トム・ホーバスHC×栗山英樹 バスケW杯を前に対談 チーム作りの共通点「信じる力」[2023/07/04 17:17]

バスケットボール男子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチと侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹さんの対談です。日の丸を背負うチームを率いる難しさを知る2人の指揮官。チーム作りには、共通の思いがありました。

■チーム作りの共通点「信じる力」

WBCで監督として侍ジャパンを優勝に導いた、栗山英樹さん。日本代表を率いた経験を持つ2人の対談が、初めて実現しました。

ヒロド歩美アナウンサー:「ファーストインプレッションはどうですか?」

ホーバスヘッドコーチ:「哲学はすごく似ていると思います」

栗山さん:「魂の部分は誰よりもチームを勝たせてあげたくて、ずっと人生それを考えてきたというのは相通ずる。そうですよね、ホーバスさん、これですよねみたいな」

出会う前から、似た部分をお互いに感じ取っていた2人。その言葉の通り、2人のチーム作りには“ある共通点”があります。

栗山監督(当時):「何が起こっても、僕は選手を信じる」
ホーバスヘッドコーチ:「信じて、信じて、このバスケットを信じて」

2人は様々な場面で繰り返し、「信じる」という言葉を口にしてきました。

栗山さん:「僕の場合は、いいプレーヤーではなかった。正直に自分が思っていることを包み隠さず、『信じている』とか『愛している』とか、日本人的には」

ホーバスヘッドコーチ:「言いにくいですよね」

栗山さん:「言いにくいですよね、面と向かうと。でも、僕はそう思っているから、ぶつけちゃうんです。選手は『大丈夫か、このおっさん』とか思うかもしれないけど、『信じる』しか僕のやり方がなかった」

ホーバスヘッドコーチ:「僕は無理なことをコーチングしない。ダンクできない選手に『ダンクやって』とは言わない。できることをコーチングする。だから僕は『信じて下さい』(と言う)」

「人」が「言う」と書いて「信じる」。2人は、積み重ねこそが大事だと言います。

ホーバスヘッドコーチ:「『信じている』という言葉は深いです。口だけで言っても聞き流してしまう。でも『信じる』というのは、毎日いろいろ話して毎日作るんですよ」

栗山さん:「自分が“どれだけ信じているか”が出てしまうので、ですよね?」

ホーバスヘッドコーチ:「そう」

■栗山さん「選手自身に自分を信じてほしい」

どれだけ信じているか。ホーバスヘッドコーチは、WBCで栗山さんが見せた、ある選手に対する信頼に感銘を受けたそうです。それが、準決勝のメキシコ戦でサヨナラヒットを放った、村上宗隆選手(23)です。

ホーバスヘッドコーチ:「(村上は)WBCで調子があまり良くなかったが、栗山さんが全然彼にギブアップせずに信じたみたいな感じで、素晴らしいと思った。最後に彼はちゃんと打ったじゃないですか」

栗山さん:「そう言っていただけるとうれしいですね。調子が悪い時もある。ただ優勝するなら、どこかで彼が打たなきゃいけない、というのは決めていたので。絶対にそこは村上を信じきれた」

ホーバスヘッドコーチ:「あのくらい監督が信じてるんだったら間違いない。(調子は)戻ってくるかなと思った、素晴らしかった」

栗山さん:「もちろん自分も選手を信じているが、選手自身に自分を信じてほしい。そうすると、自分の本当の部分が出る」

監督が選手を信じ、選手も自分を信じる。それが自信となり、侍ジャパンは優勝まで駆け抜けました。

■“何が起きても揺るがない”チーム作りを…

一方、栗山さんは東京オリンピックで女子代表を銀メダルに導いた、ホーバスヘッドコーチのチーム作りに興味深々でした。

栗山さん:「ホーバスさんが(女子代表で)あれだけのチームを作った後に、どんな男子のチームに進化するのかすごく楽しみです」

ホーバスヘッドコーチ:「男子のバスケットボールも女子と一緒。速いバスケット、足が止まらない、諦めない。1年半前そういう話もした、うちのスタイルはこれ」

栗山さん:「(軸があると)全員がやりやすい」

体格に劣る分、スピードやアグレッシブなディフェンス、3Pシュートを重視するバスケット。

スタイルが浸透するにつれて結果も出始め、日本代表キャプテンの富樫勇樹選手(29)も、手応えと信頼を口にします。

富樫選手:「世界に勝つために、こういうバスケットしなきゃいけない。それをしっかり信じてやっていきたい」

ホーバスヘッドコーチ:「選手がうちのバスケットを分かってきて、選手たちもいいコミュニケーションをとって、いい関係を作って自信をつけた」

先週、八村塁選手(25)のW杯出場辞退が発表されましたが、ホーバスヘッドコーチは発足当初から、何が起きても揺るがないチームを目指してきました。

ホーバスヘッドコーチ:「1年半、八村と渡邊雄太がほとんどいなかった。今のメンバーで一番いいチームを作りたいと思ってきた。いいチームを作って、八村・渡邊がアジャストするようなチーム。チームが八村・渡邊にアジャストするのはおかしい」

栗山さん:「誰かがけがするかもしれない、いないかもしれない。チームのベースが変わったらおかしくなる」

ホーバスヘッドコーチ:「間違いないです」

■栗山さんからバトン ホーバスHC「日本のために頑張ります」

W杯開幕まであと53日。ホーバスジャパンは強豪との強化試合を経て本番に臨みます。

ヒロドアナ:「サッカーのW杯があり、そしてWBCがあって、そこからのバスケットボール」

栗山さん:「森保監督のサッカーから僕が受け継いで、それをホーバスヘッドコーチに渡しました!」

ヒロドアナ:「バトンが今渡りました」

栗山さん:「プレッシャーかけます!ぜひ日本のために」

ホーバスヘッドコーチ:「日本のために頑張ります」

栗山さん:「よろしくお願いします」

ホーバスヘッドコーチ:「ありがとうございます」

栗山さん:「ありがとうございます…終わらせちゃった、ごめんなさい」

ヒロドアナ:「大丈夫です、もう収録時間が終わりだったんです」

ホーバスヘッドコーチ(対談後):「(Q.いかがでしたか?)楽しかった。色々勉強になった。この道が正しいのかなと思います」

(「報道ステーション」2023年7月3日放送分より)

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