沖縄県知事選挙が投開票され、保守系の与野党6党が推薦した42歳の新人・古謝玄太氏が、過去最多となる42万票余りを獲得して初当選を果たした。現職の玉城デニー氏に14万票以上の大差をつける結果となり、12年ぶりに保守系の知事が誕生した。
今回の選挙では、有権者の意識変化が注目された。出口調査では期待する政策として基地問題よりも「景気・物価高対策」が大きく上回り、10代から50代の大半が古謝氏を支持した一方で、玉城氏は60代以上からの支持が大半を占めるなど、世代間での選択の乖離も浮き彫りとなった。『ABEMA Prime』では、1972年の本土復帰後に生まれた“復帰後世代”として初となる古謝新知事の誕生と、これからの沖縄について議論した。
■古謝氏は「復帰後生まれ初の主要候補」

古謝氏圧勝の要因について、古謝氏を支援した沖縄県名護市議会議員の嘉陽宗一郎氏は、「基地問題は重要だが、それ以外の暮らしや経済をどう良くするのかに関心が広がった」と分析。物価高など生活に直結する問題がある中、県民所得を上げたいという古謝氏の訴えが広がり、「対立の構図に閉塞感がある中で、若い知事に託したいという期待感があったのではないか」と語った。
一方、玉城氏に投票した一橋大学大学院特任講師の元山仁士郎氏は、「県民が基地問題を諦めたわけではない」とした上で、これまでは「基地7:経済3」だった比率を「6対4や5対5など、生活を重視する選択だったのではないか」と推測した。さらに世代間の差について、「復帰前の世代は、激しい運動を経て日本国憲法の下で豊かになる夢を見ていた。しかし、今の若い世代は米軍統治の過酷さを直接感じなくなっており、温度差が生まれている」との見方を示した。
フリーライターの島袋龍太氏は、古謝氏が「復帰後生まれ初の主要候補」であった点が大きいと指摘。「これまでは復帰前や戦前生まれの候補が多く、若い世代には自分と同じ世代を選ぶ選択肢すらなかった」と述べ、同世代の候補が登場したこと自体が若者支持の大きなきっかけになったと分析した。
さらに議論が深まる中、元衆院議員の山尾志桜里氏は、玉城氏の敗戦の弁に触れ「『本土と対抗する非力な私たち』という自己認識そのものを変えたいという思いが、復帰後世代にあったのではないか」と指摘。これに対し嘉陽氏も「国や政府対沖縄という対立の構図に、若い世代の共感は集まらなかった。主張すべきは主張しつつ、協力できるところは協力する感覚に近い」と頷いた。
また島袋氏は、90年代以降に沖縄出身者が全国で活躍し、県外からも好意的に受け止められる環境で育った世代の感覚にも言及。学校で歴史を学んでも「知識としてはあっても実感として伴わない」と述べ、全国のテレビを見て育ったことによる「上の世代との必然的なギャップ(溝)」があると紐解いた。
これに対し元山氏は、沖縄出身者が県外で活躍することや、自ら地域を盛り上げようとする気概は認めつつも、「基地問題を巡っては、もう圧倒的に国と県との権限が違いすぎたりだとか、県知事が本当に反対したり、あるいは自分自身も取り組んだ県民投票とかをやっても止められないっていう風な状況」と指摘。その上で、経済重視へとシフトする中で基地問題をめぐり政府へ要求していくことが難しくなるのではないかと懸念を示した。
■「3000億円」の振興予算と沖縄経済の自立

選挙直後、高市総理は沖縄振興予算として3000億円超を計上する方針を示した。この「3000億円」という数字をめぐり、知事と政府の距離感が予算額に影響を与えるのかという点についても議論が交わされた。
山尾氏が「政権側の知事だとお金が来て、革新系知事だと絞られるという実態は今まであったのか」と疑問を投げかけると、嘉陽氏は「革新の太田昌秀元知事や翁長雄志元知事の時代も高い予算水準にあったため、一概にそうとは言えない」と説明。「額面が注目されがちだが、本来は何をするのかという中身が大事だ」と強調し、独自の経済成長に向けた具体策の推進を求めた。
一方、元山氏は「翁長県政以降の12年間、予算が右肩下がりに減らされてきた」と指摘し、「真綿で首を絞められるように減らされてきたのではないか」と自身の認識を示した。今回の3000億円の提示も「補正予算をあらかじめ組み込んだだけという見方もある」と言及した。その上で、「振興予算は基地の迷惑料ではなく、歴史的・地理的な特殊事情によって配分されているものだ」と訴え、予算が今後どのように県民の生活向上へ還元されていくのか注視していく必要があると語った。
また島袋氏は、「予算の多寡にかかわらず、自発的な産業育成や高付加価値化がなければ本当の経済発展はない」と指摘した。
■復帰後世代・古謝新知事で沖縄どう変わる?

復帰後世代のリーダーが誕生したことで、今後の沖縄行政や経済はどう変わるのか。
嘉陽氏は具体的な成長分野として、「観光産業の高付加価値化に加え、ブルーエコノミー(海洋ビジネス市場)や製薬などの分野に可能性がある」と指摘。さらに、街の中心部にある基地について「賛否の対立ではなく、返還後の跡地利用も含めた沖縄の可能性を最大化させるプロジェクトを、経済界とともに進めていくことを期待している」と語った。
この経済発展のポテンシャルについて、自民党の小林史明衆院議員も「OIST(沖縄科学技術大学院大学)などから優秀なスタートアップが次々と生まれている」と応じた。さらに小林氏は、知事というリーダーが明確な方針を立てることの「シグナリング効果」を強調。「特定の産業で勝負すると旗を立てることで投資が進み、優秀な人材も向かっていく」と述べ、首長のトップ営業やリーダーシップが地域経済を大きく変える原動力になると指摘した。
(『ABEMA Prime』より)