皇族数減少への対策として成立した改正皇室典範により、1947年に皇籍を離脱した旧11宮家の男系男子の子孫を養子に迎えて皇族とすることが可能となった。これに対し、漫画家の小林よしのり氏らが「家柄や血統による優遇であり、門地による差別を禁じた憲法14条に違反する」として国を相手取り提訴した。「国民の中に新たな特権身分を生む」とする原告側に対し、政府側は「皇族は憲法上の例外であり合憲」との立場をとる。基本的人権と象徴天皇制の調和をめぐり、『ABEMA Prime』で議論が行われた。
■小林よしのり氏ら「旧宮家を特別扱いすることは憲法違反」

改正皇室典範の新規定では、旧11宮家の子孫で15歳以上の未婚男子に限り皇族の養子となることができる。原告の小林氏は、「門地とは家柄や血統のこと。旧宮家の男しかダメだというのは、性別でも家柄や血統でも差別している。完全に憲法14条違反だ」と主張。さらに、「日本は一君万民であり、1人の君がいて国民は全員平等という原則によって平等を担保してきた。身分社会ではないところが日本の良さであり、機会の平等があるからこそ自分も漫画という手段でやってこられた。この制度は新たな身分を生み出し、平等を壊してしまう」と訴えた。
原告訴訟代理人の倉持麟太郎弁護士も、「憲法が認めた唯一の例外が第1章の天皇・皇族である。現在、旧宮家とされる方々は一般国民であり、皇族の法空間にいるわけではない。国民の中で旧宮家に属する人とそれ以外を区別することは、明白な門地による差別に当たる」と指摘した。
一方、TikToker・岸谷蘭丸氏は「80年ほど前まで皇族だった家柄なら、一般国民とは別枠なのではないかと感覚的に思ってしまう。元皇族ならあり得るのではないか」と素朴な疑問を口にした。
■「皇籍離脱の経緯」をどう評価する?政府説明への疑問

政府は「皇族は憲法14条の例外であり、施行時に皇族であった者の子孫であるため平等原則に反しない」と合憲性を主張する。これに対し、元宮内庁職員で皇室解説者の山下晋司氏は、昭和22年(1947年)の皇籍離脱の経緯を踏まえ、政府答弁の矛盾を突いた。
山下氏は「もともとは旧憲法、旧皇室典範下で離脱する予定で宮内省も進めていた。宮内省とGHQが協議する中で一時金などの問題が生じ、昭和22年度の国会答弁でも『その年度になるとは思っていなかった』と予算措置が遅れた経緯がある。本来は旧制度下で離脱するはずだったものを、新憲法下で皇族だったからと合憲の根拠にするのは皮肉な話だ」と述べた。
また、改正法で女性皇族が結婚後も皇室に残る選択肢が新設された一方、配偶者や子は一般国民のままとされた。山下氏はこの制度設計の歪さにも言及した。
「一番おかしいのは、夫は結婚後も一般国民のままであるにもかかわらず、なぜ自分の結婚に国の許可(皇室会議の議決)が必要なのかという点だ。男性皇族の結婚は妻も皇族になるため国が責任を負うが、女性皇族の夫は一般国民のままだ。結果として、父母で戸籍が異なる(妻は皇統譜、夫と子は戸籍に記載される)という非常に歪な家族が生まれる」。
倉持氏も「憲法24条は夫婦が同等の権利を有すると定めている。一方は人権制約を受ける皇族、もう一方は自由を持つ一般国民という組み合わせは憲法上想定されていない」と同調した。
■「伝統」か「近代法」か“属人化”する皇位継承議論の弊害

研究者・山内萌氏が「近代化のための憲法の中で、前近代的な皇室を温存させた矛盾がある」と提起すると、小林氏は「共和制になれば政治家が象徴となり独裁が生まれかねない。立憲君主制こそが権力の抑止力になる」と皇室の意義を強調した。
こうした議論に対し、山下氏は「日本は長らく身分社会の中で天皇制度を維持してきた。当時は同族結婚が多く、父も母も天皇という例すらあった。皇室の歴史には宗教的、神話的な側面があり、理屈だけで現実ではないと否定する必要もない」と解説した。
その上で山下氏は、皇位継承の議論が個人の好悪に左右されている現状に警鐘を鳴らした。
「愛子天皇待望論のせいで、かえって女性・女系問題の議論がやりにくくなっている。国民はどうしても見える個人の好き嫌いで判断してしまう。愛子内親王殿下に天皇になってほしいから女性天皇を認める声や、秋篠宮家への反発から別の案を推す声もある。本来は制度としてどうあるべきかを冷静に議論すべきなのに、人物に引きずられてしまっている」。
さらに皇族の発言機会について「天皇のご意向を推測して発言すれば、双方が都合よく利用し『政治利用』の批判を招く。皇族の方々が率直な考えを公にすることは極めて困難だ」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)