「強度100%」開幕に向け本格始動 大谷翔平“打撃”分析で今シーズンは?[2024/02/11 11:37]

ドジャース 大谷翔平選手 9日アリゾナ州
「新しいチームなので1年目のつもりで、まずは環境に慣れる、チームメイトに慣れることが最優先かなと思います」
「(Q.コミュニケーションはどうやって取っている?)自ら行きますね。基本的には自ら行きますけど、結構色んな人にあいさつするのでまずは2回目あいさつに行かないように、一発目で覚えられるように、もし行った時は勘弁して欲しいなと思います」

 今シーズン打者に専念する大谷。3月20日の開幕戦に向け、順調に調整を続けています。

ドジャース 大谷翔平選手 9日アリゾナ州
「強度はもう100(%)に近いので、あとはマシンだったりとか実際の投手の球を打つ段階に、次は進む感じかなと思います。バッティングは去年かなり良い感じはつかめていたので、基本的にはそれを継続するところと微妙に変えにいくところとかなと思うんで、今のところは大きくは変えていないですし、必要なところでまた調整しながらキャンプ中に直していけたらなと思います」

■「現代野球の申し子」大谷の“打撃”に変化

 昨シーズンアジア出身選手初のホームラン王に輝いた大谷。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「本当にこう“適応力”、あと“対応力”の高さですね。対応力のあるバッティングをしているのは本当に“現代野球の申し子”だなと思います」

 動作解析の第一人者・筑波大学の川村准教授によると、ホームラン王に上り詰めた背景には大谷の度重なる打撃フォームの変化があったといいます。

 日本ハム時代、右足を上げてタイミングを取っていた大谷。在籍5年間で48本ホームランを放ちました。しかし、メジャーへ挑戦した2018年、オープン戦の打率は.125と不振…。シーズン開幕前に打撃フォームの改善に着手したのです。

大谷翔平選手 2022年9月
「プホルス選手を見て決めたので」

 メジャー歴代4位703本のホームランを放ったレジェンド・プホルス。大谷は当時、プホルスが行っていた高く足を上げないタイミングの取り方、いわゆる“ヒールダウン”を取り入れていたのです。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「日本のピッチャーとアメリカのピッチャーで一番違うのはピッチャーが足を上げて踏み出していくところの時間がアメリカのピッチャーの方が短い。足を上げて打つというのが時間的に間に合わなくなってくる。タイミングの取り方に差が出てきたんだと思う」

 それからヒールダウンが定着した大谷。22本のホームランを放ちア・リーグ新人王に輝くと、3年後の2021年に自身最多となる46本のホームランを放ちMVPを獲得。そして昨シーズンホームラン王となった大谷。実はシーズン中、ある時期を境に打撃フォームに変化があったと言います。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「ちょうど6月から7月ごろにかけて」

■絶好調“打撃”の背景にあった「構え」

 去年6月、大谷は球団記録を更新する月間15本のホームランを記録。その時しきりに口にしていた言葉が。

大谷翔平選手 2023年6月1日
「一番はやっぱり“構え”。見え方だと思っている」

大谷翔平選手 2023年6月16日
「見え方がやっぱり“構え”の段階で、結果うんぬんではなくて」

 大谷が口にする“構え”。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「出やすいという言い方はちょっとあれ(言い過ぎ)かもしれませんが、ホームランが出る打ち方になっていると思います」

 その変化はどこにあるのか。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「開幕当初、グリップの位置が耳よりも高い位置に構えのところがきているように見えた。グリップの位置が耳のラインか、もしくはその下ぐらいにくるような。(位置が高いと)キャッチャー側にバットが大きく倒れる原因となり差し込まれる(振り遅れる)という形になりやすい。グリップエンドを落とすことによってバットが出やすくなるという利点が出てきてミートがしやすくなる」

 ミート力が上がり、昨シーズン自身最高の打率.304をマークしました。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「バッテリーからしたら攻めどころが難しいというバッターになっているのではないかと思います」

 さらに川村准教授は大谷の“頭の位置”にも注目。開幕当初、バットを振る際に頭が少し前に出てしまっていた大谷。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「その結果、後ろ(フォロースルー)が大きくなりますので、スイングの加速が十分に行われない位置で(ボールを)捉えられてしまうのでヒットは出てもなかなかホームランにならない」

 それでも絶好調期の映像を見てみると。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「頭が動かずというか少し後ろに下がるくらいの位置にあって、後ろに位置するということは今度はバットが前に出てくる。ヘッドスピードが上がったところで捉えられるという利点がある」

 大谷の変化はバットを振り抜く動作にも及んでいました。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「(開幕当初は)体がスエー(移動)しているせいでひざが若干曲がっていて、十分に軸回転ができないような形になっている。(7月は)お尻の方から力を加えて前の足(右足が)軸になって回転が起きている」

 軸回転がうまくできていることで飛距離を出すことができていると言います。大谷の打撃フォームに変化を加えた理由。それは昨シーズンからバットを変えたことにありました。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「バットを少しでも長くすればバッティングフォームはすごく影響を受けます」

 大谷は昨シーズンからアメリカのチャンドラー社製のバットに変更。これまでのバットよりおよそ2.5センチ長くなりました。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「バットが長くなる分、操作性や扱いが難しくなってきますので、メジャーの(球が)速いピッチャーを対応するというのは時間が必要。そういうところで少し4月ぐらいから時間がかかってしまったのではないかと」

 バットの扱いが身体に染み付いてきたのがホームランを量産した6月あたりからではないかと川村准教授は推測します。

大谷翔平選手 2023年2月
「(Q.“新バット”について)硬めな感じかなと思います。振りやすさが飛距離になるしアベレージにも関わってくる。一番は心地良くスイングができるかどうかが一番大事」

 チャンドラー社製のバットは、2022年のホームラン王、ジャッジ選手や2021年のホームラン王、ゲレーロ・ジュニア選手らが使用しており、いわゆる“長距離打者向け”のバットだったんです。日本でチャンドラー社製のバットを取り扱う代理店は…。

株式会社エスアールエス 宇野誠一代表取締役
「日本の選手という観点でいうと(扱いが)ちょっと難しいという声も。やっぱり硬いということで、しなりが少なかったりとか。日本人でこのサイズのバットを使いこなすというのはあまり考えられないので、大谷選手がMLBの中で当たり前のフィジカルを備えている」

 新バットを使いこなし結果に結び付けた大谷。実際にホームランの平均飛距離は前年からおよそ4メートルも伸びていました。新天地でキャンプインした大谷。打者としてさらなる進化を見せてくれるのでしょうか。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「キャンプに入る前の状態としては100%に近いんじゃないかなと思いますね。今の状態でけがなくいけばですが(開幕戦に)出られるんじゃないでしょうか」

 そして、今シーズンの成績について。

筑波大学 体育専門学群 川村卓准教授
「万全の状態でバッティングだけということを考えれば、間違いなく前年以上の成績が出るんじゃないかな。(ホームランを)50本というのはどこまでっていうのはありますけれども、そのぐらいの期待感は持っていいんじゃないかなと思いますね。ワールドシリーズを勝ちたいという気持ちで入ったと思いますので、ホームランだけではなくてですね、特に打点を取るような打撃とかですね、色んな形の大谷選手が打者に専念するからこそ、見えてくるのではないかと思いますね」

(2024年2月11日放送 サンデーLIVE!!)

画像:AP/アフロ

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