日本付近の海上に、3つの台風が発生しています。
2026年は台風が相次ぐ中、いま、AIによって台風の進路予測に変革が起きようとしています。
台風のAI予測が、異例の進路を的中させるケースも出ています。
災害を減らす可能性も期待される、AI予測の実力と課題について、見ていきます。
■トリプル台風発生 異例の“越境”も 今後の進路に要注意
日本周辺での台風の動きです。
10月5日、新たに、台風28号と29号が発生しました。
先に発生していた、小笠原諸島の近くを北上している台風27号と合わせて、10月に『トリプル台風』が発生するのは、5年ぶりです。
今後、28号と29号は西寄りに進み、日本列島に近付く可能性があります。
台風同士が互いの動きに影響を及ぼすことも考えられ、進路に注意が必要です。
今回発生した台風28号は、珍しい台風だそうです。
台風28号は日付変更線を超えて、気象庁の監視海域に入った『越境台風』と呼ばれています。
『越境台風』とは、どういったものなのでしょうか。
そもそも、台風のたまごなどの熱帯低気圧を監視する機関が、地域ごとに決められています。
その監視の区分の1つが、日付変更線です。
日付変更線より東側で出来た熱帯低気圧はアメリカが監視し、勢力が強いものを『ハリケーン』と呼びます。
これが日付変更線を超えて日本側へ来ると、監視が気象庁に引き継がれ、『台風』と呼び名を変えます。
台風が日付変更線を超えてくるのは、数年に一度程で、今回は2023年の台風8号以来の『越境台風』です。
「2026年は台風が発生しやすい状況が続いていて、 結果としてトリプル台風が生まれた。今後も台風発生が見込まれるため、 引き続き注意が必要」
■AI革命 台風進路予測も 2026年の事例から見る“実力”
台風が相次いで発生する中、AIによる気象予測に変化が起きています。
従来の気象予測では、気象レーダーなどから集めた気温や風向き、水蒸気量などの観測データをスーパーコンピューターに入力します。
その後、スーパーコンピューターが物理学に基づいて、未来の気象を予測したものを、予報官が天気図などを踏まえて発表します。
これは『物理モデル』とも呼ばれています。
気象庁は、5年から8年ごとに最新のスーパーコンピューターに更新し、予報精度の向上を続けています。
ただ、物理モデルでは膨大な計算が必要で、時間がかかることが課題です。
そんな中、注目されているのが、AI予測です。
まず、過去の膨大な気象データをAIに学習させます。
学習後に、現在の気象条件を入力すると、過去の似たデータを探し、今後の大気の動きを推定。
台風の進路予測なども導き出します。
AIの学習が完了すれば、短時間で精度の高い予測が出せ、電力コストなども抑えられます。
AI予測の精度はどのぐらいなのでしょうか。
2026年5月の台風6号で見てみます。
台風6号は、徳島県や和歌山県、静岡県、神奈川県で線状降水帯が発生しました。
さらに、和歌山県の古座川では、初のレベル5氾濫特別警報が発表されました。
その台風6号の当初の進路予測です。
青い線が物理モデル、赤い線がAI予測、黒い線が実際の台風の進路です。
台風6号では、物理モデルもAI予測も、実際の進路に近いものを示しています。
一方で、予測が分かれた台風もあります。
9月23日に発生した、台風26号です。
25号で甚大な被害を受けた千葉などでは、警戒が強まった台風でした。
発生後の進路予測では、青の物理モデルでは、台湾方面へ抜ける予測でした。
しかし、赤のAI予測では、途中から進路を変え、関東の沖合へ向かう予測になっていました。
そして、実際に台風26号が通ったのは、AI予測に近い進路でした。
「この2年から3年で、AIの精度の高さが分かってきた。10日先までの気象予測も、物理モデルなら20分から30分かかるが、AI予測なら1分から2分程度で計算が出来る」
■台風AI予測“天気アプリ”活用 農場の被害防いだケースも
AI予測を活用することで、台風被害を防いだケースがあります。
9月中旬、千葉や神奈川に被害をもたらした、台風25号です。
9月16日に発生した台風の影響で、関東甲信地方の各地では、9月21日の24時間降水量が、これまでの観測史上1位を更新するなど、記録的な大雨になりました。
この影響で、
▼千葉・印旛沼の堤防の一部が決壊
▼亡くなった方は、17人確認されています。(10月5日時点)
台風25号が発生する前、まだ熱帯低気圧の状態だった9月14日午前9時時点の予測です。
青い線が気象庁の進路予測ですが、こちらは沖縄など、西寄りの進路を示していて、関東への接近を思わせるものではありませんでした。
一方、赤い線がAI予測です。
こちらは、関東接近を予測していました。
この情報を活用し、台風による被害を防いだ農場があります。
『たねまき常総』という農場です。
▼敷地面積 約7ヘクタール(東京ドーム約1. 5個分)
▼年間 約1000トンのミニトマトを収穫し、首都圏を中心とするスーパーなどに出荷しています。
▼民間気象会社のAI予測の天気アプリを導入しています。
「台風最接近時は、猛烈に雨が強く、農場周辺も至るところで冠水していたが、AI予測を参考にしながら動けたのが非常に良かった。大きな被害もなく、次の日からちゃんと作業や出荷ができた」と話しています。
農場の対応です。
AI天気アプリを通じ、関東に最接近する6日前に、台風襲来を察知しました。
「関東に来るかもしれない。対策をしないと」と考え、様々な対策をします。
▼止水板を施設の21カ所に設置
▼電気設備をかさ上げ
▼風で飛ばされないよう、パレットを屋内に移動
▼被害が出た場合、出勤し、対応できるスタッフリストを作成しました。
その結果、
▼(止水板を置かなかったところから)施設の一部に水は入ったものの、事前に作ったリストをもとにスタッフが対応。
▼トマトの栽培や出荷に影響が及ぶような被害はでませんでした。
「関東に来るというAI予測が、実際にそうなった。台風接近の察知が直前だと、台風対策に人手を取られて通常業務ができないが、かなり前から接近を察知できたので、通常業務と並行して台風対策ができた」と話しています。
この農場が導入していたAI天気アプリは、民間の気象会社・ウェザーニューズが提供する、AIを活用した台風の進路予測サービスでした。(有料サービス)
台風発生前から、最大10日先までの進路予測がわかるので、気象庁の発表より、先の期間まで見通せます。
■AI予測の課題 未来の気象予測どうなる?
AI予測の課題です。
台風の『進路予測』は得意ですが、中心気圧・雨量・最大風速など、『台風の強さ』の予測は苦手だといいます。
図は、台風25号の48時間積算降水量です。
左が実際の積算降水量で、右がAI予測ですが、真ん中の従来の物理モデルと比べると、画像が荒くて、紫色の部分(降水量が多い部分)は、AIでは予測できていません。
風速についても、真ん中の物理モデルは、実際の風速とかなり近い風速を予測しているのに対し、右のAI予測は実際より弱く予測しています。
なぜ、こうなるのでしょうか。
「解像度が低く、AIが細かい現象について、学習できていない」といいます。
「雨量などは、従来手法の方が精度が良い。現時点で、気象予測の精度を高めるには、従来手法との併用が必要。今後、AIの精度向上が見込まれ、気象予測の精度はさらに高まっていく」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2026年10月6日放送分より)















