ブラインドサッカー・平林太一 17歳の日本代表エース 全盲の高校生挑戦に込めた願い

報道ステーション

[2023/10/31 19:36]

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ブラインドサッカー日本代表の平林太一選手。17歳、若いんです。たくさん学びました。平林選手の“メッセージシュート”を感じてください。

■研ぎ澄まされた感覚…恐るべき17歳

松岡修造さん:「いろんなところから声が聞こえてくる。目を開けてる時は全然気にならないのに、風がすごく怖い」

ボールの音を頼りに、アイマスクを着けて行う、ブラインドサッカー。日本のエースは、17歳の平林太一選手です。

衝撃のシュートが生まれたのは、8月の世界選手権でした。

青のユニフォームが日本。ボールを持った平林選手が相手を抜き去り、そしてドリブルで持ち込み…シュート!ゴールが決まりました。

アイマスクで見えていないはずなのに、まるで相手の位置が分かっているような動き。どうしてこんなことができるのでしょうか?

松岡さん:「今、僕は目の前にいるわけですよ」

平林選手:「感じてます」「音とか気配なんですよ」

松岡さん:「気配というのは音ってことですね?」

平林選手:「音がものにあたって、跳ね返るところを感じています」

この研ぎ澄まされた感覚…恐るべき17歳です。

■平林選手「狭い世界から出てみたい」

そんな平林選手は、「目のガン」と言われている網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)により、4歳のころから全盲となりました。 

しかし、普段の生活はというと、健常者と一緒の高校生活を送っています。

松岡さん:「『危険、何かあったらどうするの?』とか言われませんでした?」

平林選手:「全盲の場合は、盲学校に行く選択が一番多い。それが普通。盲学校では見られないものがある。盲学校に行くのって、目が見えないから。でも、そこに捉われたら可能性は広がらない。この狭い世界から出てみたい」

■“みんな”を動かす…平林選手の思い

そんな平林選手の学校生活をのぞいてみると、手すりも使わず、階段をスルスルと上っています。音を頼りに、教室へ向かっていきます。しっかりとたどり着きました。

平林選手のチャレンジを受け入れようと、周囲も様々な工夫を凝らしています。

授業についてこられるよう、黒板に書かれた文字は一言一句、読み上げられます。

授業中に使う教科書は、点字で書かれた手作りの教科書。高校生活を応援したいと、全国各地のボランティアから送られてきたものなんです。

平林選手の思いが、みんなを動かしていました。

クラスメイト:「(障害者への)見方は大きく変わりました。『目が見えないからやらない』のではなく、できることを探してやっている。自分からやろうとしているので、すごい」

■変わったきっかけ 思いを打ち明け…

周囲も驚く、チャレンジ精神。実は、小学校で経験したある出来事がきっかけとなっていました。

平林選手:「すごく興味を持たれるというか、良い興味の持たれ方っていうよりも、いろんなことができないんじゃないかと言われたりとか。本当に嫌だったのが、手を振って『これ見える?』みたいな…感じをめちゃくちゃやられたんですよ」

そこで平林選手は、自ら行動にでました。学校の先生に協力を仰ぎ、みんなに思いを打ち明けたんです。

平林選手:「自分が嫌だったことを全部言って。正直、『言う前は『どう受け取られるんだろう』ってすごく考えていた。避けられるんじゃないか。でも、言わないと、ちゃんとした関係性が作れないと思って」

松岡さん:「そこに自分が変わったきっかけは?」

平林選手:「自分から伝えていかないと始まらない。『障害者が理解されない』とよく言われる。でも、障害者から動いたり、理解されるように努めることが大事」

■平林選手「アンテナを持ってほしい」

平林選手には今、日本代表として、ブラインドサッカーを通じて伝えたいことがあるといいます。

平林選手:「全員には理解されないですけど、まずは話を聞いてほしい。アンテナを持ってほしい」

松岡さん:「日本代表として活躍することによって、アンテナを拾ってくれる人が多くなってほしい?」

平林選手:「僕も伝えていきたい思っているので、理解してくれる方も増えると期待しています」

(「報道ステーション」2023年10月30日放送分より)

  • 松岡修造さんと平林太一選手

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