大坂なおみが一石を投じる…アスリートと心の問題[2021/06/03 23:30]

自ら“うつ”を告白し、全仏オープンを棄権した大坂なおみ選手。彼女の言葉は“アスリートと心の問題”に、一石を投じることになりました。

女子テニス界のレジェンドは、こう話します。
マルチナ・ナブラチロワ氏:「アスリートは体のケアについて教わるが、メンタルヘルスや感情面は軽視されがち」
   
“アスリートは、屈強な肉体や強靭な精神を併せ持っている”と思われがちですが、もちろん同じ人間です。実際、メンタルヘルスで悩む選手は、多いといいます。多くのアスリートの“心の悩み”を研究してきた小塩氏に話を聞きました。
国立精神・神経医療センターの小塩靖崇研究員:「メンタルヘルスのことは、ネガティブなイメージがあるし、アスリートにとっては弱さの象徴だったりすると思うので、それをさらけ出す、自分の言葉にして伝えるというのは、なかなか難しいことではないかなと思う」


小塩氏は、日本ラグビーフットボール選手会と共同で、ジャパンラグビートップリーグの選手を対象にメンタルヘルスの調査を行いました。国内アスリートを対象にした調査研究は、全国初で、今年2月、結果が公表されました。調査では、40%以上の選手が“メンタルヘルスの不調”を経験し、7%の選手が“死”を考えたことがあるという実態が明らかになりました。
国立精神・神経医療センター・小塩靖崇研究員:「どんな競技でもそうだが、生活しているなかで、周りの人が全部利害関係者だったりとかして、自分の勝敗によって、周りの人の生活が左右されてしまったりする。自分が活躍すると隣の人が出られない、隣の人が活躍したら自分が出られないとかある」

小塩氏によりますと、「40%以上」という数字は、一般の人と変わらない割合だといいます。ただ、アスリートのメンタルヘスケアについては、まだわかっていないことも多く、まずは、実態を把握することが大切だと指摘します。
国立精神・神経医療センター・小塩靖崇研究員:「どれぐらいの選手が不調を経験していて、どんな不調を経験しているのか、どんなニーズがあるかを明らかにしていかないといけない。日本のアスリートのメンタルヘルス研究が、ほとんど行われていない。それをする人もいないし。そこからですかね」

◆それでは具体的に、どのような対策があるのでしょうか。

小塩氏は、「日本国内のアスリートのメンタルヘルスの実態を把握し、気軽に相談できるようにする体制づくりが必要だ」としています。そこで、小塩氏は、日本ラグビーフットボール選手会などと共に『よわいはつよいプロジェクト』を立ち上げ、“弱さを正しく受け入れて、対応していくことを強さととらえて、当たり前にメンタルヘルスケアができる空気づくり」を目指しています。

そのために海外の事例を参考にガイドラインの作成も予定しています。例えば、ニュージーランドのプロラグビーチームには、各チーム必ず1人、選手会から派遣された“相談員”がいます。この“利害関係がない”というのがポイントで、コーチでさえも選手にとっては、試合に起用する・しないという利害関係が生まれるため、“独立した相談相手”を側に置くことが大事だといいます。

日本では、小塩氏や日本ラグビーフットボール選手会などと共に『よわいはつよいプロジェクト』を立ち上げました。これは“弱さを正しく受け入れ、対応していくことが強さとらえて、当たり前にメンタルヘルスケアができる社会を目指す”という想いが込められているそうです。

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