柔道・角田夏実 “必殺技”巴投げと腕ひしぎ十字固め…悲運から学び世界選手権3連覇[2023/06/20 13:38]

柔道でパリオリンピック代表濃厚と言われている3名。まずは世界大会で勝ち続けている阿部一二三さん(25)と妹の詩さん(22)。そして、世界選手権で3連覇中の角田夏実さん(30)です。

角田さんに話を聞いてきました。そこで角田さんにしかできない技をやってもらいました。

■角田式巴投げ 特徴は“両足でかける”

先月の世界選手権。3大会連続オール一本勝ち。

圧倒的な勝ち方で金メダルを獲得した角田さん。彼女には、相手が分かっていてもかかってしまう“必殺技”があります。

松岡修造さん:「角田さんの武器は何なんですか?」

角田さん:「巴投げと寝技の関節技」

巴投げは、自分の体を後ろに倒しながら、片方の足を蹴り上げて投げます。

ただ、角田さんの巴投げは違います。実際にかけてもらいました。

角田さん:「高い高いするような感じで持ち上げます」

松岡さん:「コントロールできない」

角田さんの巴投げは、両足でかけるのが特徴なんです。

力づくで降りようとしましたが、全く動けない。どうしてですか…!?

角田さん:「(両足で修造さんを乗っける)足を乗っけた時に…足の指を引っ掛けると、相手の足が横に出せない」

松岡さん:「出せないです」

角田さん:「っていうのがあるんで…。(松岡さんを持ち上げて)コントロールできるように握っています」

松岡さん:「高い高―い!すごい…!子どものころを思い出した」

■巴投げのすごみ倍増…追撃の「腕ひしぎ十字固め」

足の指が長く、手のように扱えるからこそ、両足の巴投げが生かせるのです。

しかし、この必殺技。世界中の選手が警戒しているなか、なぜかかるのでしょうか?

松岡さん:「みんな巴投げがくるって構えているわけですよ。でもかけられるんですよ」

角田さん:「その辺は、ちょっと自信があるかもしれないですね。巴投げは何回かかけて、相手の受け方でかけ方を変えていく。最初の1、2発はかからないことが多い。そこから(相手の)受け方で変えていって何発目かに決まる。巴投げのレパートリーは誰よりもあると思います」

巴投げにどう入るか。その“レパートリーの多さ”で相手の対策を上回っているのです。

さらに巴投げのすごみを倍増させているのが、もう一つの技。それが腕ひしぎ十字固めです。

その背景には、柔道以外の競技が関係していました。

大学時代から取り組んでいるグラップリング。関節技や絞めが中心の打撃のない格闘技で必殺技を磨いています。

独特な巴投げと追撃の腕ひしぎ十字固め。これが3大会連続すべて一本勝ちの方程式です。

■悲運からの学び“自分自身にプレッシャーを”

今や世界で敵なしの角田さん。しかし、意外にもオリンピックとは縁のない人生でした。

角田さん:「なんで負けちゃうんだろうって自分で思っていて、何が悪いわけでもなく。ここで勝てばという時に勝てなくて」

元々は、1階級上の52キロ級。2017年世界選手権で銀メダルを獲得し、東京オリンピックの有力候補でした。

しかし、強力なライバルが現れます。まだ高校生だった阿部詩さん。

2018年11月、東京オリンピックを左右する直接対決を迎えます。

自分の良さを全く出せなかった角田さん。肝心な試合で詩さんに敗れ、東京オリンピックは絶望的となりました。

どうしてもオリンピックを諦められない角田さん。わずかな望みをかけ、1階級下の48キロ級に転向します。

しかし、2019年11月の国際大会。またも肝心なところで敗退してしまいました。

なぜ、いつも最後の最後で負けてしまうのでしょうか?

角田さん:「前までは楽しく柔道をする。『勝てたらいいな』だったのを。『ここを勝たなきゃいけない』というプレッシャーを自分にかけるようにしました。『絶対に勝たなきゃいけない』という思いで試合に挑むことで調整期間も変わるのかなと思って。今回の世界選手権もそうだった。『もうやることなくなっちゃった』『どうしよう』みたいな」

松岡さん:「もうそこまでやりきったわけですね」

角田さん:「『あと何をしよう』って」

自分自身にプレッシャーをかけ、練習から一切の妥協をしなくなりました。

■角田さんが辿り着いた考え「マイナスをなくしてプラスに」

そんななか迎えたのが、先月の世界選手権。

優勝すればパリオリンピック出場がほぼ決まるなか、ついに負けられない大会で結果を残したのです。

そこには、苦労を重ねてきた角田さんだからこそ、辿り着いた考えがあります。

角田さん:「前はマイナスをプラスに変えようとして、ちょっと自分をだましてプラスに。基本的に考えがネガティブ。でもネガティブな部分を消せば消すだけ、プラスにはいかないがマイナスがなくなる。プラスしかないという面を自分は作りたくて」

松岡さん:「そういう捉え方ですか?」

角田さん:「マイナスをなくしたらプラスしかない」

(「報道ステーション」2023年6月19日放送分より)

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