東京都心では、10月2日までに観測史上初めて37日連続の降雨が記録された。統計開始から140年あまりにして初の記録だ。今年2月にはイギリスでも40日連続の雨が降るなど、日本だけでなく他国でも同様のことが起きている。
国内外に目を向ければ、千葉を襲った豪雨・台風、北陸や伊豆諸島・鹿児島での豪雨被害、西ヨーロッパでの観測史上最も暑い夏、ネパールでの土石流による1400人超の死者と5300人超の行方不明者など、極端な気象現象が相次いでいる。一方でアメリカでは、通常であれば夏に複数発生するはずのハリケーンが1966年以降最長の空白期間を記録した。こうした現象の背景に何があり、私たちは何ができるのか。『ABEMA Prime』では、気候変動と豪雨のメカニズム、そして今後の対策について考えた。
■1時間100ミリ以上の豪雨の発生頻度、40〜50年前の2倍に

豪雨のメカニズムや予測、さらに豪雨そのものを弱める研究に取り組む京都大学防災研究所の山口弘誠氏は、まず東京の連続降雨について「秋雨前線が長く停滞したことや、台風が連続してやってきたことなど、いくつかの偶然の要素が重なって起こった結果」と受け止めつつ、「地球温暖化の影響がどれぐらいあったかは研究して調べていかなければいけない」と述べる。
ただし、個々の豪雨に着目すると話は異なる。山口氏は「千葉の豪雨については地球温暖化によるリスクが2.3倍ほど高まっていたという試算が出ており、一つ一つの豪雨が強まっているのは地球温暖化の影響だと科学的に言える」と説明する。気象庁のデータによれば、1時間100ミリ以上の年間発生回数は40〜50年前と比べて約2倍に増えており、「気候変動モデルのシミュレーションによって、これからも(豪雨が)増えるというのは、科学者の間では統一の見解」だと語る。
なぜ雨の降り方が激しくなるのか。山口氏はコップを使った例えで説明する。「コップを大気と見立てると、気温が上昇することで大気が含み得る水蒸気量が増える。いわばコップが大きくなる。大きなコップがいっぱいになって溢れる時には一気に溢れ出すため、大雨になる」。地球温暖化によって産業革命の前(1850〜1900年)より気温が約1.5度上昇しており、2050年には2度まで上昇することが見込まれているという。
台風については「気候変動によって地球の温度が上がっていくと、日本でも台風の数は減るという結果が出ているが、一方で強い台風が増えるということも出ている。数は減るけれども強力化する点は非常に気をつける必要がある」と警告する。
■人為的な影響で起きる温暖化、どうペースダウンさせる?

こうした変化が人為的なものかという問いに対し、山口氏は「地球温暖化の影響によるものが大きく、CO2をはじめとする人為的な排出量の増加によって地球から熱が出ていきにくくなり、どんどん蓄えられている。影響はかなり大きい」と述べる。
record1.5代表で慶応大学3年の山本大貴氏は、気候変動に危機感を抱き、大手電力事業者10社に対して1.5度目標に沿った排出削減対策を求める若者気候訴訟を2024年に名古屋地裁で提訴した原告の一人だ。「ネパールの人たちは、CO2排出量が(世界排出量の)0.0何%という水準なのに甚大な被害を受けている。より責任を負う人たちが存在していて、化石燃料を今のまま使い続けようとするシステムや企業の方針が遅れているということを伝えていかなければいけない」と話す。
経済学者・柿埜真吾氏は「気候変動に人為的な影響があるのは間違いなく、対策を取ることは非常に重要だ。ただ、何でもかんでも地球温暖化のせいと結びつけるのは慎重であるべきで、科学的なコンセンサスに基づいてやらなければいけない」と指摘する。また「電力会社が我々の意思に関係なくCO2を排出しているわけではなく、結局我々が電気を使っている。火力や原子力を使うなとすればコストが上昇する。そのトレードオフがあることは忘れてはいけない」と指摘する。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「温暖化を抑えることは大事だが、1.5度上がるのはしょうがないという前提でもある。上がった時にどんな社会設計が必要かも、同時にやっておいた方がいい」と述べ、漁場の変化に伴う漁業権の再配分を例に挙げながら「温暖化するのだから、それに対してどういう制度が対応できるのかというルートも用意しておいた方がいい」と主張した。
山口氏も「人間が対応するスピードより自然の変化の方が早いから危機だと感じている。緩和と適応、両方を真剣に考えていくことが非常に大事だ。人間は賢いと思っているので、考え方を変えることで十分適応できるのではないか」と語る。
■豪雨を弱める「ドライアイス散布」研究、極端化する気象への備え

山口氏はさらに、豪雨そのものを弱める研究にも取り組んでいる。「既存のインフラレベルでは防げないような豪雨災害が起きた時の最後の一手として、雲に対して上空からドライアイスを散布することで雨を減らすというシミュレーション上の成果が見えてきた。今後5年から10年をかけて実証実験を行い、本当に自然界でこれが機能するかを検証していく」と説明する。
安部氏が「水蒸気量の総量がすごく増えているわけで、量的に十分な効果が出るのか」と疑問を呈すると、山口氏は「総量としては5%から10%程度減る試算だが、一方で災害を起こすような局所的に非常に強いところが数十%ほど弱まることが見えており、災害削減の観点から非常に大きい」と答えた。なお、この研究は雨を減らす方向だけでなく、雨が降らないところで降らせる方向の研究とも並行して進められているという。
今後の気象の見通しについて山口氏は「長く続くかはまだはっきりとは分かっていないが、強い雨の頻度が増えることは間違いない。逆に干ばつ、雨が降らないところも増えるという極端化は共通の理解となっている」と語った。
(『ABEMA Prime』より)