「僕よりシャチに近い」競泳・本多灯 “カミナリ落ちた”敗戦から得た進化のヒント[2023/05/30 18:05]

「世界水泳福岡」開催まで、2カ月を切りました。

東京オリンピックで銀メダル、2022年の世界水泳では銅メダルを獲得した本多灯選手(21)は、日本の男子競泳界を背負う存在です。

松岡修造さんが東京オリンピック後に話を聞いた際、「目指しているのは、シャチのような泳ぎ」だと語っていた本多選手。

今回、松岡さんが話を聞くと、シャチを目指し進化している本多選手が見えてきました。

■目標は「200メートルバタフライ」で金メダル

今月20日、モナコで世界水泳の前哨戦となる国際大会が行われていました。

200メートルバタフライ決勝。優勝したのは、本多灯選手でした。

今月のヨーロッパ遠征。この種目2大会に出場し、2連勝です。

レースの後、話を聞いてみると、驚きの宣言が飛び出しました。

松岡さん:「灯さんは、世界水泳福岡で、何を目指していますか?」

本多選手:「もちろん金メダルです」

松岡さん:「金いく?種目は?」

本多選手:「200メートルバタフライです」

松岡さん:「100%、僕は応援しますよ」

本多選手:「お願いします」

松岡さん:「ただ、金メダルは相当タフだなっていう気もします」

本多選手:「できます、僕なら」

■本多選手の前に立ちはだかる“2人のライバル”

実は200メートルバタフライは、超ハイレベルなのです。

前回の世界水泳で灯さんは銅メダル。上には、2人も選手がいます。

1人がハンガリーのクリシュトフ・ミラーク選手。東京オリンピックの金メダリストです。前回の世界水泳では、本多選手と差をつけて、世界新記録で優勝しました。

そしてもう1人が、フランスのレオン・マルシャン選手です。東京オリンピックから2秒以上もタイムを上げて2位に入りました。

本職は個人メドレーですが、バタフライでも急成長しています。

マルシャン選手の登場を本多選手は、どう思っているのでしょうか?

本多選手:「カミナリが落ちた」

松岡さん:「カミナリ?」

本多選手:「えっ!?ていうか。僕が(マルシャン選手より)前にいると思ってたんですけど。タイム的には0.何秒の差だったんですけど、結果としては、ものすごく後ろにいたので、カミナリが落ちた感じです」

松岡さん:「落ちたんですか?もし僕が選手だったら、“ミラーク、マルシャンには敵わない”って思っちゃうかもしれないです」

本多選手:「いや、それは正直一回も思ったことなくて」

松岡さん:「ない!?」

本多選手:「ほとんどの人が思っていると思うんですけど、今の僕では勝てない。だからといって、諦める理由にはならない。自分が一番だっていうのを見せつけたい」

■ライバルは「僕よりシャチに近い存在」

圧倒的な差があっても、諦めません。灯さんには、速くなれるという確信がありました。

ヒントになったのは、マルシャン選手の泳ぎです。

本多選手:「僕より、シャチに近い存在ではある」

松岡さん:「むこうが、シャチ!?」

本多選手:「それは認めます、正直。角ばってないって言い方がいいんですけど、スムーズに泳ぐのは、見てて本当に美しい」

哺乳類最速で泳ぐシャチ。本多選手は以前から、そのスムーズな泳ぎを理想としていました。

松岡さん:「マルシャン選手の映像を見る?」

本多選手:「めっちゃ見ます」

松岡さん:「めっちゃですか?」

本多選手:「今まで理想の泳ぎって、自分の頭の中だけにしかなかったので。それが、実際にお手本に近いものがあると、すごくイメージがわきやすい。より明確になっていくことは間違いない」

マルシャン選手からヒントを得た理想の泳ぎを再現してくれました。

以前の本多選手は、手でかいて、キックの順番です。本人曰く、「キックのタイミングが手のストロークに合ってない」とのことです。

そして、目指している泳ぎでは、手のかきとキックが同時。そして戻す時も同時です。タイミングを合わせて、全身を連動させるイメージだといいます。

本多選手:「連動したら、前に進む力が働きますし、水が後ろにいく感じをすごく感じる」

松岡さん:「前に出ていく感じ?」

本多選手:「飛んでいるイメージ。水の中から、ぐわっと」

しかし、理想の泳ぎを手に入れるためには、強化しなければいけないことがありました。

本多選手:「僕はキックが大事だと思っている。キックから力を伝えて上半身につなげる。何回も強いキックを打ち込める持久的な筋力もつけられるように、まずはシンプルにキック強化から始めて」

これまで以上に、下半身を追い込みます。さらに、プールでは…。

本多選手:「すごく、はじめはしんどい。今までやってきたことがなかったので、その泳ぎを維持するのがきつい。頭も使うので、ちゃんと考えないと、すぐ崩れちゃったり、意識し続けるのは大変です」

こうした練習で、理想の泳ぎを追い続けます。

■カミナリの“お返し”はレーザービーム?

世界水泳から半年後のジャパンオープンでは、東京オリンピック以来初となる自己ベストを更新。さらに今月、モナコでも手応えを感じていました。

本多選手:「試合でやるのは、一番効果があること。ストレスだったり、精神的に負荷もかかるし、身体的にも疲れてくる。モナコでできたことは収穫。また一段階、もう一段階レベルアップできるように、トライ&エラーをしながら、世界水泳福岡に向けていきたい」

松岡さん:「そうなった時に世界水泳福岡。マルシャン選手には、前回の世界水泳でカミナリを落とされた。次、どうしますか?」

本多選手:「レーザービーム当てます(笑)」

松岡さん:「レーザービーム(笑)?それぐらい、やり返すって感じですか?」

本多選手:「はい。負けて、色んなことを学んだと思っているので。“お返し”してやるのも礼儀。オリンピックで1番をとるのが夢。そのために、世界水泳福岡を僕色にやり通していきたいと思っています」

(「報道ステーション」2023年5月29日放送分より)

こちらも読まれています