特殊詐欺拠点だと知らされずに海外へ連れ去られ、行方不明になる日本人が複数いることが明らかになってきています。9カ月前に旅行に行くと言い残して音信不通となった大学生の息子を探し続ける母親を取材しました。
息子「2泊3日の韓国旅行に」9カ月帰ってこず
世界遺産・アンコールワット。カンボジア北西部の都市・シェムリアップに位置し、世界中から多くの観光客が訪れます。
首都・プノンペンには黄金に輝く王宮の建物。メコン川が流れるすぐ近くには、高層ビルがそびえ建ちます。街の発展が著しいカンボジアですが、その裏では深刻な問題がありました。
カンボジア国内で相次いで摘発されている特殊詐欺グループの拠点。
警視庁は15日、20代の女性をカンボジアへ送るため誘拐した疑いで、男を再逮捕したと発表しました。男の目的は、特殊詐欺グループで働かせることでした。
まだ存在しているとみられる詐欺グループの拠点。働かされ、帰ることができない日本人もいるとみられています。
「とにかく無事でいてほしい。同じような思いを他の家族にはしてほしくない」
福岡県内で暮らす、50代の女性。大学生の息子は「友人と2泊3日の韓国旅行に行く」と言い残し、9カ月帰ってきていません。
母親から送ったメッセージには返信がなく、音信不通になっていました。不安な日々を過ごす中、警察にも行方不明者届を出し、返事を待ち続けた母親。
すると先月、突然息子からビデオ通話があったといいます。
「カンボジアの会社で働いている」と息子は説明しましたが、詳しい居場所を聞くと、話をそらされ、行方不明者届の取り下げを迫ってきたといいます。
生きていることは確認できましたが、再び連絡が取れなくなってしまいました。息子の身に何が起きているのでしょうか。
「手足を拘束する機械」も
番組は、カンボジアの特殊詐欺の拠点から脱出し、数カ月前に日本に帰国できたという男性に話を聞きました。
「こんな感じです。こんな感じの川があります。カンボジアも、アンコールワットのシェムリアップとかにもね、でかい川があったり、貯水池があったり、湖があるんですよ。でもカンボジアと比べると日本は涼しいですね」
海外で働くのが夢だったという田中さん。カンボジアの首都・プノンペンの飲食店で働き、充実した日々を送っていました。
そんな中で突然、特殊詐欺グループに連れ去られたといいます。
出勤すると、マフィアとして知られた人物が待ち構えていて、車に乗せられたといいます。
連れて行かれたのは、プノンペンのメコン川沿いに建つマンション。ここで、監視されながら特殊詐欺への加担を強要される生活が始まりました。
田中さんが指示された作業は、詐欺電話をかける際に使うマニュアルの修正でした。
「それで、いきなり出て『こんにちは』っていうのはおかしい、じゃあここは『もしもし』に直したり。翻訳した書類のようで、日本語として成立してない部分があるんです」
完成した原稿を、暗記できるまで何度も練習させられていたと話す田中さん。
ただ、マンションでの生活は食事に困ることもなく、むしろマフィアたちが親しげに話しかけてきたといいます。
それには狙いがありました。
「やっぱりカンボジア国内に連れてくることが、すごく大変みたい。なので、私が連れてこられた拠点では、日本人は『ダイヤより貴重』だと言っていました」
一方で、組織の暴力性を垣間見ることも。
田中さんは、組織に協力的なふりをしながら2週間を過ごし、許された外出の隙に逃げ出しました。
母親現地に「息子救出を」
6月、警察庁の幹部はカンボジア国家警察を訪問。特殊詐欺グループへの対応を協議しました。
大濱健志部長
「数十人単位での行方不明の方がいらっしゃり、カンボジアにいるのではないかと把握しています」
カンボジアでは今月23日、オンライン詐欺についての国際会議が開かれ、日本やアメリカ、東南アジア各国が参加しました。
警察庁によると、日本では去年1年間で8万486人が行方不明者届を出されています。そのうち、特殊詐欺グループの関わる不明者が何人なのか、具体的には明らかになっていません。
9カ月帰ってこない息子から、先月になって突然「元気にやっている」という連絡を受けた母親は、家出に見せかけるために、偽装工作をされていると考えています。
「詐欺組織側は家出人として処理してもらうために、『自分の意思で行っている』とか『元気にやっている』という連絡を取らせることがあるんじゃないか」
SNSで行方不明者を捜す家族の会を運営している母親の元には、他の家族からの訴えも届くといいます。
母親は、特殊詐欺組織が関わることが疑われるケースを日本の当局がしっかりと把握することが、詐欺拠点の摘発や行方不明者の救出につながると考えています。
そして、待つだけではいられないと、母親は行動を起こしました。
現地当局に、息子の救出を直接お願いすることにした母親。膠着(こうちゃく)状態を打開する糸口になればと考えています。
(2026年9月28日放送分より)












