各地で安全性に問題のある擁壁の崩落が相次いでいます。
相次ぐ地震や大雨で崩落のリスクはさらに高まっていて、賠償責任が問われる可能性もあるといいます。
対策についても、みていきます。
■相次ぐ『擁壁の崩落』 原因は?危険箇所は全国200万超
擁壁とは、高低差がある土地に住宅などを建てる際に設けられる壁のことです。
土台の土砂が崩れることを防ぐもので、『コンクリート』や『ブロック』『石』などが使われます。
この擁壁の崩落が相次いでいます。
具体的な事例です。
ケース1、2026年6月の、鹿児島市です。
県道沿いの擁壁が、高さ約5メートル、幅約15メートルに渡り崩落。
道路側に擁壁の一部や土砂が流れ込み、一時、一車線が通行止めになりました。
当時、鹿児島市を含む薩摩地方には『線状降水帯』が発生していました。
ケース2、2024年1月の、新潟・糸魚川市です。
住宅地の土台となる擁壁が相次いで崩れ、3世帯5人がホテルに避難しました。
当時、現場周辺は『能登半島地震』により震度5強を観測していました。
壁が崩落した場合の責任についてです。
民法で定められている『土地の工作物等の占有者および所有者の責任』です。
擁壁などの土地工作物が壊れ、他人に損害を与えた場合の損害賠償責任は、その土地の工作物の占有者(実際に管理・使用している人など)が最初に問われます。
ただし、占有者が損害の発生を防止するために必要な注意や対策をしていた場合は、責任は、所有者に移ると定められています。
例えば、賃貸アパートでは、借主(部屋を借りている人)が占有者に当たる場合には、借主が責任を問われる可能性があります。
しかし、所有者に対策を求めるなど、損害の発生を防止するために必要な注意を尽くしていた場合には、所有者が責任を負うことがあります。
ケース3、大雨も地震もないのに擁壁が崩落です。
2025年9月、東京・杉並区では、木造2階建て住宅の、土台部分にある擁壁が崩れ、住宅が全壊しました。
擁壁は、高さが4メートルから5メートルで、1968年に造られたものでした。
隣接するマンションに、がれきが流入しましたが、けが人はいませんでした。
なぜ崩れたのでしょうか。
国士舘大学理工学部特任教授の橋本隆雄さんによると、考えられる要因は3つ。
1、経年劣化
2、強度不足
3、排水不良
「擁壁は通勤、通学路や行きつけのスーパーなど、あらゆる場所に存在する。危険な擁壁は全国に200万カ所ほど存在すると言われている」
なぜ擁壁の崩落が増えているのでしょうか。
擁壁は、多くが高度経済成長期に土地開発でつくられました。
50年以上経過し、一斉に老朽化していて、“寿命”を迎えているということです。
さらに近年は、気象庁によると、1時間に80ミリ以上の猛烈な雨の頻度が、1980年ごろと比べて倍増しています。
『擁壁』内部の土砂が多くの水分を含むことで圧力が高まり、崩落リスクが高まります。
「老朽化に加え、近年は、大雨や地震で擁壁が倒壊するリスクはより高くなっている。一見しただけでは劣化やリスクに気付きにくいので、早めの備えが必要」
■崩落すれば所有者に責任も 擁壁工事 大雨・地震で相談急増
擁壁工事を行う会社の相談件数です。
1月から6月は、月約20件でしたが、7月の熊本地震以降は、月約40件と倍増しています。
「最近は地震や大雨などの災害が多く、『何か起こった時、自分の家は大丈夫か』と不安を感じて、問い合わせをする人が増えている」ということです。
相談の事例です。
設置から約50年が建つ擁壁です。
所有者は「擁壁の一部の石が取れてしまっている」と点検・補修を依頼しました。
点検の結果、石に隙間や膨らみがありました。
排水設備に問題もあり、約200万円で補修工事をすることになりました。
「擁壁が崩れてしまったら近隣住民へ迷惑をかけるほか、もっと莫大な費用が必要に。私には安全に敷地を管理する責任があるため、崩れる前に何とか対処しなければ」と話しています。
■空き家の擁壁 過去には行政代執行も
空き家の擁壁では、行政代執行が行われたこともあります。
2016年、北海道・室蘭市の空き家のケースです。
擁壁が高さ2メートル、幅16メートルに渡って崩れ、隣の家の窓やタンクが壊れました。
室蘭市は「倒壊の危険」があるとして、市外に住む所有者に、崩れた擁壁や土砂の除去、建物の解体などを指導・命令しました。
しかし、空き家の所有者は「資力がない」として、命令に応じず。
空き家対策特別措置法に基づき、行政代執行が行われました。
工事では、空き家の解体や擁壁、土砂の撤去など、工事費は約800万円かかりました。
市が立て替えて、空き家の所有者に請求し、所有者が現在返済中です。
「個人の財産に行政が介入するハードルは高く、崩落前に行政代執行へ踏み切ることは難しい。所有者不明の空き家が増えれば、危険なまま放置される擁壁も増える恐れがある」
■『危険な擁壁』チェックポイント 崩落 未然に防ぐ取り組みも
危険な擁壁のチェックポイントです。
国士舘大学の橋本特任教授によると、危険な擁壁の特徴は、
・ひび割れが発生している
・膨らみがある
・前後・上下にずれがある
・傾いている
・水が漏れている
・水抜き穴が土で詰まっている、植物が生えている
そして、特に危険なのが、
・水平にひび割れをしている擁壁、です。
危険な擁壁を見つけたらどうすればいいのでしょうか。
まずは自治体に連絡しましょう。
自治体は、現地調査を行い、危険度を判断。
所有者に、指導や勧告、改善命令を出します。
最悪の場合は、行政代執行を行うこともあります。
自治体の取り組みです。
東京・調布市では、『擁壁・がけマップ』という地図を公開しています。
調布市内全域の、高低差2メートル、傾斜30度以上の擁壁やがけを調査しました。
擁壁やがけの場所を、地図上に緑色で表示しています。
※危険な擁壁がある場所を示した地図ではありません。
調布市の担当者によると調査方法は、都が作成し公開している、都内の3Dデータをもとに、擁壁やがけの候補地を抽出。
その後、現地調査を実施した、ということです。
「地図で示しているのは、すぐに危険性がある箇所ではないが、市民の安全安心を考えた際、擁壁やがけの数を把握できていないことを問題視し、調査を始めた」ということです。
東京・大田区の取り組みです。
4月に、公道に面した擁壁などの大規模工事に対し、助成金を最大1500万円まで引き上げました。
7月からは、擁壁の補強工事に上限200万円まで助成することに。
「区は子育て支援に力を入れており、通学路などに面する擁壁設備に力を入れていく必要があると判断した」ということです。
「擁壁の工事費用は高額になるが、近年は、自治体が相談会を開催したり、助成金でサポートしてくれる制度も増えている。専門家の無料派遣などもあるので、まずは住んでいる自治体に確認。適切な工事を行うことが大切」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2026年8月27日放送分より)















