エンゼルスオーナー「球団売却を検討」大谷翔平選手の“去就”に影響は?専門家解説[2022/08/24 23:30]

メジャーリーグの大谷翔平選手が所属するロサンゼルス・エンゼルスのオーナー、アルテ・モレノ氏(76)が球団売却に向け、外部の財務エキスパートと契約したと明らかにしました。

アルテ・モレノ氏:「20シーズンもエンゼルスを所有できたことは光栄であり、名誉でした。この苦渋の決断は、熟慮の末に私たちが選んだ結果でありますが、家族と共に今がその時だという結論に至りました」

エンゼルスは、メジャー30球団のなかでは歴史が浅いチームです。球団創設は1961年。過去には、ウォルト・ディズニー社がオーナーだった時期もありました。この時の球団名は、アナハイム・エンゼルスで、長谷川滋利氏が所属。ワールドシリーズ優勝は過去に1回、2002年のことでした。

翌年のオフに、実業家のモレノ氏が買収。その後、松井秀喜氏や高橋尚成氏も所属し、6回の地区優勝を飾っていますが、2014年を最後に優勝はありません。

2017年のオフには、ポスティング・システムで大谷選手を獲得しました。現在、驚異的な活躍をみせていますが、チームは昨シーズンまで7年連続で負け越し、今シーズンも地区4位に沈んでいます。

球団売却の発表に、生え抜きの大スター、マイク・トラウト選手は、こう話しました。

マイク・トラウト選手:「野手人生のすべてをここで過ごした。アルテとは素晴らしい時間を過ごし、家族の面倒もよく見てくれた。本当に感謝している。彼は先に進みたいのでしょう」

モレノ氏がウォルト・ディズニー社から買収した額は、1億8400万ドル。しかし、現在の球団の資産価値は、アメリカの経済雑誌『フォーブス』によりますと、30球団中9位で、推定22億ドルと、20年で10倍以上となっています。

今シーズン、大谷選手がトレードされなかったのは、モレノ氏の強い意向があったとの報道もあります。現地メディアも、大谷選手の未来を気にかけています。

地元紙オレンジカウンティー・レジスター:「大谷を長期契約するかどうか。モレノ氏はおそらく新しいオーナーに判断を任せたいだろう」

CBSスポーツ:「大谷翔平にとって、それが何を意味するのか。将来に、さらなる暗雲」

***

2018年にエンゼルスに移籍した大谷選手。メジャーリーグでは、基本的に契約から6年間は、球団がその選手の保有権を持っています。つまり、来シーズンのオフまではエンゼルスが大谷選手の保有権を持っていることになります。

ただ、来シーズンのオフに、大谷選手は『FA(フリーエージェント)権』を取得します。FA権を取得すると、大谷選手が自由に所属チームを選ぶことできるようになります。

◆メジャーリーグに詳しいスポーツジャーナリスト・生島淳さんに話を聞きます。

(Q.モレノ氏がエンゼルスを売却するはなぜだと思いますか?)

声明のなかにあった「家族と話し合った」という言葉から考えると、ご自身が76歳と高齢であること、それに加えて、親族を含めて自分の周りに後継者がいないことが大きな理由だと想像できます。

(Q.モレノ氏は、どんなオーナーですか?)

オーナーのタイプは色々ありますが、モレノ氏は選手の編成に割と口を出すタイプだと思います。自分が見たい選手に対して大型契約を提示するオーナーです。

特に強打者で名を成している人が大好きだったと思います。その象徴がマイク・トラウト選手です。トラウト選手は今、12年契約の真っ最中です。エンゼルスでキャリアを終えてほしいというような思いを選手に対してお金でみせているタイプです。

全てのオーナーがモレノ氏のようにチーム編成に口を出す訳ではありませんが、本当に野球が好きなのではないかと思います。

若干、峠を越した選手に大枚をはたいてきたかなという印象を、僕は持っています。

(Q.この夏、大谷選手をトレードしなかったのは、モレノ氏が将来的な売却を考えて、球団の資産価値を高めておきたかったことが理由ですか?)

それは議論の余地があると思います。大谷選手は100年に1人の選手ですから、大変な選手であり、球団にとっての資産だと思います。フォーブス誌の報道によれば、エンゼルスの球団価値は日本円で約3000億円に上ります。

1人の選手の存在がどこまで資産に影響を与えるかどうか分かりませんが、今回トレードされなかったことに関しては、7月時点ではまだポストシーズン進出の可能性があったことと、モレノ氏が大谷選手のプレーを見たかったということが、大きな要素ではないかと思います。

(Q.FAを取得するまでの間、どういう判断が働いてきますか?)

通常、大谷クラスの選手であれば、6年目の前倒しで大型契約を結ぶことが多いです。例えばマイク・トラウト選手は、4年目に大型契約を結んでいました。大谷選手もおそらくそのような交渉に入るのではないかと想像されていましたが、オーナーが球団売却の意向を表したことによって、不透明になってきました。

新しいオーナーにいつ代わるかは、非常に重要になってくると思います。モレノ氏がウォルト・ディズニー社から買い取った時は、2002年9月に売却の意向が発表されて、契約がまとまったのは2003年5月と、大体8カ月かかりました。

今のエンゼルスの最良のシナリオは、来年の開幕日前までに新しいオーナーが決まることだと思います。その新しいオーナーが大谷選手を中心としてチームを作るかどうか。

大谷選手を中心にチームを強くしていこうとすれば、大型契約のオファーがあると思いますが、逆に「どういうチーム作りで優勝を狙えますか」と大谷選手側にボールが渡されると思います。

これからは、新しいオーナーがいつ、どのタイミングで決まるか。そして、そのオーナーが大谷選手の契約に対して、どのような意向を持つか。来年春くらいまで目が離せない状況が続くと思います。

こちらも読まれています