8月22日、相模原市中央区の農道で発生した男子高校生死亡事件で、元京都府警科捜研法医科長兼鑑識課機動鑑識隊隊長補佐の矢山和宏氏が現地調査を実施。物理的な状況証拠と映像解析から事件の真相を紐解く。
深夜の住宅街を1台のバイクが走り抜け、そのすぐ後ろに車が追従する映像。この映像が撮られた場所からおよそ数十メートル先で17歳の男子高校生が倒れており、その後死亡が確認された。この夜、この道で一体何が起きたのか。
矢山氏は「何かしらのトラブルのあと、追いかけられ追従されて、あおられて、最終的には暴行を加えられた。という風に見ています」と語る。
同日午前3時ごろ、相模原市中央区の農道で高校2年の清水刹那さん(17)が倒れている状態で見つかった。意識不明のまま搬送され、24日午前0時50分死亡が確認された。そばにはバイクが1台倒れていた。知人によると、清水さんは友人3人とバイク2台で走行していた。その際に複数人が乗った黒い乗用車に追われ、二手に分かれて逃げたという。
警察によると、清水さんの死因は頭部打撲による脳挫傷だった。清水さんのバイクに同乗していた友人は、暴行を加えた人物とは面識がないと証言している。
清水さんが死亡した原因はなんだったのか。まず矢山氏は可能性として、バイクの転倒、または暴行によるダメージを推測する。「舗装された道路を高速で走行しているというのはわかるが、そういったアスファルト、コンクリート面での転倒であれば、そういった外傷も考えられる。農道の草木が生えているような土の上で、どういった状況で脳挫傷にまで至るのか、というところは現場を見てみないとわからない」(矢山氏、以下同)
現場に到着した矢山氏は「ちょうど献花されているので、あの辺がバイクが発見された場所なのかな。公道から入って20メートルくらい」と話す。
現場は公道から折れて入る1本の細い農道。農道の入口で鑑識のプロはある事に気が付いた。「バイクでも入りやすそうではあるが、入るには入ってもある程度のスピードがあると、ここにかなりの段差がある。だから農道にバウンドしてしまって。下は土ですし安定性は悪い」。
段差でバイクはバランスを崩したか。「これは定かではないが、ここに一つタイヤ痕が残っている。ここちょっと、斜めにタイヤが入ってる感じがある。その辺でバランスを崩している可能性はある。途中でハンドルを取られたような感じ」。
入り口から献花の位置までおよそ20メートル、そこまで持ちこたえてバイクは倒れたのか。矢山氏は現場の状況から転倒の可能性を打ち消していく。「その辺はそんなに目立った外傷はないだろうなとは思う。転倒したとしても転倒による頭部外傷は、そんな致命的な外傷にはならない。見るからに岩があるとかもない。何かしらの暴行による外傷のほうが可能性としては高い」。
もう一つ、転倒が原因で死亡したことを打ち消すのは、バイクの同乗者の存在だ。「(転倒して)運転手も死亡した場合、同乗者も重傷を負っていないとおかしい」。
同乗者は警察の調べに応じているが、一緒に転倒し負傷したのか、また暴行を受けたのかどうかは明らかにされていない。では、清水さんの脳挫傷は暴行によるものなのか、矢山氏が注目したのは死因にあった頭部の打撲だ。
「(Q.鈍器のようなものを持っていた可能性は?)凶器は使っていないと思う」と語る矢山氏。遺体を見ていないことを前提に、一般的に鈍器などの凶器を使用して死亡させた場合、頭部が骨折する可能性が高いため打撲では済まないはずだと指摘。つまり、素手で頭部を殴られ死亡した可能性も考えられるという。
この事件を記録していたのは、わずか4秒の防犯カメラ映像だった。矢山氏は付近の防犯カメラを探すと「ここに防犯カメラが公道に向かってある。現場から50メートルぐらいしか離れていない」と、唯一の外向きの防犯カメラを見つける。4秒間の映像は、この防犯カメラが捉えていた。
映像解析のプロが改めて確認してみると、新たなことが判明した。「かなりのスピードが出ている。この距離結構あるが、一瞬で通り抜けているということは、かなりのスピードが出ている」「ブレーキランプが点灯したり消灯したり繰り返されているので、かなりあおっている感じは受ける」。
さらに矢山氏は、防犯カメラに映った道路の距離を計測。するとこんなことがわかった。「走り抜けるバイクの速度は時速およそ65キロ、うしろの車との距離はもっとも近づいたところではわずか4メートルほどで、およそ0.2秒の距離」。
また、バイクと車がカメラの画角から消えた4秒後、映像に映る別の駐車している車に注目。赤い光が反射しているように見え、矢山氏は「この赤い光は追いかけていた車のブレーキランプの可能性がある。ブレーキをかけておよそ4秒後に車を停車したことを示している。およそ65キロだと停車距離が40から50メートルほどになるので、防犯カメラの位置から農道の入り口までの距離と一致する」と分析。
およそ65キロの速度で4秒後にブレーキをかけたとすると、防犯カメラから40メートルから50メートルほどの距離となる計算だ。そこは農道の入り口と重なり、車はそこで停車したと考えることができる。
このことから清水さんのバイクは65キロほどの速度で後続の車にあおられ、逃げるように農道に左折。段差と草、そして土の影響で転倒。一方あおった車は農道の入り口に車を停車。清水さんを追いかけ、頭部を殴打するなどして死亡させたというのが、矢山氏の見立てだ。
「かなり追い詰められたような状態で、そのまま侵入していったと考えられる」と語った矢山氏。一体なぜ死に至る結果となったのか。警察は傷害致死事件として捜査を進めている。
(『ABEMA的ニュースショー』より)