世界初「インターンレスラー」 デビュー戦に密着[2024/04/10 10:09]

 世界初のインターンレスラーの誕生が注目されています。学生プロレスで活躍する現役の大学生がなぜ、インターンとしてプロのリングに上がることになったのか。そのデビュー戦に密着しました。

 先月17日、東京・後楽園ホールで開催されたDDTプロレスリング旗揚げ27周年興行。そのオープニングマッチで行われたのは世界初のインターンレスラー・鈴木翼さん(21)のデビュー戦。現役大学生の彼が、なぜプロのリングに上がることになったのでしょうか。

 鈴木翼さん。学生プロレス団体、一橋大学世界プロレスリング同盟HWWAで「“母の子”マザコン・キッド」のリングネームで活躍する現役の大学4年生です。

 中学と高校では陸上の中距離走者として活躍し、全国ランキング1位にまでなった鈴木さん。なぜ陸上を辞めて学生プロレスをやろうと思ったのでしょうか。

世界初のインターンレスラー 鈴木翼さん
「事前のランキングは1番まで行ったが、全国大会は負けて悔しかった。どんだけ頑張ってもその夢がかなわなくて、自分の運動能力、身体能力でも十分戦えるフィールドというか、色々スポーツを模索した結果、好きだったプロレスに行きついた」

 この日、行っていたのは陸上のジャンプトレーニングに6キロのダンベルを両手に持つという独自の練習法。1.5メートルの壁も…。

 その身体能力を生かした得意技はドロップキックとブロンコバスター。そして、プロでもできる人が限られる大技「フェニックス・スプラッシュ」。その華麗な技を武器に、2本のチャンピオンベルトを奪取。学生プロレスで頂点に立つ事しか考えていなかったという鈴木さんに転機が訪れたのは去年のことでした。

鈴木翼さん
「後楽園ホールの歓声というか、そういうのがすごく気持ち良くてそこでプロでやってみたいと思ったのがきっかけ」

 2023年1月、DDTプロレスリングの興行で行われた「ノーギャランブル」。名乗りを上げたアマチュアのレスラーとプロのレスラーが入り乱れて闘うこのリングに鈴木さんが上がりました。この試合にはDDTの高木社長も参戦。学生の域を超えた鈴木さんのレスリングに目をとめます。

株式会社CyberFight 高木三四郎社長
「ちょっとこの子はモノが違う。体つきもすごい。こういう人がDDTに来てくれたらおもしろい。プロレスも学生が参加できる場があれば良いのにと思っていた。プロレスラーになりたいという人もそんなに多くない時代なんで、こういう(インターン)形で間口を広げるのが良いことだなと」

 そして、今年1月に行われたDDT後楽園大会で、インターンレスラーとしてデビューすることが発表されました。

鈴木翼さん
「このたび世界初のインターンレスラーという形でデビューさせていただくことになりました。1日でも早くDDTファンの皆様に愛されるような選手になれるように頑張っていきます」

 インターンシップとしてDDTプロレスリングで継続的に試合に出場し、一定期間の活動後、正式に入団するのかどうか団体との協議のうえ決定します。

 華々しいプロのリングに立つ事が決まった鈴木さんは現在、アパートで一人暮らしをしています。

鈴木翼さん
「一人暮らしは寂しいですね。一人でいつもいます。友達とかあまりいないんで寂しいです。学食とかもいつも1人で寂しいですけれどしょうがない。娯楽が温泉と一人で飲みに行くしかないので」

 3年前、静岡から一人で上京。ゲームやアイドルにも興味はなく、部屋の中も物が少なめです。

鈴木翼さん
「学生プロレスには友だちいるんですけど。大学にはいないだけです。周りからはシャイと言われる。臆病者というか小心者と言われる」

 この日の晩御飯は卵5つを使った目玉焼き。焼いた後にコショウと塩、醤油をかけてでき上がりです。

鈴木翼さん
「味はまあ何にも感じない。何でも良いかな。とりあえず栄養が取れれば」

 食後のプロテインはシェイカーを使わず、直でゴクリ。豪快です。そして、この日も一人で体を鍛えるためにジムへ。週に5日は通っているそうです。

鈴木翼さん
「試合前なのでタンニングマシンで体を焼こうと思います。完全に見栄えですね、身体が格好良く見える」
「自分を表現できる場所というか、なかなか大学生活過ごしていると自分を表現できる場所がなくて、学生プロレスがあったからこそたくさんの思い出ができたので、かけがえのない存在というか自分にとってはなくてはならないもの」

 この日行われたのは、鈴木さんの壮行試合が行われる予定の学生プロレスの記念興行。ところが、鈴木さんの姿はリングサイドにありました。一体、何があったのでしょうか。

鈴木翼さん
「当初、メインイベントでベルトをかけて行う予定だったのですが、自分のけがで今回はできないということで」

 なんと、デビューまで1カ月を切ったタイミングで肩甲骨にけがをしてしまったのです。

鈴木翼さん
「(Q.試合を観てやりたくなったか?)元々出る予定だったのでやりたかった」
「(Q.けがの具合は?)あんまり良くないかもしれないが、デビュー戦もあと3週間後ですので急ピッチで治していきたい」

 デビュー戦までおよそ3週間、果たしてけがの回復は間に合うのでしょうか。

鈴木翼さん
「(Q.いよいよデビュー戦ですね)そうですね。とうとう参りました」
「(Q.調子は?)めちゃめちゃ緊張しているけれど、やれる事はやってきた。最後まで頑張りたい」

 けがの状態は上向き、試合にはなんとか間に合ったようです。デビュー戦に向けリングを設営する鈴木さん。その顔には緊張がうかがえます。

KO−D タッグ王者 飯野雄貴さん
「顔色悪すぎだよ。真っ白だよ」

鈴木翼さん
「そんなに悪いですか」

 先輩レスラーにも心配されてしまいます。

鈴木翼さん
「圧倒されるというか、このレベル(規模)でやったことはないのですごく緊張します」
「(Q.プロとアマの違いは?)別競技というか、ソフトボールと野球ぐらいの違い。まずは心技体じゃないですけど、心の部分を強くして、結果的に良いレスラーに成長していきたいなと思っています」

 試合を見たDDTの高木社長は。

高木三四郎社長
「相当緊張していたみたいで、ちょっとしたミスもあったが即戦力。見栄えも良かった。この世界でやってやろうという気概も感じられたし、そういう意味では100点満点に近いプロデビュー戦だった。鈴木君はぜひうちに入ってほしい。ただ、インターン期間を経て、本人との話し合いだと思うので僕らとしては来てほしいが、あとは彼がやってみてどう思うか。でも個人的には来てほしい」

 休憩時間にはファンとの交流も行った鈴木さん。その顔にはようやく笑顔が戻り始めていました。

ファン
「鈴木選手は学園祭で試合しているのを観て、それきっかけでデビューすると聞いたのでちょっと気になって観てみました。私はプロレスを鈴木選手きっかけで観るようになったので、これからもどんどん観て行こうと思います」

鈴木翼さん
「(Q.ファンの声援は?)聞こえました。やっぱりうれしかったです。すごく緊張したし、これからなんですけれど、上手くいかなかった部分もあるけれど楽しかった」

 世界初のインターンレスラーとしてデビューした鈴木さん。大学卒業後もDDTでプロレスを続けるのか。進路を決めるインターン期間は、まだ始まったばかりです。

鈴木翼さん
「団体の雰囲気、選手の雰囲気が良くて、こんなにすてきな団体があるんだと思って、試合もユニークですごい団体だなと感動してここでやりたいと強く思った」

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