社会

ABEMA NEWS

2026年9月12日 11:15

生活保護世帯から大学進学で直面する壁…「世帯分離」貧困の連鎖を断ち切る制度とは?ヤングケアラーの東大合格者に聞く

生活保護世帯から大学進学で直面する壁…「世帯分離」貧困の連鎖を断ち切る制度とは?ヤングケアラーの東大合格者に聞く
広告
1

 生活保護世帯で育ちながら東京大学に合格し、現在は法科大学院で学ぶ清野孝弥さん。その経験をまとめた著書『ヤングケアラーの僕が東大に合格するまで』を執筆した。両親が働けなくなり生活保護を受給していた家庭で、金銭的困窮とヤングケアラーとしての負担、そして制度の壁という三重の困難を乗り越えての進学だった。しかし清野さんのような事例は珍しく、生活保護世帯出身者の大学(4年制)進学率は一般世帯と比較して大幅に低い水準にとどまっている。

【映像】東大法学部をトップで卒業した清野さん

 『ABEMA Prime』では、清野さんと、超党派「子どもの貧困対策推進議連 教育格差について考えるワーキングチーム」座長を務める自民党衆議院議員・細野豪志氏を迎え、生活保護世帯の子どもの大学進学を阻む制度の壁と、経済的事情によって進路の選択肢が狭まらないために何が必要かを議論した。

■大学に進むには本人分が生活保護の対象外に…

生活保護世帯から大学は通えず

 清野さんは、大学受験にあたって直面した困難を大きく3つ挙げる。「1.お金がないこと、2.ヤングケアラーだったので家に帰っても勉強する時間がないこと、3.制度上の理由で大学進学しにくいこと」だ。

 まず金銭面については、「塾・予備校に行きたかった。成績が良ければ授業料は無料と言われても、入学金などがかかると言われ、出せなかった」と振り返る。結果として参考書を入手することも一苦労で、インターネットで無料の教材を探し、それだけで勉強するしかなかったという。

 ヤングケアラーとしての負担も深刻だった。「自分の場合、一番ハードルが高かったのは精神介護。家に帰ってから深夜の4時・5時、翌朝に及ぶまで、父親の話をずっと聞いているという状況が日常茶飯事だった。アルコールなどに走ってしまうこともあったので、それを何とか食い止めていた」と語る。学校の行き帰りの隙間時間を徹底的に活用し、「とにかく効率的にやるしか勝ち筋がない」と自分に言い聞かせて勉強を続けた。

 そして制度の壁として立ちふさがったのが「世帯分離」の問題だ。生活保護世帯の子どもが大学に進学する場合、本人分は保護の対象外となる「世帯分離」の扱いを受ける。しかし、「4月1日からいきなり生活費も医療費も交通費も全て自分で賄ってください、ということになる。それと同時に、子どもが大学に行ったら両親が得ている(保護費の)金額が減る。ただでさえ大変なのに、さらに減らされたら生きていけないから『大学に行くな』と親が反対するパターンもある」と説明する。清野さん自身は世帯分離という形を取って進学し、東大合格が決まった瞬間から7つのアルバイトで並行して働き、生活費をやりくりしたという。

 細野議員は、この問題の歴史的背景を説明する。「今から半世紀以上前、1970年までは生活保護世帯は高校に行くことが贅沢とされていた。高校進学率が8割になったので、生活保護家庭でも行けるようにした。大学・専門学校の進学率も8割に迫ってきているので、日本も変えるべきだと提案してきたが、まだ変えられていない」と述べる。

 当時の議論を経て、生活保護世帯の子どもが進学・就職する際に受け取れる 「進学・就職準備給付金」(自宅通学の場合10万円、下宿の場合30万円)が設けられたことで、状況はわずかに改善した。清野さんも「準備金の拡充にはかなり助けられた」と認める。しかし細野議員は「依然として壁がある」とし、世帯分離そのものの撤廃を目指す理由をこう語る。「貧困の連鎖をなくして、努力したかどうか・能力のあるなしで結果に差が出るのは仕方がないけれど、機会の平等が損なわれているというのは社会悪だ。日本の活力を削いでいる」。

■生活保護世帯でも大学に進めるための法整備

清野孝弥さん

 2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏は、世帯分離の問題について一定の理解を示しつつも、支援の範囲に線引きが必要だという立場を示す。「生活保護の人が大学に行くのに何らかの支援をするべきかというと、Fラン大学に関しては支援するべきではなく、国公立大学に受かった場合であれば世帯分離をしなくても良いとか、特例制度にするべき。私立については援助の必要はない」と述べる。

 さらに、「基本的には大学進学のための世帯分離は認めない。ただし特例として国公立に行った場合でしっかり単位を取っているのであれば認める、という形」と具体的な制度設計案を示した。

 メルカリ AI strategyのハヤカワ五味氏は、より根本的な問題として家族への扶養義務が選択肢を狭めていると指摘する。「きょうだいが借金したり生活が立ち行かないときに、家族の扶養義務が(本人の)いろいろな選択肢を狭めている。特に今は貧困や格差が拡大してきていて、本人が決定できないことに引っ張られすぎて、そこから変えられないという状況は変わっていった方がいい」と語る。

 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、制度改正と同時に奨学金制度の拡充を求める。「私がやってほしいのは奨学金だ。国立大学という学費が安いところに行くために、国立大学に払う以上の塾代を払っている人が多いのもおかしな話。ハーバード大学などでは年間1000万円の学費がかかるが、充実した返済不要の奨学金制度があり、貧困世帯の学生を一定割合入れることを決めている。それは寄付金で賄われていて、アメリカでは学校への寄付が全額控除される。日本では50%しか控除されないので、寄付税制をもっと整備してほしい」と提言する。

 細野議員はこう強調した。「自主的に高卒で働くという選択は尊重されるべきだ。ただ、専門学校に行きたい、様々な資格を身につけたいという若者がたくさんいる中で、そのチャンスすらない。貧困の連鎖をなくし、若い時に努力や能力で結果に差が出るのは仕方がないとしても、機会の平等は守られなければならない。そこは根本的に世帯分離という制度そのものを変えるべきだ」。
(『ABEMA Prime』より)

広告