W杯初…“日本人唯一”選出 女性審判員・山下良美さん 大舞台に向け重ねた“努力”[2022/11/16 15:22]

サッカー・ワールドカップ初の女性審判員、山下良美さん(36)。間近に迫った大舞台に向けて、どのような取り組みをし、どのような思いで臨むのか。安藤萌々アナウンサーが、山下さんに話を聞きました。

■意外…選出を知った“きっかけ”は?

先月、メディアに初公開されたプロフェッショナルレフェリーのトレーニングキャンプ。

安藤アナ:「体格の良い男性たちの中に、山下さんが一人いらっしゃいます」

Jリーグの審判163人のうち、プロ契約を結ぶのは18人。そのエリートの中でたった1人の女性が、山下さんです。

他の男性審判と変わらず、ハードなトレーニングをこなしています。今回なんと、山下さんはワールドカップ初の女性審判として選出されました。

安藤アナ:「カタールW杯、選出おめでとうございます」

山下さん:「ありがとうございます」

安藤アナ:「自分がワールドカップのピッチに立つって、想像できましたか?」

山下さん:「まさか。まさか、してなかったです」

安藤アナ:「(選出を)どのように、知らされたんですか?」

山下さん:「オーストラリアの審判員の友人からメッセージが届きまして。そこに『コングラッチュレーションズ』『ワールドカップ、おめでとう!』ってメッセージが来て。『何言ってんの?』と返したんですけど。それで自分で調べて、リストに名前があって。それで知りました」

安藤アナ:「自分で調べなかったら、分からなかったかもしれない」

山下さん:「ずっと、嘘だと思っていたかも」

■W杯に向け努力してきた“スピード”

幼いころから、選手としてサッカーをプレーしてきた山下さん。大学卒業後から審判員の道へ進み、2019年、1級審判員資格を取得。去年5月には、J3の試合でJリーグ初の女性審判として笛を吹きました。

その当時のインタビューでは、次のように話していました。

山下さん:「(Q.審判員ならではの魅力とは?)(選手として)目指すことのできなかったフィールドに立てる可能性がある」

そして今年9月、国立競技場。女性で初めて、J1の主審を務めました。判定について選手に詰め寄られても、毅然(きぜん)とした態度を貫く山下さん。堂々としています。

女性審判の先頭を走り続けている実績が評価され、今回のワールドカップの審判員に、日本人で唯一選ばれました。

安藤アナ:「世界トップの試合で、(笛を)吹く不安はありますか?」

山下さん:「不安は感じていません。最高峰の大会ではありますけど、サッカーはサッカーなので。審判員として、やるべきことは一緒」

今大会選出された主審候補者は36人で、そのうち女性は3人。実際にピッチに立てるかどうかは、まだ決まっておらず、カタールで実戦練習、フィジカルトレーニング、座学、ディスカッションなどを行い、適正を見て、審判を割り振られます。

安藤アナ:「ワールドカップに向けて、努力してきたことはありますか?」

山下さん:「(ワールドカップは)何が違うかなって思った時に、スピードの差。その中でも、判断スピードの差。頭の中で、こういうことが起こりそうだから、こういうことを予測しようとか。頭の中での判断スピード。そのスピードを少しでも速くしておくこと」

安藤アナ:「でも、エムバペ選手とかが走ってきたら、予想をはるかに超えてきそう」

山下さん:「超えられちゃったら、ちょっと大変ですよね(笑)。予測以外のことが起こる。それが突然起こっても、大丈夫な準備をしておきます」

そんなスピーディーな試合のなかで、90分間余裕を持って判定を行うために、日々あらゆるトレーニングを重ねています。

サッカーの審判が1試合で走る距離は、選手と同様、平均10キロから12キロ。さらに、短い距離を速く走るスプリントを40回から50回程度繰り返すと言われています。

そのため、山下さんが重点的に行っているのが、スプリント練習。男子選手の速いスピードについていかなければならないため、日々のトレーニングは、まるでアスリートです。

■W杯を成功させること「私たちの目標」

そして、国際試合で笛を吹くのに欠かせないのが、試合中や審判どうしのコミュニケーションで使う英語の勉強です。

山下さん:「『Get The Ball』早くボールを取って下さい。拾いに行って下さいって言う時に、『Get The Ball』って言ったりします」

安藤アナ:「結構、強いトーンで」

山下さん:「ちっちゃい声で言ったりもします。もちろん、言い方は色々ですけど」

山下さんの英語ノートには、サッカー用語や、審判ならではの例文がずらりと書かれています。その中には、「意図的に青の選手が、素早くフリーキックを行うことを妨げた」というような、学校の英語の授業では出てこないような文言もありました。

山下さん:「サッカーを英語で表現する審判用語。競技規則にある言葉を使って(英語で)表現する勉強をしています」

安藤アナ:「頭の中でプレーをひたすら予測しながら、審判用語の英語を考えてって。頭がフル回転、足も体もフル回転ですね」

山下さん:「それだと息が詰まっちゃうので、なるべく無意識にできるように準備しています」

世界最高峰の舞台で笛を吹くため、数々の努力を続けてきた山下さん。いよいよ、史上初の女性審判として臨むワールドカップが幕を開けます。

山下さん:「もちろん、プレッシャーもあります。女性が活躍する可能性が広がっていくことが大切。審判員として、審判チームとして、一つになってワールドカップを成功させることが、私たちの目標。それを叶えられるように、頑張りたいと思います」

(「報道ステーション」2022年11月15日放送分より)

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