小山直城選手…大雨のMGCで勝負分けた“準備”と“位置取り”「ワセリンを体中に」[2023/10/17 15:33]

15日に行われたパリオリンピックのマラソン代表選考会「MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)」。見事4人がパリオリンピックの出場権を手にしました。そんななか松岡修造さんが、男子優勝の小山直城選手(27)に話を聞きました。

■ラストに…帽子を脱いだ理由

松岡さん:「小山さん、パリオリンピック代表おめでとうございます。いきなりちょっと話が飛んでますけど、ラストなんで帽子を脱いだんですか?」

小山直城選手:「良い姿でゴールの写真に映りたかったので」

気温14℃、冷たい雨の中行われたMGC。実力者が次々と脱落するなか、小山選手はパリオリンピック内定を決めました。

学生時代に目立った成績もなく、マラソン歴もわずか1年半の小山選手ですが、今年1月に行われたニューイヤー駅伝では、エースが集う4区でチームをトップに押し上げ、実業団の名門・ホンダの連覇に大きく貢献しました。

日本陸連ロードランニングコミッション・リーダーの瀬古利彦氏も、その力について「ちゃんと実力のある選手だなと思いました。勝って、別に不思議じゃない」と話します。

■小山選手ならではの準備「ワセリンを…」

しかし実力があるとはいえ、大雨の降る難しいレース、なぜ勝つことができたのでしょうか。

ひとつは、小山選手ならではの「準備」にありました。

小山選手:「今回のレースは雨だったので、ワセリンを体中に塗った。あまり他の選手はやらないと思いますけど、ユニホームにも塗って、撥水(はっすい)効果が得られるようにした」

通常、肌とユニホームの摩擦を防ぐため、ワセリンを身体に塗る選手が多いなか、小山選手は雨が染み込むのを抑えるため、ユニホームにも塗っていたのです。

松岡さん:「ワセリンを塗って(雨の)弾きはどうでした?」

小山選手:「(雨でユニホームが)引っ付く感じはしなかったので、効果はあったかなと思います」

松岡さん:「(ユニホームが身体に)つかないと、何が違うんですか?」

小山選手:「ユニホームが普通は雨で重くなるんですけど、それがなかったので、軽い状態で走れた」

■「虎視眈々」第2集団の後方をキープし…

そして、もうひとつ勝負を分けたのが「レースでの位置取り」です。

小山選手がいるのが第2集団の後方。この場所をずっとキープしていました。

それには、次のような理由があったといいます。

小山選手:「虎視眈々(こしたんたん)です」

松岡さん:「虎視眈々?」

小山選手:「相手がどういうふうな動きをするのか。相手の疲れ具合だったり、そういうのを見ながらレースを走っていました」

レース終盤、先頭集団7人で牽制(けんせい)しあう場面。小山選手は1人離れて、集団を観察します。

そして39キロ地点、残り3キロでスパート。その決断の裏には、小山選手ならではの“気付き”がありました。

小山選手:「大迫さんの上体が、大きく横にずれてきた」

松岡さん:「どういう感じですか?」

小山選手:「腕の振りが大きくなって、いつもと違う。そこから行こうかなと」

松岡さん:「そこまで見てたと?」

小山選手:「そうです」

まさに、虎視眈々です。

小山選手だけが大迫選手の変化に気付けたからこそ、優勝につながるスパートを決めることができたのです。

■設楽選手の練習パートナーに選ばれた理由

そんな小山選手には、虎視眈々とその姿を追ってきた選手がいます。

それが、元日本記録保持者・設楽悠太選手です。

4年前、東京オリンピック代表を決めるMGC直前。この大事な時期に、小山選手は設楽選手の練習パートナーを務めていたのです。

小山選手:「悠太さんから『小山がいい』と指名してくださって。その時、自分は入社1年目で、本当によく分からずに練習に参加させてもらったのが経緯です」

松岡さん:「『何で僕がですか?』って、やっていくうちに理由が分かってくる。どうしてでした?」

小山選手:「今回のMGCにつながるためだったのかなと思っています」

松岡さん:「設楽さんも、虎視眈々と分かっていたということですか?」

小山選手:「かもしれないです」

パリオリンピックまで10カ月。小山選手が虎視眈々と狙うのは…。

小山選手:「MGC同様、パリオリンピックはタイムではなく順位を狙うので。順位争いだったら、自分たち日本人でもチャンスはあると思っています」

松岡さん:「なんで虎視眈々、その言葉が出てきたんですか?」

小山選手:「漢字がかっこいいのはありますね」

松岡さん:「漢字がかっこいい!?」

(「報道ステーション」2023年10月16日放送分より)

こちらも読まれています