大谷翔平が操る変化球「スイーパー」 特徴は“速さ&曲がり幅の大きさ” [2023/05/01 07:50]

「スイーパー」という言葉、最近よく耳にするかと思います。今年に入って、アメリカのメジャーリーグで本格的に使われ始めた言葉で、今、日本でも急速に広まっています。

スイープ、つまり日本語では「掃く」という意味です。ホームベースの端から端まで、ひと掃きするように大きく曲がる新しい変化球。野球が変わるかもしれません。

■今季から“新球種”として登録 特徴は?

WBC決勝。大谷翔平選手がマイク・トラウト選手から三振を奪った、この一球。まるで漫画のように“ぎゅん”と曲がった変化球こそ、今話題の「スイーパー」です。

WBC以降、日本で広く知られるようになった、この「スイーパー」。実は、メジャーリーグでは近年トレンドになっていて、その特殊な軌道が故に、今シーズンから“新しい球種”として登録された変化球なのです。

その特徴とは?メジャーリーグの投球分析を行うアナリスト、デビッド・アドラーさんに聞きました。

アドラーさん:「スイーパーはスライダーの一種で、普通のスライダーよりも大きく曲がる変化球です」

スライダーとは、ピッチャーの利き腕と反対方向に曲がっていく変化球で、ストレートと同じような軌道から縦や斜めに曲がっていくのが特徴です。

では、スイーパーは?

アドラーさん:「スイーパーは大きく横に変化し、縦にはほとんど動きません。スイーパーの平均球速は時速134キロ、横方向への変化が38センチです。ホームベースの幅は43.2センチですが、スイーパーはそれ以上の変化をすることもあります。ホームベースを横切るような変化です」

ほとんど落ちず、真横に曲がるのが特徴です。

スライダーとの曲がり幅を比べると、その差は23センチ。この横の曲がり幅こそが、スライダーとスイーパーを分ける一つの基準になりました。

■今季最高のスイーパー“横の曲がり53センチ”

では、スイーパーの基準値と比べ、大谷選手が投げるスイーパーはどんな動きをしているのでしょうか。

アドラーさん:「大谷の時速137キロや時速140キロのスイーパーは、一般的なスライダーと同じくらい速い。それ以上に曲がりが大きいので、バッターはその変化に反応する時間がなく、まるでボールが自分に向かってくると思ってスイングするが、遠ざかっていってしまうので反応できない。だから、大谷のスイーパーは効果的なんです」

実際に通常のスイーパーと比べてみると、大谷選手のスイーパーは球速が速く、曲がり幅が、より大きいことが分かります。

そしてアドラーさんが選ぶ、今シーズン最高のスイーパーがこちらです。曲がり幅、なんと53センチ。すごい変化です。

実際にWBCで大谷選手のスイーパーを受けた、ソフトバンクの甲斐拓也選手は、次のように話します。

甲斐選手:「下に落ちてこないというか、そのまま吹き上がって曲がっている。やっぱりバッターは、ボールの下を振っている。中国代表のバッターが腰を引くぐらい。メジャーのバッターは、バットの軌道もちょっと日本とは違いますし、打つポイントも(キャッチャーに)近い。なので、そういった意味では下に落ちるよりも吹き上がる球は有効になってくると思う」

バッターにとっても、キャッチャーにとっても未知の変化。それが大谷選手のスイーパーなのです。

■MLBで平均的な「スイーパー」を再現

その「大谷スイーパー」。日本で再現できる場所があるといいます。

群馬県のスポーツ施設。野球解説者の五十嵐亮太さんと取材に行ってきました。

使用するのは、ピッチングマシーン。3つある車輪の回転速度を調整して再現します。

まずは、MLBで平均的な「スイーパー」。平均球速は時速134キロ、横の曲がりは約38センチです。

五十嵐さん:「本当に横に曲がる感じですね。右打者のインコースからホームベース約一個分。やっぱり横の曲がりが大きいです。本当はもう少し沈むんですよ」

また五十嵐さんは、「曲がる場所」についても気になるポイントを見つけました。

五十嵐さん:「バッターに近付いてから曲がり始めているんじゃないかなって思う。打者は判断できないですよ。バッターはストレートだと思う。スイープは掃くっていう意味だから、ストレートで来たのが掃かれている」

打者の近くで変化しているから、ストレートに見えるといいます。

■大谷選手のも再現「ストレートとの判断つきにくい」

それでは、大谷選手の「スイーパー」を再現してみます。WBC決勝で、トラウト選手に投じた一球。球速は時速140キロ、横の曲がりは約43センチです。

五十嵐さん:「伸びあがってますね」「(Q.スピードは?)スピード速いです」「(Q.曲がりはどう変わってました?)大きくなってますね。さっきよりもストレートに見えるけど、曲がり幅が大きいので、これバッターとしては判断するのも難しい」

実際に、打者の目線でも立ってみると…。

五十嵐さん:「これは正直分からないです。ストレートに見えます。バッターどうなんだろう、変化球空振りしたという気持ちになるのかな」

五十嵐さん:「(Q.平均的なものと、大谷投手との違いは見てどうでした?)速さが明らかに違いますよね。僕の感覚で言うと、ほぼほぼストレート。ストレートが横にずれてる感じ。やっぱり速いから、ストレートとスイーパーの判断もつきにくいと思います。大谷100マイル、時速160キロ投げられるからこそ、このスピンも強く掛けられる。この速さで、これだけ横に曲がるのは技術的にかなり難しい。速いボールを投げられないと、このボールは投げられないと思います」

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