東京・新宿の「トー横」周辺では、警察によるパトロールの強化や補導活動に加え、行政や民間団体による若者の支援・保護の取り組みが行われている。事件や事故、犯罪被害などのリスクから未成年者を保護しようとする大人の動きが進む一方で、当事者である若者の間では、過剰な介入に対する強い負担感や戸惑いが広がっている。
大人側からの親身な声かけが、若者にとっては問い詰めのように感じられてしまう場面もあり、「過度に理由を追及されたくないが、完全に放っておかれたいわけでもない」という複雑な心理的葛藤が存在する。『ABEMA Prime』には、トー横に通う若者たちが出演し、次々と本音を語った。
■なぜリスカやODをするのか…理由を追及する大人への拒絶感

トー横に集まる若者たちに対して、危険から救い出そうと声をかける大人もいる。しかし、その親切心が当事者にとっては心理的なプレッシャーとなっている場合がある。トー横歴約3年半の17歳女性・みぃさんは、大人や支援者から向けられる問いかけに対して抱く違和感と拒絶感を次のように明かした。
「大人から『話を聞くよ』と言われて、自分のことを素直に話せる子もいれば、話したくない子もいる。周囲の大人は優しさや心配から『なんでオーバードーズ(OD)しちゃったの?』『なんでリストカット(リスカ)したの?』『なんで歌舞伎町に来ているの?』と理由を聞いてくるのだと思う。しかし、そうやって聞かれても、自分でもなぜやってしまったのか理由が分からない時もある。そこまで深く追及しないでほしい。なぜやったのかをすぐに答えられる子のほうが少ない。大人側が助けようと思って声をかけてくれているのは理解しているが、こちら側からすれば、聞かれたくないことを聞かれていると感じてしまう」。
みぃさんは、大人側の善意を理解しつつも、自身の行為や状況について理由を問い詰められることが当事者にとって大きな負担になっている実態を強調した。
大人からの積極的なアプローチや問診のような介入を嫌う一方で、若者たちは大人の存在を完全に拒絶しているわけではない。みぃさんは、自身を含めた若者たちが大人に対して本心から望んでいる接し方について、以下のように語った。
「自分が言いたくなったら自分で言いに行くから、それまでは放っておいてほしい。隣にいられるのであればいてほしいけれど、自分が言えるようになるまで待っていてほしい。基本的には何も気にせず、言いたくなったら自分で言いに行くスタンスでいたい」。
この言葉に対し、共演者からは「遠くから見守ってほしいという絶妙な距離感だ」との声が上がった。単にすべての関わりを断絶したいのではなく、助けが必要になった際や自ら口を開く準備ができた時にすぐ手が届く範囲に大人がいてほしいという、強がりと不安が入り混じった微妙な距離感が浮き彫りとなった。
衆議院議員で子どもを支援するNPO法人などでも活動した大空幸星氏は、「『放っておいてください』というのが基本的なスタンスとしてありつつも、心の中では『放っておかないでほしい』と感じているメンタルの時もあるのではないか。トー横の中にいる若者たちの間にもグラデーションがある」と述べ、若者たちの揺れ動く心情を捉える必要性を指摘した。
■「言葉が届かない」大人と若者に共通する無力感

若者たちが「放っておいてほしい」と願う一方で、大人が介入を試みる背景には、犯罪や重大なトラブルに巻き込まれてほしくないという強い懸念がある。しかし、その懸念やアドバイスが当事者に届かないもどかしさは、大人側だけでなく若者同士の関係においても生じている。
みぃさんは、かつてトー横で知り合った大切な友人が違法行為に走りそうになった際、警察に捕まってほしくない一心で「そういうことはもうやめたほうがいい」と必死に引き止めた体験を振り返った。しかし、「自分の言葉が相手に届いていると思っていたが、全然届いていなかった。その友だちは最終的に捕まってしまった」と無力感を吐露した。
このエピソードに対し、EXIT・兼近大樹は「それこそが、子どもたちに関わっている大人たちの気持ちと同じだ」と応じた。
「本当に大切だからこそ伝えた言葉であっても、相手に届かなかったという経験を、支援者の大人たちも何度も繰り返している。お互いに思っているもどかしさは全く一緒だ。大切な場所を守るために子どもたち同士で止め合えるのが理想だが、言葉が届かないもどかしさの中で双方とも葛藤している」。
メディアや社会一般において「トー横キッズ」と呼称される若者たちだが、そのバックグラウンドや訪れる理由は多岐にわたり、一概に悲惨な境遇や問題行動のみで括ることはできない。
みぃさんは、自身について「地雷系ファッションが好きで、そこに友だちがいるから歌舞伎町に通っている。まだ17歳だが、将来はイラストレーターになりたいという夢をずっと持っている。界隈の中でアイコンを描いたりする活動をしており、いつか自分の絵を売ったりしたい」と自身の将来に向けた思いを語った。さらに「もし自分の夢が叶ってそちらの環境の方が過ごしやすくなったり、周りの友だちが行かなくなったりしたら、歌舞伎町に行くのもすぐにやめると思う。歌舞伎町に行くのをやめたからといって友だちとの絆がなくなるわけではない」と付け加えていた。 (『ABEMA Prime』より)