出ていた可能性もある。重要なのは、報道機関は自らのこれまでの蓄積と経験の中で選択して、主体的に報じなければならないのに、そこがどうだったかということは問われなければならない」と述べ、報道機関側がこのような情報をどのように報道していくかが今後の課題だと述べた。 (『ABEMA Prime』より)

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