社会

ABEMA TIMES

2026年8月22日 07:30

「これが普通だと思っていた」精神疾患の親のもとで育った当事者の“予測不能な日常”と、SOSを出せない社会の壁

「これが普通だと思っていた」精神疾患の親のもとで育った当事者の“予測不能な日常”と、SOSを出せない社会の壁
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 精神疾患を抱える人は世界でおよそ12億人にのぼるとされ、日本でも心の病を抱える人が増加している。もちろん全員が影響を受けるわけではないが、精神疾患を持つ親のもとで育つ子どもは、自分自身も精神疾患になるリスクが高まるという研究もあり、親のケアによるストレスなどの環境要因から発症リスクが高まることが分かってきている。

【映像】「父の機嫌で予測不能な生活に」当事者のリアル

 しかし「家族のことだから」と抱え込み、SOSを出せない子どもは少なくない。「家庭のことを相談しようと思っても、親から病気のことを言うなと言われていたり、偏見から言えなかったりする。友達に話した経験がある人は本当に少ない」との声もある。

 『ABEMA Prime』では当事者や専門家とともに、精神疾患の親を持つ子どもの現状と、必要な支援について考えた。

■「これが普通だと思っていた」当事者が語る幼少期

平井登威氏の略歴

 精神疾患の親を持つ子どもや若者を支援するNPO法人「CoCoTELI」代表の平井登威氏は、自身も幼稚園年長の頃に父親がうつ病となり、家庭環境に影響を受けた当事者だ。

 「親の気持ちの調子に応じて、日々の生活が変わっていく予測不能な生活が続いた。何を考えるにしても、決めるにしても、父の機嫌や調子を最初に考えてから決めていくのがベースになっていた。けんかや暴力が起きることもあった」と当時を振り返る。

 小学生時代について、平井氏は「これが普通だと思っていた」と語る。「家庭のことを同級生から聞くことはなかなかないため、自分が生活している環境を当たり前のように感じてしまう。精神疾患はすごく偏見があるのでオープンにされることが少なく、学ぶ機会も全然なかった」と説明する。

 父親の病気を認識したきっかけも、あいまいだという。「姉かおばから聞いた記憶がある。家の中でトラブルが起きたときに『お父さんはこういう病気だから許してあげて』と言われた。ただ、うつ病というもの自体を知らず、病名だけ教えてもらっても、具体的な説明がなく、理解するのが難しかった」と明かした。

 平井氏は「大きなことを想像されがちだが、『日々ずっと親のことを優先する』という小さいことの積み重ねに、しんどさがある。予測がつきづらいこともしんどさにつながりやすい」と話す。人の顔色をうかがう習慣は、その後の友人関係や恋愛にも影響したという。

■「情報がない」ことが子どもを追い詰める

田野中恭子氏

 精神疾患の親を持つ子どもの支援を研究する佛教大学看護学部の田野中恭子教授は、当事者へのインタビューから見えてきた子どもたちの困難について解説する。

 「精神疾患に関して情報が得られず、訳も分からずに親の症状を見るしかない。私がインタビューした子どもの9割は、『誰からも説明を受けなかった』。大人であれば病気を宣告された場合に自分で調べて理解しようとするが、子どもは“知る”ことさえも分からない。親が激しいことを言えば、『自分が親を怒らせたのではないか』と責任を背負ったり、『親が元気に過ごすために、自分はどう振る舞えばいいか』と考えてしまう」と述べる。

 さらに、「親も苦しんでいて家事ができず、食事が十分に取れなかったり、基本的な生活習慣を教えてもらえない子もいる。集団生活に入って初めて『歯みがきって毎日するものなんだ』と気づく子や、友達から『汚い』と言われて恥ずかしいと感じる子もいる」と、生活面での影響も指摘した。

 一方、家庭の外でも周囲に話しづらい状況がある。「精神疾患はあまり理解されていないので、周囲の友達に話しても『なんだそりゃ』という感じで返答に困る。『じゃあこれ以上言わない方がいいよね』となってしまい、子どもが安心して自分の気持ちを出せる場がない。自分の気持ちを支えられない、ということが18歳以上になっても続いている」と、周囲の理解不足がもたらす孤立を語った。

■「精神疾患、誰でもなるよね」という社会へ

親が精神疾患 子どもをどう守る?

 発症リスクについては、「一般の方よりも2〜10倍リスクが高いと言われている」としつつ、数字の受け止め方に注意を促す。「統合失調症は100人に1人の発症で、そこで10倍のリスクということは1割の子しか発症しない。うつでも8割以上の子は発症しない。『遺伝だから』『あの親だから、この子』と捉えると、親も子もつらくなり、誰にも相談できなくなる。どちらかというと、周りが『精神疾患、誰でもなるよね』と感じて、『大変なんだね、一緒に考えよう』と遊んだり通学したりするだけでも、偏見の目にさらされずに暮らしていける」と話す。

 支援体制については、海外の事例を紹介した。ドイツでは患者に子どもがいると分かれば、精神科医が必要な情報を提供し、子どもへの説明や家族会議を通じて、専門家が入りながらコミュニケーションを取る仕組みがあるという。「日本もヤングケアラーの知名度が広がり、こども家庭庁や子育て支援センターが、精神疾患の親を持つ子どもにも着目してくれている。より深めて支援を入れていけるといい」と期待を寄せる。

 平井氏は現行の支援の限界にも触れる。「今の支援は、困った子どもから相談を送るものが基本。しかし話を聞くと、親が発症したタイミングは10年前ということもある。親が治療につながっていても、その子は支援がつながらないまま、不調になる。このタイムラグを考えると、親のメンタルヘルス支援から、早期に親子やパートナーも含めて家族をまるっと支えていく視点にすることが非常に重要だ」と、予防的支援の必要性を強調した。

 最後に平井氏は「親が精神疾患である子どもへの支援が整うことは、メンタルヘルス不調を有する方が子育てをしやすい社会につながる。対立ではなく、本人も家族も生きやすい社会をどう作っていくかを、仕組みからしっかり考えていきたい。NPOとして事例を作り、声を上げていきたい」と語った。

(『ABEMA Prime』より)

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