比江島?渡邊?勝利のキーマンは…満島真之介が情熱解説 パリ五輪に八村塁は…[2023/09/05 15:27]

日本が48年ぶりの自力でのオリンピック出場決定となりました。キーマンを見ていきたいと思います。

■富永選手は「“サイヤ人”モードで目つぶっても」

まずは、富永啓生選手です。22歳、身長188センチ、左利き。今、ネブラスカ大学というアメリカの大学、バスケの名門でプレーをしています。

スリーポイントのシュートの決定率がカーボベルデ戦で8本中6本。75%、22得点。「プレーヤー・オブ・ザ・ゲーム」というMVPに選ばれました。

富永選手は両親から徹底した英才教育を受けていたそうです。両親は2人とも元プロバスケット選手。そして左利き。富永さんが生まれる前からバスケット選手にしようと考えていて、家の至る所にリングを設置していたということです。

結果、富永選手はバスケが大好きになり、なんとお母さんの買い物にドリブルをしながらついていったそうです。

富永選手は「このワールドカップで、なかなかスリーポイントでチームを助けることができずに、自分としてもワールドカップの最後の試合、ここで何としてでもチームをスリーポイントで助けることを心に決めてやってきた。それが本当に決められて良かった」と話しています。

満島真之介さん:「富永選手の活躍はすごいですね。彼はシューターといって、漫画『SLAM DUNK』にも出てきますが、三井寿とか。まさにもう!富永選手はそのポジションで。ボールをもらったら、どれだけ遠かろうがスリーポイントを打つという。それを決めることで、相手も守りづらくなるし、彼のことを守ろう守ろうとすると、他の人たちが空くので。シューターというのは、実は1本目が大事なんです。シュートを打つ1本目に外れると、ずっと外れ続けるんです。1本目を決めると、機械のようにずっと決め続けるんですよ。今回の富永選手は1本目にきれいに気持ち良く入ったんです。そしたら“サイヤ人”モードです。どこから目をつぶっても入るぐらいの状態に覚醒して」

満島さん:「リングから吸い込み風が出てて、そのままボールが吸い込まれていくぐらいの感じで入っちゃうので。相手は4本目か5本目か連続で決めた時に、ディフェンスが笑っちゃってたんです。ちょっとお手上げだっていって。そのぐらい、すごい活躍というか。この日に今までの一番のパフォーマンスを出した富永選手はもうあっぱれです」

満島さん:「元プロ選手の富永選手のお父さんの身長は2メートル11センチあります。富永選手の試合の時に、観客席が映ると一番大きい人がいます。富永選手のお父さんです。日本のバスケ界の中でも、これまでの歴代の選手の中でベスト3に入るぐらいの高身長の選手でした。日本を一時期、背負っていた選手なので。生まれる前からお父さんができなかったオリンピック出場。すべてここから始まってるんですよ」

満島さん:「実は、渡邊雄太選手のお母さんも日本代表。日本の常勝チームを作った女子のチームだったんですけど。そして、馬場選手のお父さんも元日本代表なんです」

■渡邊選手に河村選手が「まだ引退させない」

続いてのキーマンは渡邊雄太選手です。身長は206センチあります。日本代表で今回はただ1人、NBAプレーヤーです。

スリーポイントシュートの成功率は去年、NBAで一時トップに立ちました。正確性が高い選手です。

大会前に「このチームでパリオリンピックに行けなかったら代表引退する」と宣言するぐらいの思いで、今回この沖縄で戦いました。

しかも、けがをしていました。初戦、ドイツ戦後に左ももに激痛が走り、翌日、病院でMRIを撮ったりして、歩くこともやっとで出場辞退も覚悟していました。

歩くのもやったでしたが、検査した翌日のフィンランド戦で36分間出場。「人間を超えて気持ちと魂だけでやっていた」ということです。

キャプテンの富樫勇樹選手は「雄太の気持ちが全員に伝わって、この状態をつくれている。(代表引退宣言には)若手はびっくりした部分もあると思う。特に河村選手には火がついた。」と話しています。

