紀平梨花 完全復活へ「今できること」…仕上がり順調 フィギュアGPSカナダ大会[2022/10/29 12:00]

29日から、フィギュアスケートのグランプリシリーズ第2戦、カナダ大会が始まります。

カナダ大会に登場するのが、紀平梨花選手(20)。昨シーズンはけがから、最大の目標であった北京オリンピックを断念するなど、苦しい時期を過ごしました。

どんな思いでここまでたどり着いたのか。話を聞きました。

■“夢の舞台”断念「すごく大変な時期だった」

紀平選手といえば、高難度ジャンプを武器に、北京オリンピックでの活躍が期待されていた、日本女子のエースです。

しかし、去年の夏、右足首の疲労骨折が判明。予定していた試合は、すべて欠場しました。

12月のオリンピック選考会も間に合わず、夢の舞台を断念しました。

紀平選手:「(Q. 北京五輪を断念する決断をした時はどんな思いでしたか?)何とか北京五輪に出られる方法はないかなと、考えたりすることが多かった。ふとした瞬間に、『北京五輪にけががなかったら、行けてたなあ』。何をやっても、前に進めてる感じがしなくて、すごく大変な時期だった」

■明るい名コーチ「女子フィギュアの顔になる」

後ろ向きな気持ちを抱えていたなかで、前を向くきっかけをくれた人物がいました。

紀平選手:「『大丈夫だよ』と言って下さったのが、ブライアンコーチ」

昨シーズンから指導を受ける、ブライアン・オーサーコーチ。羽生結弦さんを長年指導してきた、名コーチです。ブライアンコーチが心掛けてくれたのは、明るく、ポジティブな言葉をかけ続けることです。

ブライアンコーチ:「コーチは明るくなくてはいけません。選手にとって良いのは、私が常にポジティブでいることです。彼女は女子フィギュアの顔になるでしょう。世界が彼女を待っています」

紀平選手:「(Q. ポジティブな言葉はどうプラスに働きましたか?)ああいう言葉がなかったら、どんな気持ちだったんだろうって。どう考えても、パニックになるくらいの状況なのに、いつも明るく接して下さって、つらさを忘れさせてくれたので。すごく印象的で助かった」

■ジャンプが跳べない…スケーティングに成長を

少しずつポジティブさを取り戻した、紀平選手。けがの悪化を防ぐため、ジャンプの練習はできないなかでも「今できること」に向き合いました。
  
取り組んだのは、「スケーティングの強化」。足をクロスさせて滑ったり、くるりと後ろに回りながら滑ったり、何種類ものスケーティング練習に励みます。

中でも、ブライアンコーチが徹底的に指導したのが、「スピードを落とさない滑り方」です。

紀平選手:「ブレードの前を押すと、失速する。ブレードの真ん中を押すと、失速しない。押した分だけスピードが出る」

スケート靴の先端は、ギザギザした形状になっています。この部分に体重がかかると、刃が氷に引っ掛かり、スピードがダウン。力をブレードの真ん中に集中させることで、失速を防ぎ、体力の温存にもつながるといいます。

ジャンプが跳べない時期だからこそ、スケーティングに自らの成長を見出しました。

■525日ぶり実践 「今できること」全力で手応え

迎えた、先月の復帰戦。紀平選手にとっては、実に525日ぶりとなる実戦となりました。

まだ、難度の高いジャンプは飛ぶことはできません。だからこそ、ジャンプ前後のスケーティングに、全力を費やします。

結果、6位で全日本選手権の切符を獲得。ジャンプの技術を表す、「技術点」は全体9位に対し、スケーティングなどを表す「演技構成点」は、全体3位。ジャンプの遅れを、しっかりカバーしました。

今できることを全力で見せた紀平選手。確かな手応えをつかんでいます。

■カナダ大会へ 仕上がり順調「笑顔で終わりたい」

そして、28日、グランプリシリーズ・カナダ大会の前日練習に登場した紀平選手。

気になるのは、けがの回復具合ですが、なんと3回転3回転のコンビネーションジャンプ。先月よりも難度の高いジャンプを跳んでいますし、回復具合というのは、順調そうです。

さらに、強化してきたスケーティングも、入念に確認。ブライアンコーチとの会話では、笑顔も見られました。

紀平選手:「せっかく、この舞台に戻って来られて、しっかり自分のできることをやりつくしたいなって思いますし。笑顔で終われる大会にしたいなって思います」

紀平選手は、「けがの前までは、オリンピックにこだわっていたけれども、今はもう二度と来ない。この瞬間を大切にするようになった」と話していて、本当に新しいスタートを切った。そんな強さというものを感じました。

(「報道ステーション」2022年10月28日放送分より)

こちらも読まれています