震度7を観測した地震では、周囲への迷惑や避難所での居づらさなどから、避難所へ行かない選択をする障害者もいる。 『ABEMA Prime』では、障害がある人の避難を阻む壁と、求められる対策について当事者や専門家を交えて議論した。
■全盲の大山氏が語る「つらい経験」

全盲のシンガーソングライターである大山桂司氏は、10年前の熊本地震の際、母親とともに近くの教会へ避難した。しかし、慣れない避難所での暮らしは困難を極めた。
大山氏は「避難者の手荷物を踏んで怒られたり、白杖がメガネに当たって壊してトラブルになったりして居づらくなってしまった。正直な気持ちを申し上げると避難所に行きたくない」と、当時のつらい経験を語る。
番組内で「目が見えない人だと分かれば、周囲から『仕方ない』と受け入れられたのでは?」と問われると、大山氏は「その時はならなかった。平常時であれば優しく声をかけてくれるが、みんな大変でイライラしてストレスフルな状況なので、『何やってんのよ!』とか、子どもとぶつかった際に親に『危ないじゃないの!』といった荒い言葉を投げかけられた」と振り返る。
当時は大山氏の母親も同行していたが、地震によって精神的パニックを起こしている他の被災者のケアに当たっており、大山氏を常にサポートできる状況ではなかった。
現在は一人暮らしをしている大山氏は、再び災害が起きた際の避難について「下手に動くとリスクしかないので、基本的には助けが来るまで家でじっとしている方が無難だと思っている」と話す。
また、10年という短いスパンで再び地震を経験したことで、「次なる地震のことも考えておかなければならない。知り合いの中には、地域生活を諦めて施設への入所を考えている人もいる。自立生活や地域生活に対する考え方が変わった」と当事者の切実な状況を明かした。
■“受け入れる側”が直面する壁

当事者を支える福祉の現場でも、災害時の対応には多くの困難が伴う。熊本県宇城市で障害者や高齢者への福祉事業を運営する株式会社きおうの代表取締役・釘崎大樹氏は、震度7の地震が発生した当時の様子を「地震が発生した夕方、施設内には利用者が数名残っており、職員が利用者の上に覆いかぶさって身を守っていたという。また、車での送迎途中で揺れに見舞われ、なかなか連絡がつかなかったり、道路の地割れで帰れなくなったりする状況があった」と語った。
障害がある人の避難における課題について、釘崎氏は「実際に逃げるとしてもどこに逃げればいいのかという問題が大きい。一人ひとり症状や障害の程度が違うので、それらに適応できる避難先を見つけるのは非常に難しい」と指摘する。身寄りのない障害者については「行政とも連絡がつかず、頼る相手がいない方もいた。逃げ場がないと感じた」と話し、受け入れ体制や個別のニーズに対応することの難しさを語った。
■11月発足「防災庁」は何を目指す?

こうした課題に対し、国はどのような支援を行えるのか。防災庁の設置準備に尽力した衆議院議員の西野太亮氏は、11月に発足する防災庁の方針について「『防災立国』の推進に向けた基本方針の中に、被災者に寄り添った支援体制の構築を示している。女性、高齢者、子ども、障害者、外国人など、多様な立場の人に寄り添った支援を進める方針だ」と説明する。
西野氏は「理想は一人ひとりにカスタマイズされた支援だが、まずは生存してもらい、生活を再建することからスタートしなければならない」と説明。こうした方針を支える具体策として、10年前と比べて前進した厚生労働省の「災害時情報共有システム」の導入を挙げた。
「これまでは職員が約2700ある事業所に1件ずつ電話やFAXで状況を確認していたが、今回はシステムを通じて各施設が状況を一斉に登録・把握できるようになった。これにより、緊急度が高い場所を絞り込んで対応できる」と解説。さらに、施設を利用していない障害者に対しても「障害者版のケアマネージャーが一人ひとりにアプローチし、状況を確認して対策を講じている」と明かした。
今後さらに支援体制を改善していくために、釘崎氏は「また同じような地震が起こった時に、今回の課題がスムーズに解決・改善できるよう進めてほしい」と期待を寄せる。
また、大山氏は「我々のために動いてくださっているプロセスそのものに意味がある」と感謝を示した上で、「共助には限界があり、周囲の人も被災して大変な状況では世話ができないこともある。災害時などに『助けてほしい』という要望を、DXを通じて訴えられる仕組みを作っていただきたい。また、被災していない地域の職員などが対応できれば、大変な状況が全国の行政に伝わりやすくなるはずだ」と、デジタル技術(DX)の活用を国に要望した。
この提案を受け、西野氏はDXを活用した支援について今後検討していく考えを示した。 さらに、全国社会福祉協議会がコーディネーターとなり、被災していない地域から福祉の専門人材を派遣する仕組みについて説明。これまでは派遣される人材の人件費を受け入れ側が負担する必要があったが、今回は国が負担することにしたといい、「そしたら一気に進みました」と振り返った。被災地外から福祉人材を派遣する仕組みについて「今回はうまく機能した」と評価した。
(『ABEMA Prime』より)