トランプ政権によるICC(国際刑事裁判所)の赤根智子所長への制裁指定をめぐり、高市総理の「大変残念」との発言に与野党から“弱腰批判”が相次いだ。総理は「ギリギリまで働きかけてきた」と反論するが、高市外交は本当に弱腰なのか? 『ABEMA Prime』で考えた。
■「大変残念」は絶妙なコメント

自民党の衆院議員で元外務副大臣の中山泰秀氏は、高市総理の「大変残念」との発言を「あの時点でのコメントとしては絶妙で、それしか言いようがなかった」と評価する。「ICCの赤根所長を守るという日本の総理としての思いと、同盟国の代表としてのトランプ大統領の立場への理解を両立させるものだ」と述べ、「弱腰と批判するなら、高市総理の立場でどう表現するのか逆に聞いてみたい」と指摘した。
元外交官でキヤノングローバル戦略研究所特別顧問の宮家邦彦氏も「『対米追従だ』との議論は、国内政治の政局としては理解できる。ただ、別の意味で高市総理の発言は妥当だ」と支持する。
宮家氏は「赤根氏は日本人だが、国際機関の長でもある。機関のトップとして組織を守らなければならない事情は分かるが、彼女にももう少しいろいろな動き方ができたのではないか」と指摘した。さらに、国際法には国内法の警察のような強制力を持つ法執行機関がなく、「非常に脆弱なシステム」だと説明。ICCには締約国と非締約国があり、国際機関のトップには各国からの政治的圧力もかかるとして、「そういうことも含めたバランス感覚が所長には求められる」と語った。
その上で、赤根氏について「一生懸命頑張ったと思うし、全面的に支援すべきだと思っている」とした上で、高市総理の「大変残念」との発言については「残念だという表現が正しいと思った」と評価した。
■「赤根氏保護かトランプに屈するか」の二軸対立はおかしい

ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「赤根氏を守るか、トランプ氏に屈するかの二軸対立になっているのがおかしい」と指摘する。「ヨーロッパにはNATOの枠組みがあり、仮にアメリカが一時的にいなくなっても互いにみんなで守る心構えがある。しかし、日本は周囲をロシア、中国、北朝鮮に囲まれて孤立無援に近く、アメリカに頼るしかない。ヨーロッパと同じようにアメリカを批判するわけにはいかない」と安全保障環境の違いを説明した。
政治学者の岩田温氏は「赤根氏は法学的思考で正義を貫こうとしており、法の論理としては正しいが、政治の論理では組織を潰してしまう可能性もある。高市総理は『ICCを潰せ』とは一切言っておらず、双方の正しさを求める立場だ」とした上で、「今回の弱腰批判は、支持率の高い高市総理を攻撃するために野党などが政局として利用しているだけだ」との見方を示した。
■“対等”へと変化する日米関係

宮家氏は日米関係について「一昔前の一方的な依存関係から、むしろ対等に近くなっている」と 主張する。「30年前、40年前とはまるで違う。中国の台頭に対抗するため、アメリカにとっても在日米軍基地は不可欠であり、一方的な依存関係ではない。うまく付き合っていくことが中長期的に日本の国益になる」と語った。
中山氏も「安倍総理から高市総理に引き継がれる対トランプ人脈や戦略は、外交的な資産と見るべきだ」と同調した。さらに、この議論の背景について「認知戦領域での戦いでもある」と言及する。「一国の総理の外交を対米追従と批判することは、誰のメリットになるのか。それは中国、ロシア、北朝鮮だ」と懸念を示した。
日米関係をどう維持し、覇権主義国家に対峙していくか。中山氏は「日本の国益を図り、国民の生命を守ること」こそが外交であると強調した。
(『ABEMA Prime』より)