日本ハム新球場 完成までの裏に“突破力”…仕掛け人「球場をみんなで育ててほしい」[2023/03/28 17:49]

WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が終わり、今週開幕するプロ野球。北海道日本ハムファイターズは、新本拠地がオープン。新球場、ボールパークとは一体どんなものなのか。そこには、強い信念“突破力”が隠されていました。

■固定概念を打破! “世界初”温泉・サウナも

収容人数3万5000人。およそ2年半をかけて、北海道北広島市に完成した「エスコンフィールド北海道」は、日本では初めてとなる開閉式の屋根が付いた全面天然芝の新球場です。

手掛けたのは、北海道日本ハムファイターズ・前沢賢さんです。

前沢さん:「野球好きな方にも見やすい球場なんですけど。(野球と)全く関係ない方にも楽しんでいただけるエリアがたくさんある」

そんな驚きの仕掛けを案内してもらいました。

バックスクリーンがあるセンターにできたのは、レストラン!世界初の『球場で作られた地ビール』が飲めるのです。

レストランの階段を上がると、グラウンドを一望することができ、なんと試合がない日でも365日営業しています。さらに!

前沢さん:「後ろにあるのは、サウナと温泉です」
松岡さん:「え??サウナ?!」

レフトスタンドにそびえ立つ、タワーにはグラウンドを見下ろす天然温泉とサウナが完備。ととのいながらの観戦だなんて聞いたことありません。

試合日は入場券さえ購入すれば、グラウンドを360度囲むコンコースを自由に行き来でき、ご飯を食べるついでに野球を見る、なんてことができちゃうのです。

松岡さん:「なぜ、こうしようと思ったんですか?」

前沢さん:「“野球を観る=座席がある”という固定概念は打破しようということで。座席がない方は、こういった所で座って飲んだり食べたりしながら、野球の雰囲気を味わってもらう」

■ボールパークを“北海道のシンボル”へ

固定概念を打ち破った発想は、球場の外にもありました。

前沢さん:「球場の敷地は32ヘクタールあるんですけど、そこをFビレッジと言っていまして。その中に幼稚園と保育園も設置されています」

球場を中心にマンション、子どもたちの遊び場、ショッピングやグランピングが楽しめる施設なども複合されたボールパークになっているのです。

総工費およそ600億円をかけた「Fビレッジ」は、まさに一つの村のようです。

松岡さん:「“野球を見せる場所というだけじゃ違う”という思いが、皆さんに生まれてきたという感じなんですか?」

前沢さん:「そうですね。まずは野球の近くに色んな人たちが来てもらうこと。それが我々としては重要だなと思っていました。私なんか海外視察行っても、どこ対どこが〇対○で勝ったかなんて覚えていない。だけど、この空間で体験して良かったことはすごく覚えています。一つの経験、価値みたいになっていて」

松岡さん:「なんていう場所なんですか?テーマパークじゃないし…」

前沢さん:「シンボルみたいな」「私は北海道の中で、シンボルという位置付けでいいのかなと思いますし、むしろそうなれたらすごいなって思います」

■完成までの背景に…強い信念“突破力”

ボールパークを、北海道のシンボルへ。今から5年前、そんな計画の舞台に選んだのが、人口およそ6万人の北広島市でした。

しかし、当時は一面に広がる雑木林。札幌の市街地からは40分かかる立地や年間およそ70日しかない試合日以外の運営はどうするのか不安や反対の声も多く上がりました。

松岡さん:「相当説得が大変だったイメージ。そこはどうでした?」

前沢さん:「まさにおっしゃる通りで『できるわけないでしょ』と」

松岡さん:「最初できないよっていう感じ?」

前沢さん:「皆に言われましたよ。『できない』『できない』とたくさん言われましたけど。“やったことがないから、できないって言っているだけですよね?”と心の中で思いつつ、ロジカルに説明をしていく、その積み重ねでした」

ひとつひとつの課題と向き合い、乗り越えていく日々。そこには前沢さんの強い信念がありました。

前沢さん:「何でもかんでもたたけばいいと思っている人たちも増えている。子どもたちに『それはできないよ』『無理だよ』と大人が言っていて。なので、僕は子どもたちに、本当に信念を持って仲間を集めて、真面目に大人が本気を出したら、こういうものが作れるんだというのは、お子さんたちに知ってほしいなと思います」

松岡さん:「言葉にするとどういうものでしょう?」

前沢さん:「突破力だと思います」「いかに打破して突破していくかは、これからもっと重要になってくると思う」

次世代を担う子どもたちへ。毎日、至る所に足を運び、一切の妥協を許さなかった前沢さん。

こうして“できない”と言われた壁を突破してできたボールパークだったのです。

■球場の“人格”は…「皆で育ててほしい」

想像を超えた完成度に、市民の皆さんも胸をふくらませます。

北広島市民:「本当にあそこ何にもなかったの。それがニョキニョキって、楽しみです」「やっぱり誇りに思いますよね。自分たちの市に、こういうデカいのができたのであればね」

ボールパークを誘致した北広島市の市長も、次のように話します。

上野正三市長:「完成が近付くにつれて、ワクワクドキドキ。北海道の発展にもつながるのではないのかと思ってます」

開幕はもうすぐそこ。ボールパーク周辺では着々と交通整備や新駅の計画、ホテルの建設などが進められています。

前沢さんとボールパークは、これからも限界を突破していきます。

前沢さん:「球場そのものにも人格が必要だと思っていて。今、年齢でいうと、たぶん小学校行く前の…。幼稚園生くらいかもしれませんね」

松岡さん:「この人格は選手が育てていく?」

前沢さん:「皆です。選手も、球団職員も、お客さんも、北海道の方、道外の方にも育ててほしい」

(「報道ステーション」2023年3月27日放送分より)

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