7月14日に開幕する「世界水泳福岡」。世界中から水泳界のスーパースターが集まります。
萩野公介さんが注目している、ルーマニアのダビド・ポポビッチ選手(18)と、フランスのレオン・マルシャン選手(21)を紹介します。
■超人スイマー…泳ぎのイメージは“トンボ”
2001年に開催された「世界水泳福岡」で、6冠の偉業を成し遂げた、イアン・ソープ(当時18)。そんな彼についた異名は“水の超人”。世界に衝撃を与えました。
あれから22年。再び福岡に、世界をわかせる超人スイマーがやってきます。
そのスイマーは、ダビド・ポポビッチ選手です。
去年の世界水泳では、驚異的な泳ぎで200メートル自由形を制すると、続く100メートル自由形でも金メダルに輝き、49年ぶりとなる2冠を達成しました。
さらに、その2カ月後には100メートル自由形で世界新記録を樹立。末恐ろしい18歳、ブレークを果たしたその強さとは…。
松岡修造さん:「君は、水をどのように感じている?」
ポポビッチ選手:「水の上を飛ぶようなイメージ。昆虫のトンボって知ってる?」
松岡さん:「トンボ?」
ポポビッチ選手:「トンボが水面ギリギリに飛ぶところを想像する。それが、僕の捉え方だ」
この“トンボのような感覚”とは、一体どういうことなのでしょうか?
トンボは、水面近くを飛行します。
ポポビッチ選手は、そんなトンボをイメージして、水面近くで体をフラットに泳いでいます。水面近くは水の抵抗を受けにくいため、スピードアップにつながります。
さらに、ポポビッチ選手の泳ぎの特徴の一つとして、「手のかき方」にも注目です。水中で伸ばした手の先に、泡がありません。
一般的なスイマーは、水中で手に泡がついてしまうことがあります。そうすると推進力が落ちます。水を捉えず、空気をかいていることになるからです。
しかし、ポポビッチ選手の泳ぎの場合は、手に泡がつかないことで空気をつかまず水をつかんでいるため、推進力につながっているのです。
■国をも動かす活躍「泳ぐことが使命だと感じた」
ポポビッチ選手は、たった1年で、世界に名を轟かせる存在となりました。
松岡さん:「結果を残したことで、人生は変わった?」
ポポビッチ選手:「ここ1年半くらいの間に、急激に変わった。ルーマニア国内で大騒動になったんだ」
ポポビッチ選手の母国・ルーマニアは、水泳が盛んではないのですが、世界水泳を終え凱旋すると、なんとレッドカーペットでのお出迎え。ルーマニア政府からは、およそ2800万円もの報奨金が贈られました。
そんなヒーローに憧れ、子どもたちの通う水泳教室ではキャンセル待ちが続出しているといいます。
ポポビッチ選手の活躍は、国をも動かしたのです。
ポポビッチ選手:「僕が五輪や世界水泳でタイトルをいくつ獲得しても、それでは僕が満たされるだけだ。でも、実際に子ども達や、あらゆる年齢の人々が水泳を始めるのを見て、泳ぐことが僕の使命だと感じた」
■“水の怪物”も強みに…マルシャン選手の武器
そして、もう一人の“超人スイマー”も福岡にやって来ます。
去年の世界水泳、個人メドレー2冠に輝いたフランスのレオン・マルシャン選手です。
北京オリンピック8冠を成し遂げた“水の怪物”マイケル・フェルプスの持つ世界記録に、0秒44まで迫りました。
萩野さんは、その強さの秘密を探るべく、マルシャン選手の練習拠点があるアメリカに行きました。
そこで気になったのが、水に潜って、息継ぎなしで泳ぐ「潜水」です。
マルシャン選手:「水中の泳ぎの強化で、僕は変わりました。自分が水の中で誰よりも前にいて、顔を上げた時にトップにいる。それが最も意識していることです」
マルシャン選手が鍛えていたのは「潜水キック」。ターンの際、壁を蹴って得られるスピードをいかすテクニックです。
実は16年前、松岡修造が怪物・フェルプスのもとへ訪れた際、フェルプスも自身の強みに挙げていたのが、潜水キックでした。
フェルプス選手(当時):「レースの作戦で最も重要だったのは、水中での戦いだった」「(Q.水中での戦いというと…?)潜水キックだ」
怪物と同じこの武器こそが、マルシャン選手の強さの秘密だったのです。
萩野さんは、マルシャン選手の“キックの柔らかさ”に衝撃を受けたといいます。
そのキックが生きたのが、去年の世界水泳の400メートル個人メドレー決勝です。体力が一番きついラスト50メートルのターンでは、およそ10メートル近く潜水して、一気に差をつけました。
2位の選手と比べてみても、5メートルほど潜水している距離に差があります。
水の抵抗が少ない水中で距離を稼ぐ、マルシャン選手の大きな武器です。
萩野さん:「マルシャン選手だったら、もっと速い記録で泳げるのでは?」
マルシャン選手:「最古の世界記録を超えられたら光栄だし、最高の気分だろう。最近、若い選手が壁を破り前に進んでいる。僕も同じように記録の壁を破りたい。そのために毎日、自分を追い込んでいます」
(「報道ステーション」2023年7月10日放送分より)
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