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報道ステーション

2023年4月20日 15:45

井上拓真…兄・尚弥と10年ぶり“絆スパーリング” 新王者誕生の裏…知られざる光と影

2023年4月20日 15:45

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 ボクシングのバンタム級で史上初となる4団体統一を果たした、井上尚弥選手(30)。

 今後、階級を上げて戦うため、4本すべてのベルトを返上しました。そのバンタム級で、最初のチャンピオンベルトを手にしたのは、弟の井上拓真選手(27)でした。

 新チャンピオン誕生の裏には、知られざる光と影がありました。

■拓真選手「悔しさは、人一倍ある」

 井上尚弥選手が返上したバンタム級4本のベルト。その最初の1本をつかみ取った、井上拓真選手。

 試合後すぐ、兄弟でインタビューに応じてくれました。

 尚弥選手:「このバンタム級のベルトを井上家に持って帰ってきてくれと」
 拓真選手:「ほっとしてます」

 拓真選手のボクシング人生は、まぶしすぎる光との戦いでもありました。

 圧倒的な強さで、輝きを放ち続けている兄の尚弥選手。拓真選手は、スポットライトを浴びる兄の背中を見つめてきました。

 拓真選手:「悔しさは、人一倍ある。他の選手と比べられるわけじゃなく、身近な兄弟で比べられるので。その悔しさは、ずっと小さい頃からありましたね」

 そんな弟を兄は…。

 尚弥選手:「物心がついた頃からボクシングやっていて、その頃から同じ目標に向かって走っていってる。気持ちも、分かり合えていると思う」

■兄弟の人生分けた“運命の一日”

 少年時代から共に、世界チャンピオンを目指しながら、違う道のりを歩んできた2人。兄弟の人生を分けた、運命の一日がありました。

 4年前、兄弟で同時に臨んだ初めての世界戦。正規王者のベルトに挑んだ拓真選手。しかし、4ラウンドにダウン。その後、立て直すも12ラウンド判定負け。

 この直後の試合、世界のど真ん中に躍り出たのが兄の尚弥選手でした。目の上をカットしながらも、12ラウンドの激闘を制します。

 この日を境に、4団体統一への歩みを一気に加速させた尚弥選手。一方、拓真選手には、世界戦の機会が訪れることはありませんでした。

 拓真選手:「悔しさはずっと。あそこで勝てていたら、見える景色も全然違う。だから、もう負けたくない」

■封印していた…“兄弟スパーリング”

 大きく開いた兄との距離を少しでも縮めるために、もがいた日々。

 そんな拓真選手に、覚醒の時が訪れます。きっかけは、兄との“絆のスパーリング”でした。

 尚弥選手:「自分が一番そばで見てきて、拓真の実力も分かってるし、弟だし。あの時期に、スパーリングをやろうとは言いましたけど」

 尚弥選手、4団体統一戦の約2週間前。兄弟が、リングへと向かいます。

 本気でスパーリングを行うのは約10年ぶり。実は、感情のぶつかり合いを避けるため、長年、兄弟でのスパーリングを封印していたのです。

 それは兄から弟へ、心をつなぐ時間でした。

 尚弥選手:「技術もそうですけど、一番は気持ちですかね。『自分がメインでやってるんだ』って気持ちが、大事だと思うので」

■兄が見た景色に…ついにたどり着く

 より強く、自分に自信を…。その答えを出す日がやってきました。

 兄が返上したバンタム級のベルトを賭けた試合。拓真選手にとって、3年半ぶりの世界戦です。

 尚弥選手:「自分の試合より緊張します。勝ってくれと」

 すると5ラウンド、相手のひじが顔面を襲います。そんな状況でも拓真選手は…。

 拓真選手:「兄(尚弥)がカットしているのを見てきたので、焦りはなく、冷静にいけましたね」

 ここから、相手の猛攻を耐え凌ぎます。

 尚弥選手:「弟(拓真)が、もう見切っている。ジャブとワンツーでダメージを与えていく」
 
 拓真選手:「(兄の声が)聞こえてましたね。ワンツー当たるんだから打てって」

 ドクターストップの可能性もあるなかで、恐れず前へ。兄が見た景色に、ついにたどり着きました。

 拓真選手:「(Q.お兄さんの背中に少し近づいた?)近づいたとは言えないですね、まだまだ。兄のハードルは高いので、それでこそ自分も強くなれている」
 
 尚弥選手:「本当によくやったと。ここからがスタート。頑張ろう」
 
 拓真選手:「頑張ろう」

(「報道ステーション」2023年4月19日放送分より)

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