能登半島地震や令和8年熊本地震など、近年の大規模災害において繰り返し浮上する問題がある。被災者がペットと同じ空間で避難生活を送れない、あるいはペットの受け入れを断られるという現実だ。環境省のガイドラインではペットとの「同行避難」が推奨されているものの、避難所での受け入れ体制は地域や避難所によって大きく異なり、ペットと暮らす被災者が自宅に戻ったり、車中泊を余儀なくされるケースもある。また、同行避難は「ペットと一緒に安全な場所まで避難する」ことを意味し、避難所で同じ部屋に滞在できる「同伴避難」と呼ばれる。
『ABEMA Prime』では、保護された犬や猫のための獣医学「シェルターメディスン」を専門とする識者と、2年前の能登半島地震で愛猫との避難を拒否された当事者を招き、ペットと被災者の避難問題について考えた。
■避難所で「ペットの同行避難」を拒否されるケースも

小黒江莉果さんは、令和8年熊本地震の発生翌日に現地へ入り、避難所を回ってペット飼育者のニーズ調査を行った。猫のトイレ不足やフードの問題を把握し、支援物資を持つ団体とつなぐ活動を担ったという。
現地で感じた避難所の実情について、「飼い主とペットが同じ部屋で生活できる避難所(同伴避難)が開設されている地域もあれば、されていない地域もあった。一緒に避難所まで行けるものの、入り口でペットは置いておいて、人間だけ中に入っていいという避難所もあった」と述べる。さらに、逃げてしまった猫が帰ってくるのを待つために被災した自宅の庭で生活を続ける飼い主や、ペットと一緒に車中泊をする飼い主の存在も確認したという。
今回の熊本地震では、八代市が全ての避難所において同行避難を認める方針を示していた。しかし小黒さんは、「本来、受け入れるはずの避難所においても、ペットは連れてきてはダメと断られてしまったケースがいくつかあった」と明かす。避難所の運営スタッフが方針を把握していないまま拒否してしまうパターンも起きていたという。
能登半島地震を経験した中谷満美子さんは、当時飼っていた猫をバギーに入れて避難所へ向かったが、「動物はここには入れません」と告げられた。中谷さんはバギーのまま玄関に置かせてほしい、自分はその横で座布団を敷いて寝るので猫のそばを離れないと伝えたが、それも断られたという。
「『猫は外に出してください』と言われたが、それは無理だと思い、結局被災した自宅に戻って生活を送った」と中谷さんは振り返る。その日は雪も降る寒い日だったという。
日本でペットが「物」として扱われることについて、「一緒に暮らしてきて、物と思ったことは一度もない。家族と呼べるのが人間だけというのもどうなのかと、避難所で断られた時に思った」と語る。
■「ペットを含めた避難計画を作ることが、人の命を救う」

こうした問題をどう捉えるか、出演者からさまざまな意見が出た。
ひろゆき氏は、「犬猫を飼っている人にとっては、脳内で家族という認識になっているが、赤の他人から見たら単なる動物。できるだけ配慮はしてあげた方がいいが、人間優先という感じではないか」と述べる一方で、「フランスでは個室、台湾ではテントというように、そもそも避難する人のプライバシーを確保する構造であれば、ペットのためではなくても、結果的にペットと一緒にいられるようになる。避難所の雑魚寝文化をやめることが本質的な解決につながる」と指摘した。
経済学者の柿埜真吾氏は、「日本の避難所は雑魚寝でプライバシーも何もない状況になっている。そもそも、ここがいい加減なのが間違っている」と指摘。 そのうえで、NPOへの運営委託など競争を働かせ、動物を受け入れない避難所やペットを受け入れて保護する避難所など、多様な選択肢を設ける案を示した。
大学入試データベース「未来図」代表の孫辰洋氏は、妻が動物アレルギーであることを明かしつつ、「同じ空間での避難は正直厳しい」と率直に述べた。その上で「ペットを飼っている方が事前にシミュレーションしておくことも重要では」と問いかけた。
元経産省職員の武井亜樹氏は、「避難中にメンタルが追い詰められる中で、動物がいると心が和らぐ方向に向かうのではないか。(一緒に過ごせる)同伴避難はいい構造だと思う」と述べた。
こうした議論に対し、小黒さんは、「災害という観点では、ペットを抱えた人が避難行動を取るか否かがすごく大事になる。人の支援とペットの支援を対立させるのではなく、ペットを含めた避難計画をいかに作るか。そこが人命を救うことにつながる」と指摘した。さらに、2005年にアメリカで発生したハリケーン・カトリーナ後の調査で、避難しなかった人のうち44%が、ペットを残していけないことを理由の一つに挙げたとされる事例を紹介。「ペットを飼っていない方、ペットを嫌いな方にも知っていてほしい」と語った。 また、飼い主自身の備えについても「行政と民間が手を組んでしっかり周知するとともに、飼い主も一つの責任として、平時から避難行動のシミュレーションとトレーニングをしておくことが大事だ」と呼びかけた。 (『ABEMA Prime』より)