アメリカの「Waymo(ウェイモ)」と日本のタクシー配車アプリ「GO」、日本交通の3社が来年中に都内で100台規模の完全無人タクシー運行を目指すと発表し、テスラも話題の「Cybercab(サイバーキャブ)」を国内初公開した。アメリカや中国で実用化が進む中、自動運転の分野で出遅れてきた日本で普及に向けた壁はどこにあるのか『ABEMA Prime』で議論した。
【映像】走行するサイバーキャブと「車内」の空間(実際の様子)
■完全自動運転「サイバーキャブ」が話題…何がすごい?

日本で初公開されたテスラのサイバーキャブは、運転席という概念自体が存在せず、ハンドルもペダルもミラーもない自動運転タクシー向け車両だ。テスラがこのタイミングで持ち込んだ背景について、ネットメディア「自動運転ラボ」を主宰する下山哲平氏は、自動運転技術の先進性を提示し、今後の法改正や政策的な後押しを得るためのアピールという側面が強いとの見方を示した。
一方、ウェイモ陣営の計画について下山氏は、アメリカで直近2年ほど一般向け商用サービスが急速に進んだことを受け、日本も2〜3年遅れて慌てて勢いを増してきたと現状を説明。これに対し作家の古市憲寿氏が「100台というのは少ない。また、限られたエリアをAIに学習させている段階で、どこでも行ける時代には程遠いのではないか」と疑問を投げかけると、下山氏はラスベガスで空港への乗り入れが可能になるなど「走行対象エリアは都心部へ急速に拡大している」と実用化のスピード感を強調した。
また、コラムニストの小原ブラス氏は「高齢ドライバーのタクシーにはできる限り乗りたくないし、無人化でコストが下がるなら絶対に利用したい」と導入歓迎の姿勢を示した。
■本当に日本で進む?普及を阻んできた「壁」と「リスクへの捉え方」

世界で実用化が進む中、なぜ日本は遅れてきたのか。下山氏は新技術導入における「手段の目的化」を指摘。アメリカなどが普及後の未来から逆算して資金を投じるのに対し、日本は実証実験そのものが目的になりがちだと批判した。例として、道路に設置したセンサーなどを頼りに、決められたルートを走る自動運転バスの実験に触れ、「日本中にレールを敷き続けることなど不可能なのに、他自治体より早く実験実績を作りたいがために予算が使われていた」と振り返った。
さらに最大の壁として「リスクへの捉え方の違い」を挙げた。テスラの自動運転モードは、ドライバー責任の下でシステムが運転支援を行う「レベル2」に当たる。下山氏は、このモードの作動中に死亡事故が起きたケースがある一方、テスラは販売を継続していると説明。 日本であれば事故を受けて「まずすぐ止めよう、イコール販売停止」となりかねないとし、この差が約7年の社会実装の遅れを生んでいると解説した。
制度面や過去のトラブルも開発の足を引っ張った。自民党の小林史明衆院議員は、東京五輪の選手村で自動運転車が接触事故を起こした際、警察が介入したことが自動車メーカーにとってトラウマとなり、技術のリリースを遅らせる原因になったと説明。小林氏は「警察ではなく、航空機や鉄道のように国土交通省の『運輸安全委員会』が事故原因を究明し、データを蓄積していく仕組みづくりが必要だ」と提言した。
■日本は「後からまくっていく」…事故率を%で示す重要性

出遅れる日本だが、下山氏は「日本のメーカーの技術レベルが遅れているとは全く思わない」と見解を示した。将来的に技術がコモディティ化(汎用品化 )した際、最後に勝つのは信頼性と安全性の実績があるメーカーであり、「トヨタをはじめ満を持して出されたクオリティは日本が非常に高い。最初こそ遅れるが、後からまくっていく世界線を期待できる」と語った。実際、トヨタは2028年から、日産は2027年から高度な運転支援機能(レベル2++)を市販車へ実装する計画がある。
国民の不安解消に向け、「有人運転よりも事故率が低いというデータが必要だ」との指摘が出ると、下山氏は「毎日走っている中で有人タクシーと自動運転の事故発生率(%)を定量数値で客観的に比較・開示することが、怖さを失くす教育になる」と強調した。
小林氏は「まずは地方で免許返納を考える高齢者にレベル2++の車両を使ってもらい、移動手段を確保しながらデータを蓄積し、段階的に完全無人タクシー(レベル4)へと移行する設計を描いている」と語り、高齢化社会における移動の足としての重要性を訴えた。
(『ABEMA Prime』より)