小平奈緒さん“幸せな引退” 「金メダル以上の価値」…ラストレースでの“気づき”[2022/10/25 13:00]

22日、現役生活にピリオドを打った、平昌オリンピックのスピードスケート女子500メートル金メダリスト・小平奈緒さん(36)。

このラストレースの後に、松岡修造さんが特別に小平さんに話を聞きました。

小平さんが、ラストレースで感じたこと、それは“金メダル以上に価値のあるもの”でした。

■人生観を大きく変えた“気付き”

松岡さん:「新しいステージ、おめでとうございます」
小平さん:「ありがとうございます」
松岡さん:「さっきまでレース、そしてセレモニーがありました。どんな思いなんですか、今は」
小平さん:「こんな日になると思ってもみなかったので、ずっと幸せに浸っています」

22日、現役生活にピリオドを打った、小平奈緒さん。そのレース直後、印象的な言葉を口にしていました。

小平さん:「オリンピックでメダルを取った時よりも、世界記録に挑戦した時よりも、価値のあるものだった」

金メダル以上に価値のあるもの。その気付きが、小平さんの人生観を大きく変えました。

松岡さん:「“金メダル以上のもの”って、なんでしょう?」
小平さん:「記録とか順位で、はかれないものを手にできた。金メダルって、物じゃないですか。記録も、いつかは誰かに破られるもの。でも、心は通ったら、いつまでも通っていられる。人とこんなにつながれる人生だと思っていなかったので。会場いっぱいに応援してくれる人がいる。それだけで、本当に幸せでした」

■「人とのつながり」は“金メダル以上”

22日、小平さんのラストレースを見るために、多くのファンが集まりました。

会場となった「エムウェーブ」は、長野オリンピック以来の超満員。まさに、小平さんの言う「人とのつながり」を象徴するような光景でした。

では、「人とのつながり」に、どうして金メダル以上の価値を見出すようになったのでしょうか。それは、こんな思いが芽生えたからです。

小平さん:「やっぱり、心がリンクを飛び出していった。飛び越えて、違う世界に行きたいって思ったので。自分が見てこなかった世界があるので、それを見てみたい好奇心かなって思います」

きっかけとなったのは3年前、地元・長野を襲った大型台風。その復旧に、金メダリストとして訪問するのではなく、いちボランティアとして自らインターネットで申し込み、参加。この経験は、競技一筋だった小平さんに、大きな気付きを与えてくれました。

小平さん:「オリンピック、オリンピックって言って、五輪に執着していると、どんどん世間からかけ離れていってしまう感覚もあって。そんなに特別じゃないというか。人として、どう生きるかが大事。人は学びも運んでくれますし、喜びも共有できますし、悲しみも分け合えられますし。人がいるから、私生きていられる」

この思いが、現役引退という決断へとつながっていったのです。

■「学びの化学反応」楽しんだ6カ月間

そして、引退を決めてからの6カ月間も、金メダル以上の価値をもたらす日々でした。

小平さん:「いつまでも、やっていられると思うと、中身も薄くなっていきますけど、覚悟を決めた。覚悟を持ったので、そこに向けて、やっていくだけですね」

小平さん:「技術の進歩や思考の変化を楽しむ、毎日の積み重ねだった。やめると決めたことで、エネルギーが集中していく。これまでに経験したことのないエネルギーで、最後と決めたゴールの日まで、『学びの化学反応』を楽しんでこられました。人間は、体を素直に使えないと、スポーツでのパフォーマンスも上がらない。素直に。出しゃばらないということです」

松岡さん:「それは、欲ということですか」

小平さん:「欲が出たりとか、力があるから、力を出そうではなく、素直に氷に置くだけ。そこに対して、反応してきたものをしっかり受け止めて、次のストロークにつなげる。素直に氷の声を聞いて」

■ラストレースは「素直に氷と向き合えた」

迎えた22日の全日本距離別選手権。ついに、この時が訪れました。スケート人生の集大成です。

小平さん:「足にかかる氷からの感覚が、ピタッとしていたので。本当に、素直に氷と向き合えた。氷も、ちゃんと応えてくれていましたし。『楽しいね』という感じでした」

松岡さん:「これまでの学びのなかで、小平さんが一番力となっているものは?」

小平さん:「人です。地に足つけて、皆さんのそばで生きていきたい。あと、人生も60年くらい。元気よく生きていきたいです」

(「報道ステーション」2022年10月24日放送分より)

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