甲子園史上初 “女子マネージャー”ノッカー「1本のバットに3年間の思い詰まってる」[2023/08/03 18:59]

今月6日、いよいよ夏の甲子園が開幕します。地方大会では全国3744校が熱戦を繰り広げました。そして今回紹介するのは、選手と共に戦った1人のマネージャーです。

■甲子園史上初 女子部員ノッカー

毎年、夏には阿波おどりでにぎわう徳島県徳島市。

今回、ヒロド歩美キャスターが向かったのは徳島県立城東高校です。

守備練習が始まると、ノックを打つのは、3年生のマネージャー・永野悠菜さんです。

ヒロドキャスター:「すごくかっこいい!全部が絶妙でミスショットがないですよね」

今年3月、部員13人ながら21世紀枠で春のセンバツに初出場しました。

永野さんは、女子部員として史上初めて甲子園でノッカーを務めました。

ヒロドキャスター:「どういうきっかけでノッカーになったんですか?」

永野さん:「選手がノックを打っていて、私がボールを渡していたんですけど、その時打っていた選手が『きょう1球もノックを受けていない』ってボソッと言ったのを聞いて、(自分が)打てたら選手の練習時間が増える」

■「いないと困るマネージャーになりたい」

部員が少ない中、「もっと選手の力になりたい」という思いからノックバットを握りますが…。

永野さん:「やっぱりノックって簡単じゃないし、運動もしていなかったので」

小学校・中学校は音楽に打ち込み、運動経験はなかった永野さん。ノックを始めた当初は、バットに当てることすらままなりませんでした。

ヒロドキャスター:「くじけそうな瞬間はありました?」

永野さん:「何度もありました。自分の居場所に悩んでいたり、本当にチームのためになっているのかなって」

そんな時、支えになったのは、どんなノックでも全力で追い掛けてくれる選手たちでした。

ショート 吉田優選手(3年):「彼女が努力してきたことは知っているので、最高のノックを受けさせてもらっています」

選手の支えに応えるべく、永野さんも…。

永野さん:「甲子園に連れて行きたいって思ってもらえるような存在になりたくて。いたら助かるマネージャーじゃなくて、いなかった時に困るマネージャーになりたい」

ヒロドキャスター:「手を見せてもらっていいですか?」

永野さん:「固くなっちゃって」

ヒロドキャスター:「すごい!物語ってますね、努力が」

両手にマメを作りながらも、ノックを打ち続けてきました。

ヒロドキャスター:「どんな夏にしたいですか?」

永野さん:「(マネージャーは)試合に出てチームが勝つのに貢献することはできないんですけど。自分の気持ちを届けられるノックを打つことが役割かなと思ってます」

■徳島大会 選手と永野さんの“努力の結晶”

迎えた徳島大会、選手と共に戦う最後の夏。始まりは、3年分の思いを込めた永野さんのノックからです。

永野さん:「皆も緊張していたと思うんですけど、チーム全体がポジティブな感じで乗り込んでいけたので、自分も少し楽な感じで入れました」

初戦の相手は、県内最多の甲子園出場を誇る名門・徳島商業です。

守る城東は、プレーボール直後。センター・加統蒼眞選手(3年)が、いきなりダイビングキャッチ!さらに、ファースト・来福奏登選手(2年)もナイスキャッチ。

永野さんのノックで鍛えられた守備からリズムを作ります。

すると1点を追う4回、チャンスで谷口昊汰朗選手(2年)がセンターへのタイムリー。同点に追いつきます。

その後の守備では、再三の好プレー。一歩も譲りません。

1対1のまま8回、1アウト2塁1塁のピンチ。

4対1と、勝利には届かなかったもののスコアボードに刻んだ「無失策」は選手と永野さんの努力の結晶でした。

永野さん:「下手なノックやのに毎朝、受けてくれたり、『永野がおることが、うちの強みや』って言ってくれるのがすごくうれしくて。楽しいことより悩んだほうが多かったかもしれんけど、3年間続けてこられて良かったです。ありがとうございました」

■3年間の思い込められたノックバット

試合後、学校に戻ると、チームメートがノックバットにメッセージを書いてくれました。

永野さん:「この1本のバットに3年間の思いが詰まっているなと思います。いっぱいありがとうって書いてくれたんですけど、感謝したいのは私のほうだなって。皆と一緒に野球するのが、すごく幸せやなって感じる一日でした」

(「報道ステーション」2023年8月2日放送分より)

こちらも読まれています