キングカズ三浦知良55歳プロ38年目も現役「客寄せパンダだとしても求められる場所へ」[2023/01/31 17:05]

三浦知良さん(55)は、今年でプロ38年目。ポルトガル2部のオリベイレンセへの移籍間近ということです。その三浦さんと、松岡修造さんは2011年に対談していました。その時、三浦さんはいつまでやるのですか?という話をしていましたが、あれから12年。今回改めて話を聞いてきました。

■ポルトガルへの移籍「最初“視察”かと思ったら…」

「キングカズ」こと三浦さん。

松岡さん:「海外ですか。今から?55歳さんが!ひと言で言うと、多分おかしいと思いますよ」

三浦さん:「おかしくないんですよ。仕事を続けているだけですから。(所属元の)横浜FCのオーナーがポルトガル2部のチームを買ったので。最初冗談…。オーナーに『(ポルトガルに)行ってほしい』と言われた時に、クラブを視察に行ってほしいのかな?って」

三浦さん:「クラブを見て知ってほしいことかなと思った。なので、『いつか役に立つことがあったらいいですね』みたいなことを返事したら、オーナーが『そうじゃなくて、プレーして下さい』みたいな。55歳。僕のこと30歳と言ってないですよね」

■現役にこだわる理由「情熱と役に立てるという気持ち」

今年でプロ38年目、親子ほど年の離れた若い選手たちと競争を繰り広げてきました。

去年は4部に相当するJFLではあるものの、ゴールも決め、キレキレのカズダンスも出ました。

しかし、近年は活躍できる場が減ってきています。なぜ、そこまで現役のサッカー選手であることにこだわるのでしょうか?

三浦さん:「サッカーをやりたいという情熱と、まだまだ自分が役に立てるんじゃないかっていう気持ちで続けてますね。それで幸いにも、来てほしいクラブがある。やっぱり、その試合に関われない、出られない、ベンチに入っても試合に出れないとか。そういうことがあったりすると、悔しさが10代のころと変わらないですね。『この年だからしょうがない』というふうに思えない」

松岡さん:「思って下さい」

三浦さん:「いや、思えないですね、やっぱり」

松岡さん:「そこは思っていいところじゃないですか」

三浦さん:「去年、僕の兄貴が(所属チームの)監督だったんですよ。兄貴でも、もう顔を見たくないと思う時ありますからね。自分を使わないと。試合が終わって使われなかった時は、自分ももう19歳になっちゃう、自分自身が」

■「客寄せパンダと捉える人も?」 カズの答えは…

55歳になっても、10代のころと同じ悔しさを持ってサッカーに向き合う。そんなカズさんだからこそ、あえて聞いてみたいことがありました。

松岡さん:「僕、一応同世代だから、めちゃくちゃ失礼なこと言いますよ。ものすごい失礼なこと言いますよ」

三浦さん:「いいですよ」

松岡さん:「ある意味、客寄せパンダ的なふうに捉えている人もいるかもしれない」

三浦さん:「多いかもしれませんね。でも、パンダにしかできないですからね、それ。パンダだから人を寄せられるんで。パンダでいいんじゃないですかね。パンダじゃなきゃ誰も来ないっていうことですよね。それだけの価値だっていうことでいいと思います」

松岡さん:「かっこいい…」

三浦さん:「僕はJ1、日本代表の時と同じ準備をしてあそこ(JFL)に行っている。だから、客寄せパンダなんて自分では思っていない。そう思われることも別に嫌じゃないですよ。“それも自分の役割”だと思っていますから一つの」

三浦さん:「去年、JFLという舞台でやったんですけど。まあこういってなんですけど、僕が行くところ、本当に人が集まってくれて」

松岡さん:「ええ」

三浦さん:「ある意味、J2よりも人が多いんじゃないかという時もたくさんありました。僕が行くと、たくさん外でバスを囲んで待っているわけです。何百人という人がね。あれを聞いたらやっぱりカズですよ」

■原点は…したくてもできなかった“ブラジル時代”

例え、客寄せパンダだとしても、求められる場所でプレーしたい。あくまで現役にこだわるその姿勢は40年前、ブラジルでの経験が大きく影響しています。

松岡さん:「15歳でブラジルに行った時に何を求めていたんですか」

三浦さん:「やっぱり、試合に出て、いいプレーがしたいっていうところですね、その時は。そこからはい上がっていくしかないっていう。最初は試合に出られない。ジュニアのレベルでも最初は出れないわけですね。子どもの年代は、ブラジルでは休みも多い。試合の前日向こうは休みなんですよ。あんまり負担を掛けすぎないようにするために」

松岡さん:「練習が休み?」

三浦さん:「休みなんですよ、試合の前日。公式戦でも。試合の次の日も休みなんですよ。試合に関われないと3連休なんですよ」

松岡さん:「最悪ですね、それ」

三浦さん:「そうですよ。もう不安で不安でしょうがないから、(所属チーム以外でも)自分がサッカーできるところを知り合いに聞いて。草サッカーレベルでもいいから、試合をやれるところに参加して。そこが原点にあるんじゃないかと思いますね」

サッカーをしたくてもできなかったブラジル時代があるからこそ、求められる限り現役にこだわるのです。

■サッカーは何を…「チャンスがある限り戦いたい」

去年10月、そんなカズさんがいるからこその特別な試合がありました。

舞台は、4部相当のJFLでは異例の国立競技場。しかも新宿対鈴鹿という普段は数百人しか集まらない試合。なんとJFL史上最多1万6218人のファンが詰め掛けました。

後半31分、カズさんが途中出場を果たすと、この日一番の大歓声。懸命にボールを追い掛けます。求められた場所で、最後まで全力を尽くしました。

松岡さん:「サッカーは何をくれているのか?カズさんに」

三浦さん:「僕はサッカーボールとサッカーシューズがなかったら、ポンコツですからね。だからもう全力でやろうって思いますね。ピッチに立ったら、やっぱりうまくなりたいと思う気持ち。まだうまくなれるんじゃないかという気持ち。まだゴールできるんじゃないかという気持ち。ほとんどうまくいかないことが多くなってますけど。それでもチャンスがある限り、戦いたいなと思いますね」

(「報道ステーション」2023年1月30日放送分より)

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