NBA選手が入ったという、技術的なところだけじゃない影響というのが渡邊選手からあったといいます。

満島さん:「まさにこの渡邊選手がチームに入ってきたことによって、全員のチーム同士のコミュニケーション能力というのが、すごく高まってきて。今までって、エースが集まってるので、代表って。ちょっといざこざがあったりとか、自分が一番得点を決めるんだとか、ヒーローになるんだという。そういうものが見え隠れするのが代表戦。でも、渡邊選手はNBAにいて、世界最高峰のリーグで5年間プレーをしている。今年も来年からの2年契約をフェニックス・サンズという田臥勇太選手が昔いたチームと大きな契約をしました。NBAでずっと活躍している選手なんですけど、一番活躍している選手が日本代表に来た時に、一番謙虚なんです。そして一番覚悟を決めて日本代表に参加してるんです。周りは『雄太さんがそれを言ったら絶対引退させられない。やるしかないよ』ということで、特に河村選手がフィンランド戦終わった後に渡邊選手にパーッと駆け寄って『まだ引退はさせませんよ』って」

満島さん:「野球もそうですけど、大谷翔平選手の礼儀正しさみたいなものがすごく話題になってるじゃないですか。渡邊選手と大谷選手って同い年で仲良くて、よく渡邊選手がニューヨークのチームにいた時に試合を見に行ったり。ロサンゼルスに遠征した時に試合を見に行って、大谷選手と一緒に写真を撮ってたりするところがあったり、ご飯を食べに行ってたという話を聞いたことがあるんですけど。今のトップ選手って全くおごりがない。俺がすごいんだじゃなくて、僕が経験してきたものをみんなにちょっとずつ分け与えるから、みんなで上がっていこう。だけど勝てなかったら僕は引退するよっていう。一番脂が乗っている時にここで引退されたら、日本のバスケの未来は結構、危うかったんですよ」

■比江島選手は「僕らの世代の大エース」

続いてのキーマンは比江島慎選手(33)です。満島さんの1歳下で、一緒にプレーもしていたという。191センチ。Bリーグでスリーポイントランキングの決定率はトップです。

「比江島ステップ」と呼ばれるくらい、フェイントがすごい。ただ、33歳がいじられキャラクター。年長者でも偉そうにしないそうです。

所属チームでは後輩選手がわざとハイタッチをスルーし、場内を沸かせるのがお決まりだということです

今回、ワールドカップで1勝するということは悲願でした。女手一つで育ててくれたお母さんが2018年に亡くなった。生前、「お母さんは太陽のような人で大好き」だという話をしていました。

今回のワールドカップの前、4年前の2019年は「何もできずダメダメだったので、今度は絶対世界で1勝して、お母さんを笑顔にしてあげたいと思います」と話していて、チームは3勝しました。

「今まで本当に悔しい経験をしてきて、(渡邊)雄太にしろ馬場にしろ富樫にしろ、前回のワールドカップを含めて悔しい思いをしてきた選手がしっかりチームを引っ張れて良かった」と話しています。

ベテランと言われているのが、渡邊選手、比江島選手、富樫選手、馬場選手。前回のワールドカップ全敗です。

東京オリンピックに出場しましたが、それは開催国だったから。前回、自力で出場したのは1976年です。そのオリンピックも全敗でした。1回も世界大会で勝てていなかったのです。

渡邊選手は「世界で何もできずにぼろ負けして帰ってきて、絶対に勝てるチームを作ろうと言っていた」、比江島選手は「俺ら強くなったなあ、最高の景色やもんな」と、グッと来る言葉を残しています。

4人で記念撮影した時にボソッと、比江島選手は「チーム負け組脱出やと」とも話していたそうです。

満島さん:「僕らの世代の大エース。NBA選手が日本で田臥選手以来。中学生の時も田臥選手まだ行ってなかったので、初めてNBA選手になるのは比江島選手だと思ってたんです。福岡出身で、福岡もバスケがすごく盛んで、百道中学から京都の洛南高校、青山学院大学に行って、ずっとエースです。高校生の時に洛南高校で、高校3連覇してるんです。ウインターカップを3連覇」

満島さん:「田臥選手がいた能代工業が3連覇しました。その時が初めての3連覇です。その後、全然3連覇はなくて次にやったのが比江島選手がいた洛南なんです。史上3校しかいなくて、もう1チームが八村塁選手がいた明成高校なんです。田臥、比江島、八村というのは、その時代を象徴する大エースなんです。ベネズエラ戦で覚醒して勝った時に、渡邊選手とか富樫選手が『何を驚いているんですか、マコは普通ですよ。毎試合やれよ』とか言っていましたが、僕らからしても比江島選手は止められない。彼は無双すると、全く止められないというのが比江島選手だった。その時から見ているバスケファンは、ベネズエラ戦をはじめ今回の大会での活躍で、たまらない思いになってるんです」

バスケでベテランは何歳からなんですか?

