ボクサー・井上尚弥の1カ月半に密着「必ず倒したい」日本人初の世界3団体統一へ[2022/06/06 23:30]

ボクシングWBAスーパー/IBFバンタム級王者、井上尚弥選手(29)は7日、日本人初めての世界3団体統一王者をかけた試合に臨みます。

その相手は、ボクシング界の生ける伝説、WBCバンタム級王者・世界5階級制覇、ノニト・ドネア選手(39)です。

井上選手がこの試合に臨むまでの1カ月半を取材しました。

井上尚弥選手:「(Q.今まで一番苦戦した試合は?)苦戦と言うならばドネア戦ですね」

2019年、バンタム級の頂点を決める戦いでドネア選手と戦った井上選手は、第2ラウンドに右眼窩底骨折。ボクシング人生初の出血を経験します。

井上尚弥選手:「ヒッティングでカットしているので、もう1回パンチで傷が広がって、ドクターストップになったら自分の負けなんですよ。そんなことも考えずに戦えていた。全てを楽しんでいた。5試合分の経験をした」

大けがを負いながらも、武器のボディーブローでダウンを奪い、判定までもつれた試合を制しました。このリングが評価され、ラスベガスに進出。全階級を通じた強さの格付けでは、日本人初の2位に選ばれます。

一方のドネア選手。井上選手に敗れた後、息を吹き返し、38歳にしてWBCバンタム級王者に返り咲きました。

井上選手の3団体統一がかかる試合は、全米での中継も決まり、世界が注目するビッグマッチとなっています。

千載一遇のチャンスはドネア選手にとっても同じです。

ノニト・ドネア選手:「私が最強、私がチャンピオン、私が統一王者。今回はキャリア最大の一戦になる。あの試合後、闘志は燃え続けている。井上がバンタム級で最強だ。彼を破って私が一番のボクサーになる。勝てると思わなければ、再戦には挑んでいない。勝つ自信がある」

4月、ドネア戦へ向けた本格的なトレーニングが始まりました。

井上尚弥選手:「(Q.ドネア選手とは2回目の対戦になるが?)前回12ラウンド戦っていますし、お互い手の内も分かっている。もうここまで来たら、お互いの対応力が試される試合になる」

互いの手の内を知る、宿敵との戦い。トレーナーを相手にしたミット打ちでは、構えるミットの位置について細かく指示を出し、入念な確認を行います。

井上尚弥選手:「(ドネアは)ディフェンスもうまい選手ですし、もろにパンチを受けない。当てさせないうまさ。絶妙な角度でパンチを殺していく」

ドネア選手の姿を重ねながら、パンチのイメージを固めていきます。

井上尚弥選手:「きょうやっていたトレーニングを毎日やる。なんですけど、毎日同じ動きができるかといったらそうではなく、感覚だったり。(Q.焦りますか?)そうですね、不安は一切なくしていきたい」

一切の不安を打ち消すために、己の肉体と向き合います。さらに、チームで乗り出したのは足腰の強化でした。

井上選手の特徴でもある、下半身から連動させ放たれるパンチ。そのパンチ力の向上を目指し、一日中、走り込みを行います。

合宿最終日。タイムトライアルでは他の誰よりも遅い井上選手。ところがラスト1本、レースになった瞬間、空気が一変します。

弟・拓真さん:「なんで断トツ1位なの?」

ここぞの勝負どころで驚異的な力を発揮する、井上選手の闘争心に火が点いた瞬間でした。

5月、過酷な減量は始まっていました。バンタム級のリミット53.5キロへ、10キロ近い減量に挑む井上選手。その身を削りながらも、練習はさらに激しさを増します。

井上尚弥選手:「減量して精神的にも極限まで自分を追い込んで、どのくらい水を飲めばいいのか、最後の方はそこの調整」

そして試合前日の6日、前日計量にのぞんだ井上選手は53.5キロでクリアしました。手に入れたのは鋼のような肉体。そして研ぎ澄まされた精神でした。

7日、ドネア選手との最終決着へ。

井上尚弥選手:「6月7日にゴングが鳴った瞬間、お互い何を感じるか。そこからどう対応していくか。必ず倒したいと思ってます。その倒すためのパンチはいくつか、何となく想像はしている。当日、リングの上でひらめきがあれば」

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