バレー・石川祐希に聞く 日本はどうして強くなった? 大きな武器「フェイクセット」[2023/09/26 17:53]

 今、日本の男子バレーが国際舞台で大躍進を遂げています。7月、世界の強豪16チームと競ったバレーボールネーションズリーグ2023では、イタリアを相手に大金星を上げ、銅メダルを獲得しました。

 この大会で得点王に輝いたのは、キャプテンの石川祐希選手(27)です。一体、日本はどうして強くなったのでしょうか。松岡修造さんが取材しました。

■対応されづらい日本 得点力際立つ

石川選手:「日本は身長も小さいですし、海外の選手たちと同じようなプレーだけでは、世界では勝っていけない。僕たちはどちらかというとトリッキーな、いろんなプレーをしたりするので、相手に対応されづらいチームではあると思うんですよ」

「日本は対応されづらいチーム」。確かに、ネーションズリーグでの日本の得点力は際立っていました。

1セットあたりのサーブとブロックを除く得点数は、なんとトップ。この数字の背景にあったのが、トリッキーで多彩なプレーだといいます。

■異例の5人 フェイクセットの使い手
  
なかでも、大きな武器になっている「フェイクセット」とは、一体何でしょうか。

石川選手:「日本チームが今、フェイクセットが…」

松岡さん:「いま何?フェイク?」

石川選手:「フェイクセット。今は日本のチームの一つの武器にはなってますね、間違いなく」

コート上の石川さんが打つと思いきや、打たない。打つと見せかけて、味方へトスを上げます。これがフェイクセットです。
 
相手ブロック中央の2人は石川さんの動きにつられて跳んでしまったため、左の選手1人しかブロックに行けませんでした。

石川選手:「打ってくるかもしれないって思わせれば、相手は跳ぶ選択肢もあるし、跳ばずに違うアタッカーにブロックに行く選択肢もあるんですけど。普通に1対1だったらアタッカーの方が有利なので」

松岡さん:「決まった時、どんな感覚になりますか?」

石川選手:「めちゃくちゃ嬉しいです。『引っかかってくれた』って。魅せるバレーは会場も巻き込むので、そういうプレーをすればチームもノッてくるので、それでチームに流れが来るのは非常にある」

「相手を翻弄(ほんろう)し、会場の空気をも変える」というフェイクセット。スパイクかトスか、ギリギリまで分からなくするのは難しい技術ですが、日本には5人の使い手がいます。世界を見渡しても異例の多さです。

■駆け引きで得点を積み重ねる日本

しかし、気になることがあります。実はフェイクセットは1試合で数回しか出していないのです。

松岡さん:「良ければフェイクセットもっとやればいい?と思うんですが」

石川選手:「フェイクセットだけすれば良いわけじゃなくて、相手をだませるかどうかが重要。相手をだませてないフェイクセットは、フェイクセットじゃない。一番相手が決められて嫌なのは、僕が打とうとした時に(だまされて)ブロックが2人跳んでノーマークで決められること。基本的には1人だけブロックに跳んで、もう1人は跳ばないようにしている。それが今は多くて。そうなった場合は、基本的に打っちゃう」

松岡さん:「相手はフェイクのことも考えているから、ブロックを1人にしちゃってる」

石川選手:「(ブロックが1人なら)スパイクを打つ方が、決まる確率は高い」

松岡さん:「チームメイトに『フェイク行くよ』とか言ってない?」

石川選手:「言っていない。このボール(フェイクセット)できるな、いけそうだなと思ったら、スパイク打つフリをします」

ブロックの枚数が少ないなら、そのまま打てばいい。フェイクセットは実際に出さなくても、相手に意識させるだけで武器になっているのです。

松岡さん:「日本にとって“フェイクセット”とは?」

石川選手:「まぁ1つの象徴じゃないですけど、象徴というか。フェイクセットと言ったら日本みたいな感じに今、世界的にもなってきているので」

身体能力と体格で劣っていても、駆け引きで得点を重ねられるようになった日本。そんなチームに石川選手は、手応えを感じています。

松岡さん:「今回の試合見ててですよ、勝手に僕が思ったのは本気で日本はオリンピック金メダルを昔のように狙えるぞって。そういうチームになったって僕はそう感じたんです」

石川選手:「今回のネーションズリーグで勝って3位でしたけど。金メダルが現実的なものになってきたので、やっぱり現実したい思いは非常に強いです」

(「報道ステーション」2023年9月25日放送分より)

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