海水浴などで海に出かける人が多くなるこの時期に増えてくるのが、「アワビ」や「サザエ」などをとる密漁です。海水浴客にまぎれた密漁者を摘発する海上保安庁の密漁パトロール隊を取材しました。
“レジャー感覚の密漁”増加
日本海の岩礁域に生息する海の幸。今、まさに旬を迎えているアワビは、“海の宝石”と言われるほどの高級食材です。
日本海の自然が育むサザエは、身の締まったコリコリ食感に濃厚な磯のうまみが絶品。新潟県内の漁獲量は、全国第1位を誇ります。
そんなアワビやサザエに、忍び寄る“魔の手”「密漁」です。
本来、水辺に生息する貝類などの多くは、許可なくとることは禁止されています。
しかし近年、夏のシーズンに個人での消費を目的とした“レジャー感覚の密漁”が増えているといいます。
「気軽に海に入れる時期なので、そういう(密漁の)被害が増えるのではないかと思っています」
新潟海上保安部に密着
悪質な密漁者を取り締まる、新潟海上保安部に密着。この日、向かったのは、過去にも密漁者が相次いだ新潟県村上市です。
「網袋っぽいの持っているっぽい、右手に」
海上保安官が目を付けたのは、右手に網袋を持っている男性。両手には手袋もしています。
駐車場前に設置されている「密漁監視中」と書かれた旗。そのすぐ横で、男性の動向を見張っていると…。
「たぶん、何かを見つけてとりに行きましたね」
多くの海水浴客でにぎわう中、男性は何度も素潜りを繰り返し、まるで“何かを探している様子”です。
海上保安官が監視をすること18分。クーラーボックスを片手に、一緒にいた女性と駐車場のほうへ向かってきたところで声をかけます。
「こんにちは、新潟海上保安部です。なにされていましたか?」
「海…」
「海水浴していました」
「海水浴をしていただけ」と主張する2人。しかし、海上保安官が追及すると…。
「何か、とられていませんでしたか?」
「クーラーボックスを持ってこられたので」
「何も持っていない」
「何とられました?見せてもらっていいですか?」
「クーラーボックス?」
「正直におっしゃってください。何とられました?」
「貝…」
「なんの貝ですか?」
「サザエ」
中に入っていたのは、サザエです。
約1キロのサザエを…
サザエは多くの海域で漁業権が設定されていて、これを侵害した場合、100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
「何で最初(サザエを密漁したことを)隠されたんですか?」
「いや、隠してはない…隠してはないです」
「いや、潜っていただけって」
「潜っていたのは、潜っていたので」
「(密漁したサザエは)何個ぐらいですか?」
「いや…ハハハ…」
「数えてください」
素直に事情聴取に応じようとしない2人。
「とったのは誰ですか?」
「お二人?何個ずつ?」
「4、5個ぐらいずつ?」
「かなぁ」
「比率は関係あるんですか?」
「まったく関係ないです。2人でとった?」
「2人でとったからじゃあ悪いとか。1人だからいいとか、そういう?」
「そういうのではないです。正直に教えてほしい」
「その聞かれ方が…どっちがとったんですか、2人なんですか、1人なんですか、みたいな感じなので…」
2人に対し、海上保安官は次のように話します。
「漁業法違反っていうのは分かりますよね?」
「あんまり詳しくない」
「密漁禁止の看板は?」
「見えなかったです」
「あそこ(駐車場前)にあるけど?」
「見えなかった。ごめんなさい」
「とろうと言ったのは、どちら?」
「とったのは、最初は俺かもしれない」
「奥さんはサザエを見て、一緒にとった?」
「関係あるの?」
「関係ありますね。実際、どうなんですか?」
「実際はとれませんでした。私も(サザエを)見つけられるかなと思って(海の)中を見たけど…分かりませんでした」
“自分はサザエをとっていない”と主張する女性。しかし、2人は合計9個・およそ1キロのサザエを密漁したとして検挙。漁業法違反の疑いで捜査が続けられています。
「探したけど、いなかったと」
「それは、とろうとしたんじゃないの?共犯じゃない?」
密漁したサザエは写真を撮った後、海上保安官の手によって海へ返されます。
「(密漁禁止の)看板見てないからと言って許されるものではないし、本人はいけないと分かっていた」
漁獲量減少で価格高騰も
