寺川綾が水中で見た“秘密”…2種目で世界新 カナダ代表・16歳女子選手の“向上心”[2023/07/14 19:57]

 14日に開幕した「世界水泳福岡」。日本人選手の活躍も期待されますが、海外の“ウルトラスイマー”たちにも注目です。

 元競泳選手の寺川綾さんが、今大会で注目しているのが、カナダのサマー・マッキントッシュ選手(16)。圧倒的な強さを誇る彼女を取材しました。

■代表選考会でぶっちぎり優勝…“史上初の快挙”も達成

 今年3月に行われた、「世界水泳」のカナダ代表選考会。400メートル自由形のレースで画面に映るのは1人だけです。なんと、他の選手たちを圧倒的に引き離しているのです。

 ぶっちぎりの優勝を果たし、世界新記録をマークしたのが、マッキントッシュ選手です。

 さらにこの4日後、400メートル個人メドレーに出場したマッキントッシュ選手は、再び “一人旅”状態です。

 400メートルの自由形と個人メドレーの両立は、体力的に厳しいはずなのですが、圧倒的強さを見せつけ、優勝。自身2つ目の世界新記録をマークしました。

 この2種目での世界記録樹立は、史上初の快挙です。

■記録更新見据える16歳…幼いころから培われた“向上心”

 16歳にして、なぜこんなにも強いのか。その秘密を探りに、寺川さんはアメリカ・フロリダへ行きました。

 寺川さん:「自身の成長について、どのように感じていますか?」

 マッキントッシュ選手:「世界新を出した泳ぎはとても誇りに思い、非常に満足しています。今は福岡の世界水泳に向けて準備しています。少しでもタイムを縮められるように集中しています」

 常に記録更新を見据える末恐ろしい16歳。その飽くなき向上心は、幼いころから培われたものでした。

 マッキントッシュ選手:「フィギュアスケート、乗馬、サッカー、体操など、興味があったたくさんのスポーツをやっていました。水泳は、“誰が最初にタッチするのかを競う”。そのシンプルさが気に入って、最終的に水泳を選びました。競い合うのは楽しくて、スタート台に立つと、いつもアドレナリンが出ます」

■強さの秘密は「キック」 寺川さんが水中で確認

 そんなマッキントッシュの練習が始まると、寺川さんも水着に着替え、準備万端です。

 寺川さん:「上からは何度もレース映像とか見たけど、水の中での動きがどうなっているのか、自分の目でしっかり見てみたい」

 まずは、世界記録を塗り替えたばかりの自由形を水中からじっくり観察します。

 世界女王の泳ぎを目の当たりにした寺川さんは、次のように話します。

 寺川さん:「(自由形の時、)頭の位置が高くて、なおかつお尻の位置も高い位置をずっとキープしている。彼女は、キックがすごく強いんですけど、その打ち込むキックももちろんなんですが、打ち込むキックより、アップさせるほうのキックが強い」

 寺川さんが注目したのは“アップキック”と呼ばれる、水中から水面方向に蹴り上げるキック。

 通常は水中に打ち込むダウンキックにより下半身が沈み、水の抵抗を大きく受けてしまうなか、マッキントッシュ選手の場合は…。

 寺川さん:「アップキックが強いと、体を上に持ち上げることができるので、より高い位置でフラットな姿勢で泳ぐことができるんです。抵抗を生まずに推進力を生むキックができているなというのが、水中で見て分かりました」

 実際の400メートル自由形のレースでは、隣の選手は下半身が沈んでいるのに対し、マッキントッシュ選手は、お尻が水面より高い位置にあるのが分かります。

 強いアップキックによってフラットな姿勢を保ち、抵抗の少ない泳ぎをしているのです。

 さらに、去年の「世界水泳」で金メダルを獲得したバタフライも、キックに特徴がありました。

 寺川さん:「速い選手でも、キックを強く打ち込むと、その分(体が)上にあがってしまう。彼女の場合は前に進むようなキック。上体が立ち上がらず、フラットな姿勢のまま泳ぐ。体幹が強いのと、お尻でしっかりと支えているのが大きな特徴」

 マッキントッシュ選手の強さの秘密。それは、より効率的に推進力を得て泳ぐためのフラットな姿勢を保つ“キック”にありました。

■マッキントッシュ選手「世界記録更新にたどり着きたい」

 ついに迎える「世界水泳」。福岡の地で、どんな泳ぎを見せてくれるのでしょうか。

 寺川さん:「今回の『世界水泳』というのは、どんな位置付けですか?」

 マッキントッシュ選手:「来年のパリ五輪や、その先への足掛かりとなる大きなチャンスなので、東京五輪以来の日本がすごく楽しみです。日々の練習を楽しみながら頑張って、世界記録更新にたどり着きたいです」

(「報道ステーション」2023年7月13日放送分より)

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