現在、自転車に子どもを同乗させられるのは、原則として「小学校就学前まで」と定められている。しかし、共働き世帯などから「小学生の送迎にも必要」との声が上がる中、今年4月から自転車にも青切符制度が導入され、年齢制限への関心が高まっている。
【映像】子ども+荷物 危ない自転車のフラフラ走行(実際の様子)
こうした状況を受け、警察庁が所管する自動車安全運転センターは有識者会議を設置し、子乗せ自転車の要件緩和に向けた検討を始めた。都市部を中心に顕在化する子乗せ自転車を取り巻く課題と今後のあり方について、『ABEMA Prime』では、当事者である親たちとともに考えた。
■年齢で区切る矛盾と「生活インフラ」としての自転車

なぜ小学生の同乗が必要なのか。小学校低学年と保育園に通う2人の娘を自転車に乗せて毎日送迎しているELさんは、次のように現状を訴える。
「我が家は毎朝それぞれ小学校と保育園に送り届ける。夕方も上の子の学童のお迎えの後に下の子の保育園のお迎えをしてから、また上の子の習い事に連れていき、帰宅してまたお迎えという感じで、複数の場所を短時間で移動しなければならない状況にある」。
自転車が日々の生活に欠かせないと説明し、「徒歩でやろうとすると移動だけで相当な時間がかかるし、公共交通機関を使うにはどこも中途半端な距離で、時間的にも路線的にもちょうどいいものがない。さらに夕方時間帯は子どもがぐずりやすく、思ったように歩いてくれない。特にフルタイムで働いていると朝夕の時間が本当に限られているので、自転車は単に便利な乗り物というだけでなく、仕事と育児を両立するための生活インフラになっていると言っても過言ではない」と述べた。
この問題に対し、年齢制限の緩和を訴えている公明党・参院議員の司隆史氏は、現行ルールの課題を指摘する。
「共働きで忙しいご家庭が多い中、仕事を終えて学童に迎えに行ったり、障害をお持ちの方は放課後等デイサービスに迎えに走るといった生活リズムから考えた時、4月に急に青切符対象になるということで、かなり混乱の声をいただいた。なぜ小学校に入ったら乗せられなくなるのかが疑問だ」。
自転車の安全基準である現行のSG基準では、後部の幼児用座席に乗せられる子どもの体重は24キロまでとされている。司氏は、こうした体重基準と交通ルール上の年齢制限の関係について、「それが小学校就学前までというルールとリンクしている。しかし、入学する時に24キロかと言われると20キロぐらいであり、全国の平均でも小学1年生の8割から9割が24キロ以下だ。単純に体重で決めている規則と年齢がリンクしていないため、実質年齢を緩和する方向に動いてもいいのではないか」と指摘した。
■行き場を失う自転車…車道走行の恐怖と歩道での危険性

自転車は原則として車道を走行することが義務付けられているが、子乗せ自転車が直面する現実は厳しい。ELさんは車道走行の恐怖について次のように明かす。
「子どもを乗せて車道を走るのはかなり怖い。特に都心部だと路上駐車をしている車も多く、道路の幅も十分でないところが多い。路上駐車を避けようとすると後ろから来る車との接触事故が怖くて、車道側に出ること自体に大きな心理的なハードルがある」。
子ども2人を乗せた電動アシスト自転車は車体も重く重心が高くなることもあり、「狭い自転車レーンを安定して走らなければ大事故になる可能性があるという条件下で走行するのはかなり厳しい。自転車レーンのペイントが増えてきているが、必ずしも解決するわけではない。現状は走行車が自転車レーンにはみ出していることはごく日常的だし、道幅の狭いところでは後ろから煽られてしまうこともある。結果として歩道を走らざるを得ないのが現状だ」と語った。
一方で、同じく2人の娘を持つコウスケさんは、歩道を走行する自転車への危機感を示す。
「都心だと大通りから脇道に車を移動させることが難しく、路上駐車をせざるを得ないことが多い。行き場を失った自転車が歩道を走るのは致し方ないと思いつつも、どうしても重量のある自転車なので、ぶつかった時のことを考えると、もう少し自転車側もスピードに意識を持っていってほしい。歩行者の方が避けてくれるだろうという前提のもと走っている自転車が非常に多いと感じており、歩行者が急に動くかもしれないという運転をしてほしい」と述べた。
■無用な対立を生む「車中心社会」と整備が進まない専用道

こうした利用者と歩行者の対立の根底には、インフラの未整備があるとの指摘も出た。立命館大学准教授・富永京子氏は「子どもを乗せるのがありかなしか、スピードを出すのがありかなしかというよりは、そうせざるを得ないような交通の状況があり、自動車中心の社会になってしまっていることの問題だ。無用な対立をしてしまっている感じがする」との見方を示した。
また、コラムニスト・河崎環氏は「基本的に自転車は買い物をして前後に子どもを乗せるようなものとして、そもそも発明されていない。それなのに、欧米のようにきちんと自転車用の道が整備されない中で、車道と歩道のどこかにいるような曖昧な実践をされてきた」と指摘した。
司氏は、行政の取り組みの遅れについて「5月に政府が『自転車活用推進計画』を閣議決定し、自転車をもっと利便性のあるものにして道路空間も大きくしようと国でうたっている。ただ、道路は国、都道府県、市町村とそれぞれで作っていかなければならず、現段階で全国の市町村で計画を立てているのは20%もない状況だ。今回の件が、まちづくりや道路をどうするか、歩行者、自転車、自動車それぞれの利便性を向上するにはどういう道路整備が大事なのかを議論するきっかけになるチャンスだ」と語った。
■年齢から「体格」基準へ?見直し検討がスタート

今後のルールのあり方について、ELさんは「子どもの年齢で切らずに体重や身長で切るのはすごく合理的だ。年長さんや小学1年生は早生まれなども含めて体格に相当差があり、下は100センチを切る子から上はすでに130センチある子までいる。安全指標を使ったルールを決めていただけたらと思う」と求めた。コウスケさんも「ある程度身長や体格で切った方がいいと感じている」と同意した。
司氏は「自転車の安全性を検証する有識者会議が立ち上がり、年内に改めてどういう体重や身長で乗せた場合に危険かどうかの実験を行い、来年度末までにある程度法改正を含めてやるということで動き出した」と今後の検討の見通しを説明した。
さらに、従来の自転車の形状にとらわれない発想の必要性にも言及し、「関西の企業が、そもそも子どもを後ろに乗せるような安定的な新しい形の自転車を提案している。自転車でルールを決めて安全性という固定概念ではなく、そもそも子どもを乗せて今の環境で安全に乗るような自転車とはなんなのかという発想も大事だ」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)