社会

ABEMA TIMES

2026年8月29日 11:00

研究するほど就職難?各分野で進む“研究者・専門人材不足”に識者「博士号=研究者のイメージが強すぎる」「博士課程の学生を社会がもっと評価、採用すべき」

研究するほど就職難?各分野で進む“研究者・専門人材不足”に識者「博士号=研究者のイメージが強すぎる」「博士課程の学生を社会がもっと評価、採用すべき」
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 相次ぐ豪雨や大地震が社会を揺るがす中、日本の防災・原子力などの専門分野で研究者不足や専門人材の確保が課題となっている。 大学院の博士課程に進む人材は長期的に伸び悩んできた一方、研究職以外でのキャリアパスも十分に広がっておらず、 優秀な若者が研究の道を敬遠する状況が続く。日本の質の高い論文数の国別ランキングでも、2000年代初頭と比べて順位は大きく低下している。『ABEMA Prime』では、研究者不足と博士号取得者のキャリア問題について考えた。

【映像】豪雨により地面からビルより高く水が吹き出した瞬間

■防災・原子力、それぞれの現場で深刻化する「人材の空洞化」

博士号取得数

 津波・水災害に関する防災を専門とする関西大学学長の高橋智幸氏は、防災研究の現状についてこう語る。「現時点では日本の防災研究は世界のトップレベルにある分野が多い。海外の災害の多い国から若い研究者が日本に学びに来てくれている状況もある」。ただし、今後の見通しには懸念を示す。「今後減っていく可能性があり、せっかく日本が得意なところが弱くなる」と述べ、「今ならばまだ研究者を増やして維持できるところにある」と訴える。

 さらに高橋氏は、研究者だけでなく実務を担う技術者の不足も問題視する。「行政において防災をデザインする、コミュニティの防災をデザインする、それを実現する実務者にも専門性が求められる。防災研究者以上に不足が始まっている」と説明する。海外では行政でも民間企業でも博士号を持つ人材が多いという。

 原子力工学を専門とする東京都市大学理工学部教授の高木直行氏は、原子力分野の人材不足についてこう述べる。「原子力の人材は足らなくて困っている。企業・研究機関はどうやって人材確保するかに苦心している」。技術力の低下とノウハウの断絶も深刻だとして、「技術伝承が途切れてしまうことが非常に大きい」と語る。2011年の福島第一原発事故後に多くの大学が原子力学科の看板を下ろした経緯があり、人材育成が十分になされなかった時期の影響が今に及んでいるという。一方で、2022年ごろから政府方針が「原子力を最大限活用する」へと転換したことで状況は変わりつつあり、「うちの大学の学生たちが元気になったというのを肌で感じている」とも話す。

 研究者のキャリア問題に詳しい病理医の榎木英介氏は、自身の経験を踏まえてこう語る。若手研究者の民間企業への就職は少しずつ改善しているものの、大きく広がっているわけではなく、「大学などに残ると、任期付きの雇用で点々とするという研究者がとても多い」という。3年・5年と期限付きの契約で雇用され続け、いつか大学の教員ポストを得ようとするが、雇い止め問題もあり「なかなか次のステップに行けないという研究者がたくさんいる」と述べる。将来のキャリアパスが見えないことで、若手が研究者の道をなかなか選ばなくなる状況が生まれているとも説明する。

 また、博士号取得後に任期付きの研究職に就く人は「ポスドク」と呼ばれる。こうした人たちが安定したポストを得にくい、いわゆる「ポスドク問題」について質問が飛ぶと、榎木氏は「大学に行っても助教授や准教授ぐらいの期間付きが結構多い。常にプレッシャーに追われ、論文を書かなきゃいけない、研究費を取らなきゃいけないと追われ続けている。精神的なプレッシャーがすごいという話はよく聞く」と説明する。40歳を超えてもキャリアの見通しが立たないケースも多いとした。

■「博士号取得者=研究者」という固定観念を変えたい

トップ10%論文数の推移

 他の出演者たちからは博士号取得と就職・待遇の問題について積極的な意見が飛んだ。パックンは「需要と供給が狂ったこの場合なら、給料がグンと跳ね上がるはずだが、そうなっていない。お金を出せないなら誰も研究者になりたくない」と指摘。付加価値の高い人材に見合う報酬を出すべきだと主張した。

 近畿大学 情報学研究所 所長 夏野氏は、かつて自身が博士・修士・学士で入社時の給与を差別化した際、「労働組合からクレームが来た。会社に入ってからの仕事のクオリティは関係ないと組合が言ってくる」という経験を明かし、年功序列の壁が変化を阻んでいると語った。

 これらの議論を踏まえ、高橋氏は「博士号取得者=研究者」という構図が日本では強すぎると問題の核心を語る。「海外では博士号取得者は研究機関だけでなく、行政でも民間企業でも当たり前にいる。博士号は専門を深めるだけでなく、その過程で課題解決能力を学ぶ。それはどの分野にも適用できる」と強調する。

 さらに高橋氏は、防災の分野では企業側が「博士号まで必要ない。学士・修士でも入ってから鍛える」という姿勢をとりつつ、採用した社員を後から社会人ドクターとして大学に戻すケースもあるとして、「であるならば、長年我々が訓練してきた博士課程の学生たちを採用する動きもできれば考えていただきたい。もっと社会が評価すべきだ」と訴えていた。 (『ABEMA Prime』より)

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