満島さん:「大体、バスケットボール選手は30歳ぐらいでベテランです。やっぱり運動量がすごいので。30歳を超えて、30代中盤までやる人というのは本当に神懸かったような人たちばかりで。今、田臥選手も40歳を超えてBリーグでまだ現役でやってるんですが、ああいう選手はサッカーでいうカズさんみたいな、1つの伝説を作っている先駆者」

■W杯よりも五輪? 米国「ドリームチーム」の影響

そして、パリオリンピックの出場権も取りました。今回36チーム出場したワールドカップ。オリンピックは12カ国。その中にアジア1枠だけに入ったのが、日本です。

満島さん:「正直、戦いはワールドカップよりもオリンピックのほうが厳しいです」

オリンピックで1勝するというのも、なかなか厳しいのでしょうか?

満島さん:「この1年間でホーバスヘッドコーチがどういうチームを組んでいくか。今年10月からBリーグも始まっていくので、ワールドカップを見たBリーグの他の選手たちも次は俺が選ばれるぞってもう気合が入ってると思うので」

スポーツにおいて、オリンピックとワールドカップのどちらに価値があるか、重きを置くかありますが、バスケットはどちらなのでしょうか?

満島さん:「正直、オリンピックに置いてます。今までロサンゼルスオリンピックで『ドリームチーム』というアメリカのすごいチームがありました。そこからプロの選手、NBA選手が出始めたのが1992年からなんです。そこまではアマチュアの選手だったりでオリンピックはやってたんですが、そこで金メダルを取ることが1つ最上のことだということに、NBA選手たちがしました。そこからずっと、オリンピックには最強チームがみんな出てくる」

■八村選手 W杯欠場なぜ? パリ五輪出場は…

今回のワールドカップは欠場した八村塁選手。色々事情があるということですが、日本のオリンピック出場決定後、SNSに日の丸と炎のマークを投稿し、祝福しました。

ホーバスヘッドコーチは、八村選手について「僕は彼がやりたいなら、彼から声を掛けてくると思う。彼には入ってほしいが、出場しないならこのメンバーでいいチームを作る自信はある」と話しています。

ただ、SNSでは「パリ五輪ではあなたの力が必要」「八村選手も合流し、最強日本バスケを世界に披露してほしい」といった期待の声があります。どうなるんでしょうか?

満島さん:「今回、八村選手が辞退したことに対して色んな意見があったと思う。渡邊選手は出るのになんでと…。実は彼も今、大きな分岐点に立っています。日本バスケットボール界の大きな分岐点に立ってるんです。NBAの一番有名なチーム、ロサンゼルス・レイカーズというチームに去年、電撃トレードで入りました。プレーオフでカンファレンスファイナルという決勝まで行き、そこですごい活躍をしたんです。スリーポイントから何から得点もディフェンスも。そして、世界中で八村塁の名前がより知れわたった。このシーズンが終わった時にFAだったんですよ。今年の野球が終わったら、大谷選手がFAになるようにどういう契約を次、組めるのかという大切な時期がこの夏だった」

満島さん:「正直ワールドカップに出てる場合ではない。日本人選手が初めてドラフト1位で選ばれたのも八村選手。大きい契約を取れるかどうかも今ここにかかってたんです。そして、28歳ぐらいの年なので、大きい契約を取るか取らないかで、大きく八村選手のバスケット人生、日本の見えてくる世界が狭まってしまう。だから、お願い…渡邊選手たちみんな頑張ってくれという思いでいた。八村選手が勝った時にすぐこれを投稿したのはずっと気になって、応援していたんだと思うんです」

自分が巨額の契約を得たいということではなくて、自分が契約をすることによって、日本の選手の世界からの見方が変わるぞと。

満島さん:「八村選手は3年で約75億円の大きな契約をしたんです。日本ってすげえなって…。このタイミングに八村選手がワールドカップに出ていて、NBAの契約がなくなっちゃうと、ちょっと違う話になってくる。オリンピックでは、ホーバスヘッドコーチも言ってますが、『本人が出たい、どうなんだろう』『待つよ、僕はって』と、信じる力もまた発揮されるんじゃないかなと」

八村選手がオリンピックは出る可能性は…?

満島さん:「あると思います。来年のシーズン次第ですけど。またオフシーズンに、来年の今ごろにオリンピックがあるので。NBAのシーズンが終わってからなので、八村選手も契約は取れてますから。今シーズンの活躍次第では、行くぞってなれば、今回の“魔の7分間”打開できなかったあの時間を打開できるのは、八村選手しかいないんです。1対1で世界と戦える選手は八村選手なんです。ここに八村選手が加われば、もう行けます!」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2023年9月4日放送分より)

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