アメリカ・ニューヨーク市のマムダニ市長が、公立小中学校の約60万人の生徒を対象に、新学期から1年間、生成AIを使用するすべてのソフトの学校内使用を禁止すると発表した。これはAIの影響を検証するための一時的な措置だという。一方、日本では次期学習指導要領の改訂に向けた素案にAIの活用が明記されており、両国の対応は対照的だ。
【映像】プロが語る“AI×親子学習”の実践的テクニック(解説の様子)
OECD(経済協力開発機構)が15歳を対象に実施した学力調査では、読解力・数学的・科学の3分野すべてで加盟国全体の成績が低下しており、特に読解力の落ち込みが著しい。OECDはその要因として、SNSや生成AIなどデジタル機器の過度な利用が注意力を分散させていることを挙げている。なお、学校の勉強でAIを使う頻度については、日本がOECD加盟38カ国の中で最少だった。
日々目まぐるしく進化するAIは、子どもの学習にどのような影響を及ぼすのか。『ABEMA Prime』では、小学生へのAI活用をめぐって考えた。
■「答えを聞かない」??親子AI活用講師が語る使い方の原則

『親子ではじめるAI学習法』の著者であり、AI活用講座を主催している森本真理子さんは、小学6年と3年の子どもと日常的にAIを活用している。その上で最も重視していることとして、「(AIに)答えを聞かない。これを一番大事にしている」と語る。具体的には、子どもが自分の考えを先に述べてからAIに問いかけるよう促し、宿題では答えを教えさせるのではなく、どこでつまずいているかをAIに段階的に引き出してもらう形にしているという。「大人も隣で、この子はここに詰まってたんだということがわかるので、優しい気持ちで一緒に勉強できるようになった」と効果を説明する。
読書感想文では、AIに作文を書かせるのではなく、子どもの気持ちを引き出す「質問役」を担わせる使い方をしているという。「子どもは語彙力がなかったり、感じたものがあっても言い出せなかったりする。そこをAIにいろんな角度から質問してもらうと、言葉でうまく言えなかった子が、自分の気持ちを少しずつ言えるようになってくる。親は待てなくなってしまうが、AIは(子どもの答えを)焦らせない」と述べる。
また、AIとのやり取りをノートに書き写したりマインドマップにまとめたりするアナログ作業も欠かさないという。「インプットしたものを咀嚼し直して出し直す。このひと手間がすごく大事。AIとアナログの両輪」と話す。
忙しくて子どもに向き合う時間が取れない親へのアドバイスも持っている。「子どもが疑問を持って聞いてきてくれた時に『後でね』と言って断ってしまうと、その『後で』は一生来ない。洗い物しながらでもスマホをピッと起動すれば、音声でAIと会話できる。忙しい親こそ、AIをパートナーにして子どもの好奇心を広げる手伝いをしてもらえたら」と述べる。また、親自身もAIを仕事に活用して、作業時間を減らすことを勧めた。
■AIの専門家が「子どもにAIを使わせていない」理由

一方、シナモンAI代表取締役社長・平野未来氏は、9歳と8歳の子どもを持ちながら、「(子どもに)AIを一切使わせていない」と明かした。その理由について平野氏は、「(AIに)思考力が奪われているなと自分でも感じる。私は大人なので、思考を一部外注するのはいいと思っているが、子どもはまだ思考力が全然育っていない。育っていない中でAIを使ってしまうのは良くない。自分の若かった頃を考えると、高校生でもまだ早いなと思うぐらい、大学生でもまだ全然思考力って育ってなかった」と語る。
加えて、タブレット端末そのものを家に置かず、車の中にしか置いていないと明かす。「タブレットがあるといろいろな通知が来て集中力が散漫になる。生成AIのアプリと一緒にゲームなどもたくさん入っているので、そっちに流れていきやすくなる」と理由を説明。子どもの前ではスマホもタブレットも極力使わず、AIの画面も見せないようにしているという。
平野氏は「思考力がある程度育ってから、また自分の意思がはっきりしてから」を使い始める目安と考えているといい、「社会人になってもちょっと早いんじゃないかと思うぐらい」と言葉を強めた。森本さんの使い方を「すごく良い」と認めながらも、「AI専用のデバイスがあれば良いが、現状ではタブレットを使うと他のゲームや動画で遊んでしまうのが問題」と繰り返した。
■「脳が眠る」??MITの研究が示したAI使用時の脳活動

お茶の水女子大学名誉教授の内田伸子氏は、AI頼みの教育が「子どもの脳を眠らせる」と警鐘を鳴らす。根拠として、MITの大学院生54名を対象にした研究を紹介した。生成AIを使ってエッセイを書かせたグループ、検索エンジンを使ったグループ、何も使わず手書きで書いたグループの3つに分けて比較したところ、最も多様で豊かな内容のエッセイを書いたのは手書きのグループだったという。その後のテストで自分が書いた内容の記憶得点が最も高かったのも、手書きのグループだった。
内田氏は「生成AIを使って書いているときは、頭を使っていないリラックスしたときに出るアルファ波が脳全体に出ていた。手書きのグループは、脳の中でも文を構成する“ブローカ野”や、自分の書いた文を振り返る“ウェルニッケ野”、それから“前頭連合野”と呼ばれる部分がベータ波で活性化し、“脳フル回転”状態だった」と説明する。そのうえで「子どもが小さいうちにAI頼みの教育をすると、脳への打撃は最大になるだろうというのがこの研究の結論」と述べた。
内田氏はまた、自身の子育て経験として、5歳10ヶ月の娘が柚子湯の中で「お花はどうして匂いを嗅げるの?」と聞いてきた際、すぐに答えを教えずに「どうしてなんだろうね」と返し、子ども自身に考えさせたエピソードを紹介した。「正解かどうかは別として、考えたことを褒め、認める。一緒に考える。考えるプロセスを大事にすることが重要」と語る。
元経産省官僚の宇佐美典也氏は、AIへ向ける質問が雑でも高性能ゆえに答えを出してしまう点を問題視しつつ、「TikTokやYouTubeなどのショート動画を見るよりは、AIと会話している方がまだいい」と主張。小説家の室井佑月氏は、AIを使うようになって「夕飯のおかずも(AIに)聞くようになってすごくバカになった」と自身の体験を打ち明け、子どもへの使用には反対の立場を示した。MCの松陰寺太勇(ぺこぱ)は、AIとディベートの準備をしていても「終わった後に何も残っていない」と実感を語る。
子どもの教育へのAI活用についてさまざまな懸念が示されるなか、内田氏は最後に「頭は使えば使うほど良くなる。努力すればするほど思考力もついてくる。賢く使う、選択肢を与える、アイデアを可視化して比べてみる、相対的にものを考える。そういう力を小学生から大学生まで身につけていけるといい」と提言。森本氏も「大人が分からないことを一緒に調べ、どうやって話を広げていくかを見せてあげることで、子どもの質問力もついてくるのではないか」と語り、子どもと共に問い続ける姿勢の大切さを強調した。
(『ABEMA Prime』より)