自衛隊が指揮統制の迅速化や高度化に向け、米国製AIシステムの活用を検討している。防衛省の2027年度予算の概算要求にもAIによる意思決定の高度化が盛り込まれ、複数社を併用する方向で検討が進んでいるという。こうした中、導入候補とされている米国の防衛テック企業、パランティア・テクノロジーズとアンドゥリル・インダストリーズの幹部が『ABEMA Prime』に出演。AI参入によって日本の防衛はどう変わるのか、その狙いや直面する課題について議論が行われた。
■自衛隊が検討する米国製AIシステムと、防衛テック企業の日本参入の狙い

パランティアは、AIによるビッグデータ解析を得意とし、米軍の作戦立案などを支援するシステム「メイブン・スマート・システム(MSS)」を提供している。同社の上級副社長であるクリストフ・マークソン氏は、日本への参入理由について「日本はアメリカの最も重要な同盟国であり、この地域の中の友好国として大変優先度が高い。そして日本のエンジニアは大変素晴らしく、一緒に製品を作ることが価値あることだ」と語った。
同社のシステムを導入することによる変化については、「データやオペレーション情報を、違ったソースから統合する一つのプラットフォームにして、より早く、より良い、透明度の高い決定ができるようになる」と説明。一方で、システムが外国製であることによるデータ管理の懸念に対しては、「プラットフォームやデータを誰がアクセスし、誰が管理するかなど、その国が完全に主権を持っていることが重要だ」と強調した。
一方、アンドゥリルは、AI搭載の安価なドローンなどを開発し、AIシステムと兵器の一体運用を行う企業だ。日本法人代表のパトリック・ホーレン氏は、「防衛省の優先事項に沿って貢献したい。日本の防衛、安全保障の必要事項に沿っていきたい。日本の様々な産業と協力し、経済的な強靱性や戦略的な独立性をサポートしたい」と明かした。
番組内では、100%日本製の部品を用いて4カ月で製作されたドローンのプロトタイプも紹介された。ホーレン氏は「海外のベンダーに頼らなくて済む。海外製か国産かという二者択一ではなく、日本の製造業の強みや豊富な人材と協力し、日本の抑止力をどのように高めていけるかということだ」と指摘。AIの役割についても「事務的・危険な作業をAIに任せ、司令官が合理的な判断ができるようにすることが重要だ。最終的に重大な結果をもたらす決定は、必ず人間がするべきだ」と述べた。
■巨大テック企業が国家を超える懸念と、AI活用に伴う「人間の責任」

米国の防衛テック企業の参入に対し、出演者からは様々な視点から懸念が示された。
文筆家・佐々木俊尚氏は、「アメリカという国を超えた、テック企業の強大化が懸念される。ウクライナ侵攻でスターリンクが重要な通信手段になった際、イーロン・マスク氏の意向で一瞬止めた事例がある。巨大化していくと、企業の意向によって日本の戦争遂行が左右される事態が起きうるのではないか」と疑問を投げかけた。
EXITの兼近大樹氏も、「企業が中立であることはできるのか。力を持ちたい企業が増え、日本の企業に技術を提供したとして、どう暴走するかわからない。企業が力を持って、国同士の争いに介入してくることを考えたら怖い」と不安を口にした。
これに対し、防衛研究所上席研究官の高橋杉雄氏は、「軍事力というのは政治の道具だという原則は変わらない。軍事力を使う上でのOSのような企業が、逆に政治を支配することは起こらないのではないか」と見方を示した。さらに、「イノベーションの速さにより、ある特定の企業が全体を支配することは阻まれる可能性がある。ウクライナでは、国に頼らず企業がスポンサーになって無人機部隊を作り戦っている」と実例を挙げた。
佐々木氏もこれに同調し、「AIが全てを支配するのではなく、ウクライナが国としてプラットフォームを作り、様々なAIや兵器を一括して管理する『AIオーケストレーター』になっている。イメージが変わってきている」と補足した。
最終的な意思決定における人間の役割について、PK Shampoo・ヤマトパンクスは、「AIから『こうするべきだ』というデータが出てくる中で、重大な間違いにつながった時の責任を取るためのスケープゴートとして、政治家が必要とされていくのではないか」と問題提起した。
衆議院議員の大空幸星氏は、「AIが高度化すればするほど、提示される情報を疑うことは難しくなる。自分の感覚値や信念をどれだけ持てるかが重要だ。日本の自衛隊は米国の防衛産業に携わる人たちと比べて感覚が違うため、米国に学生を送り、近い感覚を持つ人を育てる発想で動いている」と明かした。
高橋氏は、専門家の見解を引用し、「AIはデジタル的にコピーができ死なないため、未来に対する責任は一切取れない。人間は死ぬことができるため、ペナルティを受ける特権があるという意味での責任を取っていく」と指摘した。
■データ管理と人材育成の急務、日本が直面する防衛の「ソフト面」の課題
最先端のAIシステムを導入するにあたり、日本側の受け入れ体制についても議論が及んだ。
大空氏は、「防衛省・自衛隊はデータの部分においてまだまだ弱い。どこにデータがあり、集約する権限をどの部署が持つのか、これからの段階だ」と指摘。その上で、「どれだけ先端企業を入れても、制度を変えない限り難しいという懸念があるからこそ、防衛分野でのAI利活用についてハードウェアよりソフトの部分を頑張ろうと進めている。要は、先端技術があっても使える人がいないと意味がない」と、人材配置を含めた体制見直しの必要性を訴えた。
また、防衛省の現状について「圧倒的に日本が防衛分野で取り残されることへの、尋常ではない危機感を持っている。最も保守的な官庁であり、米国企業をシステムに入れていくことへの危機感も間違いなくあるが、それでもやらなければいけないという切迫した状況の中で、どうやって国内産業を強化するかもがいている」と語った。
高橋氏は、防衛省の最近の動きの速さについては、「5年ほど前から『早期装備化』というプロジェクトが進んでおり、まず使ってみた上で使い方をはめ込んでいく取り組みが積み重なってきた。それが実を結び、今はいろんな無人テクノロジーを一気に配備まで進めようとしている」と背景を説明した。 (『ABEMA Prime』より)