サッカー日本代表専属シェフ・西芳照さん W杯5度目…こだわりは「ライブクッキング」[2022/11/15 16:09]

 今回紹介するのは、サッカー日本代表の専属シェフ・西芳照さん(60)です。選手と同じエンブレムを胸に着けています。自身5度目のワールドカップを前に、“魂の料理人”に話を聞いてきました。

■5度目のW杯 特別なこだわり「ライブクッキング」

 今回の取材で、西さんがスペシャルな場所を用意してくれました。

 松岡修造さん:「これは何の準備ですか?」

 西さん:「代表の皆さんが食事会場に入ってきた時、僕がいつもやっていること」

 案内して頂いたのは、ガスコンロが3つ並んだ特設クッキングスタジオ。西さんには、専属シェフとしての「特別なこだわり」があります。

 チームが海外遠征をする時、食事は決まってビュッフェスタイルですが、西さんは会場の一角に必ず、目の前で調理する場所を作ります。ヨーロッパでも、中東でも。

 ライブでの調理にこだわるのは、どうしてなのでしょうか?

 松岡さん:「ビュッフェですから、パスタとかは普通、作り置きで置いてありません?」

 西さん:「作り置きだと食べてくれない」

 松岡さん:「えっ?」

 西さん:「食べないんです。料理を作り終わるのが1時間前ぐらい。すると、どうしても、ツヤがなかったり」

 松岡さん:「選手の気持ちとしては…疲れているから、本当の意味で食欲をそそってくれないと入ってこない…」

 西さん:「だからこういうふうにして、目の前で温かいものを香りも出しながらやれば、食べてくれるんじゃないかな」

■暴動が起きるほどの「絶品3日前ハンバーグ」

 こだわりのライブクッキング。目の前でハンバーグを焼いて頂きました。

 松岡さん:「うまい!選手は、こんなおいしいもの食べているんだ」
 西さん:「温かいからおいしいんですよ」

 松岡さん:「このハンバーグは、いつくらいに出すんですか?」

 西さん:「試合の3日前」

 松岡さん:「1試合目、ドイツ戦の3日前もありますね。その次、コスタリカ戦の3日前は?」

 西さん:「同じです」

 松岡さん:「3日前ハンバーグ。習慣付けているんだ、体が覚えていく」

 西さん:「スタッフと3日ごとにハンバーグを食べて飽きるからやめようって話をしたんですけど。『絶対やめちゃダメ』『暴動が起きる』」

■ハンバーグ食べ…吉田選手「西さんがナンバーワン!」

 暴動が起きるほどの「絶品3日前ハンバーグ」。出来立てアツアツにこだわるから、時間との勝負です。

 西さん:「はやっ!」

 料理を並べ終わると、もう選手が来ました。

 川島永嗣選手:「(食べて)ん〜」
 吉田麻也選手:「(食べて)西さんがナンバーワン」

 今や、日本代表のホテル選びは、ライブクッキングができることが条件になっています。

 味付けも焼き加減もリクエストし放題。西さんの周りには、いつも人の輪ができます。

■西さんから祝福の言葉に…森保監督怒り「仲間だろ」

 そんな西さんへの感謝を込めて、今年3月、チームからプレゼントが贈られました。還暦のお祝い、真っ赤なコックコートです。

 専属シェフになって18年。ひとたび遠征に出れば、平均睡眠時間5時間という厳しい環境のなかで、選手たちの健康を一生懸命預かってきました。

 松岡さん:「色々なワールドカップ、色々な戦いを見てきて。一番大事にしなければいけないことは、なんでしょうか?」

 西さん:「“同じ目標に向かって一つになる”ことが、やっぱり大事だなと思いますね。選手同士もそうですし、選手とスタッフ各々が目標に向かって一つになる」「森保監督から1回…試合に勝って、食事会場に戻ってきて、森保監督から『西さん勝ったよ!』って言われて。僕は『おめでとうございます』って言ったんですよ。そしたら森保監督、怒って。初めて怒ったんですね」

 松岡さん:「怒られたんですか?」

 西さん:「『西さん、おめでとうじゃないだろう。やったねとか、仲間だろ?』って。あの温厚な森保監督が怒りましたね、初めて」

 松岡さん:「一緒に戦っているんだろう?って」

 西さん:「そうですね。大事なことは、そこだと思いますね」

■W杯の切符を手に…選手ら「仲間」に思い伝える

 西さんは、ピッチには立ちません。でも、一つになって戦う「仲間」です。

 赤いコックコートを贈られたあの日、日本代表は西さんの料理を食べて、オーストラリア戦に挑み、ワールドカップへの切符を手にしたのです。

 森保監督は、試合終了直後に選手たちを集めてこう話しました。
 
 森保監督:「選手もスタッフも常に勝つために下を向かず、頑張ってきてくれた。結果が出て良かったと思う。我々を支えてくれて、環境づくりをしてくれた人がいる。その皆と、このW杯出場を喜ぼう、おめでとう!!」

 宿舎へ戻ってきた選手たちには、喜びを伝えたい仲間が待っていました。

 選手:「勝ちました!西さん、ありがとうございます」
 西さん:「良かったです」

(「報道ステーション」2022年11月14日放送分より)

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