漁業関係者によると、アワビやサザエの漁獲量は20年ほど前と比べて3分の1に減少。そこに密漁被害が追い打ちをかけているといいます。
「アワビ・サザエが少なくなっているんですよ。我々がお金を出して稚貝を放流しているわけですよ。それを勝手にとられると困る。それでなくても今、育ちが悪いんだから」
密漁により今後さらに漁獲量が減少すると、価格が高騰する可能性があると言います。
新潟市内にある飲食店では…。
弥久保雅樹料理長
「安定している時は(アワビが)1キロ1万円〜1万3000円くらいで入るんですけど、とれなくなってくると1キロ2万円以上いく時も。もしかしたら、それは密漁で少なくなっていて、市場に出回らないから」
素直に事情聴取に…
別の日、パトロールをしている海上保安官のもとに…。
「別の班から『今まさに貝をとっているものが海にいる』と」
現場へ到着すると、すでに別のパトロール隊が男性と接触していました。
「とったのは、あなた1人?」
「自分1人です」
「とるに至る話は聞いていて、看板も見ていて正直にしゃべっていただいている」
「とったもの、これだけでよかったですか?」
「これだけです」
「サザエ?」
「サザエだけです」
「このサザエなんですけど、私たちに提出してもらっていいですか?」
「全然良いです。申し訳なかったです」
自らの違反行為を認め、素直に事情聴取に応じる男性。サザエ26個(2.16キロ)を密漁したとして、検挙されました。
「何で、とっちゃったんですか?」
「姉の子どもに見せたいなって」
「ダメなのは、もちろん分かっていますね?」
「分かっています」
「(看板も)見たんですよね」
「そうですね」
「見たのに何で、とっちゃった?」
「前に来た時に、何人かとっている人を見かけて、良いのかなって言ったらあれだけど…」
子どもたちと楽しい夏の思い出を作るはずが、“他にもやっている人がいる”という軽はずみな気持ちで台無しに。
「サザエはこの海域では密漁禁止の対象魚種になっていますので検挙しました。海水浴に来られる時期が一番多いのかなと思います」
夏の海に忍び寄る密漁者は全国で相次ぎ、検挙件数は年々増え続けています。
サザエ200個以上密漁か
京都府北部の海岸では…。
「網袋を持っている。黄色の網袋。何か入っている」
「クーラーボックスに入れた」
男性は撮影されていることに気づいたのか、周囲を警戒。海上保安官が声をかけると、次のように話しました。
「すごい量ですね。いけないことと分かっていたんですよね?看板も見たんでしょう?」
「見たでしょうって言われたら、見たけど」
引き揚げた網やクーラーボックスにはサザエ210個、アワビ1個が入っていました。
「これ、どうするつもりだったんですか?持って帰って食べるつもりだったんですか?」
「ちょっととっていただけで、持って帰りはしない」
「これだけたくさんとっているので。ちょっととってみたっていう量じゃないじゃないですか。それは、さすがに無理があるんじゃないですか。袋に入れて、とってみたというのは難しいですよ」
「持って帰らないよ」
漁業法違反の疑いで捜査が続けられています。
ドローン×AI活用
全国で後を絶たないレジャーシーズンの密漁被害。そこで取り締まり強化のため注目されているのが、ドローンとAIを活用した密漁の取り締まりです。
今月、神奈川県横須賀市で行われたのは、ドローンを活用した密漁の取り締まり。ドローンが撮影した映像をAIシステムで解析します。
関東学院大学 元木誠教授
「検知した人が密漁者か海水浴客かというのを判定する」
AIが人物を検知し、その様子から“密漁行為”と判断されたら赤の表示になります。
ドローンが捉えたのは、海の中から“何か”をとり、ズボンに入れる男性の姿です。
近くで待機していた職員は、海から上がってきた男性に接触します。
「ポケットの中を見せていただいてもよろしいですか」
男性は、サザエ19個、トコブシ14個、バテイラ1個の合計34個の貝を密漁したとして検挙されました。
小笠原健太警備救難課長
「システムの正確さというのが、これで実証されたと思うので、実際の導入にはまだ道のりは長いと思うけど、より効率的に取り締まりをできるようなシステムの導入が、今後も検討を進められるといいなと考えている」
(2026年8月21日放送分より)















